幼い女神はかく語りき2 (講談社ラノベ文庫)

【幼い女神(アマテラス)はかく語りき 2】 暇奈 椿/夕薙 講談社ラノベ文庫

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時は古代、空白の四世紀――未だ神話が綴られる神秘と幻想の時代。
真人と常夜が誓いを交わしたあの激戦から一月後。
まつろわされたクラカヒメこと少女アスラウグと《鬼》の姫マウラに振り回される真人の元に、奇妙な狐耳の女神アメノウズメが現れる。
彼女はある荒神霊に狙われた神倉の都を援けて欲しいと真人に懇願するが――
「――――――――で。その話、どこからどこまでが嘘なんだ?」

これは嘘と真実、誓いと許しの話。
後世に生きる人々が果たすべき約束、そしてとある女神が叫んだ初恋の《歴史》――――!
過去と現在が交錯する新たなる創世ファンタジー、待望の第二弾!
天津倶羅伽比売命―つまりクラカヒメって和名じゃなくて、アスラウグのもう一つの名前なのか。アスラウグのアスラに引かれたのか、インド神話世界にも首を突っ込んでいた、というのは面白い要素ではあるのだけれど。
この作品、未だ神秘と人外が跋扈しながらも現代文明に沿う形で発展している異形の日本を訪れた外国人が、現地日本の人……いや、人じゃなくて神になるのか。そんな存在にインタビュー、あるいは取材して聞いた話という体裁を取っていて、なんでこんな未だ神話が続いているような国になったのか、という原因の源泉たる建国神話の当事者たちから生の話を聞いているというものなんだけれど。
なんちゅうか、ちゃんと神代と現代が地続きなんですよね。それを実感させてくれたのが、インタビュアーの兄ちゃんが、現代に至った日本に理想郷めいた称賛を口にした際に、現地人たるケンタウロスのお姉さんが、きっぱりとそれを否定して、特定の幻想種への不便もアレば社会制度の不具合もある、偏見もあるし理不尽も存在する。ここは理想郷なんかじゃなく、神秘と幻想が残っていたとしてもただの現実の国に過ぎない、という趣旨の話をしてくれるわけだ。
つまるところ、なんもかんもうまく言ってる理想の国なんかじゃなく、でも他の世界では滅びた神や魔のものが生きていく上でこの地はなんやかんやと相応に現実的にやりくり出来ている場所でもある。
間違いは幾つもあって、失敗もまた幾つも重なっている。神だって人だってそりゃもう間違えるし、やらかしてしまうのだ。でも、それで終わりじゃあない。そこで止まってしまってはなにもならない。
止まって、終わってしまおうと望んでいたのはアスラウグで、それが嫌だったけれどどうしたらいいのかわからなかったのがトヨヒメで、そういうなんもかんもが面倒くさかったのが真人だったと捉えればよかったのか。
結局の所、そうした完全ではない世界。無駄に終わってしまうかもしれない世界を、しかし許容し、むしろ傲然とそれでいいんだと受け止めて、違う方向を向いている者同士でも手を取り合えば失敗も間違いもそこで止まってしまわない。終わってしまわずに済む。間違いをカバーして、前へ進んでいける。
そうした、過去の、神話の時代におけるその当時生きていた人たちが選んで受け入れて踏ん張って、やってやるさと結論づけた結果の延長線上に、この現代不思議日本がある。現代に至る礎となる意思が生まれた物語が、つまりはこれなのだと思えば、それは感慨深く……そしてその当事者たちである神様たちがまだ存在して、今もその意志を輝かせている、導くでも後押しするでも下から支えるでもなく、一緒に輪の中に入って、世界の旅を共にしている、という事実はなんだかワクワクしてくる。
人も神も魔も妖も、共に同じ輪の中に入って生きることを選んだ、夢見て未来を作ることを選んだ、大いに間違い損ないながらも、折り合いをつけて現実的にそこに共に在ることを選んだ、理想郷ならざる夢の世界なのだろう。
そして、恋してる、ということは今を生きている、ということそのものだ。
だからこそ、これは死せるアスラウグの再誕の物語であり、今なお生き続ける女神の今語りなのである。

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