終末の魔女ですけどお兄ちゃんに二回も恋をするのはおかしいですか?2 (ダッシュエックス文庫)

【終末の魔女ですけどお兄ちゃんに二回も恋をするのはおかしいですか?2】 妹尾 尻尾/呉 マサヒロ ダッシュエックス文庫

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七星昴は、藤原一味による事件を解決したのち、最愛の妹・紅葉とともに断界魔装の訓練と、それに伴う医療行為(肉体接触による魔力補給)に励んでいた。そんなある日、紅葉にそっくりな妹のひとり・夕陽がベッドに潜り込んでくる。国家組織“魔女狩り”のリーダー・水奈星込愛の命により送り込まれた彼女と紅葉との三つ巴生活が始まり、爆乳姉妹に迫られては挟まれ、テクノブレイク寸前の生活を余儀なくされた昴。そんな中、藤原一味の残党が何者かに暗殺される事件が発生。込愛の思惑や夕陽の狙いは?そして昴と紅葉はついに一線を…!?魔女をめぐる限界ぎりぎりエロティックアクション第二弾!

くたばってなお、これほどの禍根を残すのか藤原は。
猛悪、と呼ぶに相応しい悪徳悪意邪悪の塊みたいな悪役だった藤原は、あまりにも悪として図抜けすぎていて、これに匹敵する敵役を出すのは難しいんじゃないか、と思えるほど。
出すとするならば方向性を完全に変えて、尊敬できる好敵手かあるいは対等に計略を叩き合うプレイヤーか、というところだけれど。
ともあれ、それほどまでの巨悪だった藤原である。やつが倒れたことでこれまで藤原がやってきたことが綺麗サッパリ消えてしまうわけではない。傷口は癒えぬまま残り、禍根は色濃く残っている。
後始末、というにはあまりにも凄惨な、邪悪なる所業の残務処理が今回の話となる。
やつは猛悪であり巨悪であった。つまるところ、彼自身が手を下すよりも、司令塔として様々な部署、領域に手を伸ばして表から裏から人を支配し、組織を掌握し、物事の道理を自分の都合の良いように改変していたのである。
だから、彼の支配下にあった領域の末端には、自分が一体何をしているか知らないまま彼の邪悪な所業の実行者、実働部隊、あるいは後始末のかかりとして片棒をかついで働いていた者たちがわんさといたわけだ。
彼らとしては真っ当な仕事としてそれをしていたつもりであったし、藤原によって規定され改変された情報は、彼らに自信と正しさと誇りを与えるに十分なものであったと言えよう。
だから、司令塔であり支配者であり指示者であり、ルールを定めるものであり、倫理を司るものだった藤原含めた首脳部が、まるっと削除されたとき、そこに残されたのは正しいと信じていた基準を見失った自覚なき実行者たちなのでありました。知らず、罪を犯していたことを、邪悪に加担していたことを、自らもまた邪悪の一員だったことを知らされてしまった人たちなのでした。
正義の基準を、価値観そのものを、加害者と被害者の立場を、根こそぎひっくり返されて、果たして正気でいられる人がどれほどいるのか。
誰を憎めばいいのか、誰を恨めばいいのか。この罪悪感を、嘲弄しながら悪人を討ったつもりで、無辜の少女たちを残忍に殺戮していたと自覚してしまった血塗られた手を、果たしてどう拭えばいいのか。
自分の最愛の妹と同じ立場だった娘たちを、嘲笑って殺した自分をどうすればいいのか。
討つべき邪悪は既に討たれてどこにもおらず、残されたのはやつの手先として働いていた邪悪の使徒であった自分のみ。
彼女の……夕陽の狂乱は斯様に重く複雑に絡まりきって、もう彼女の狂気と激情は、自らが邪悪だったと明らかにしてしまった、知らずにいれば苦しまずに済んだ事実を知らしめてしまった最愛の兄に向けられてしまったのも、また飲み込まざるを得ないんですよね。
愛と憎悪が混ざり合って得体の知れない怪物と化し、殺意と罪悪感もまた解けないほどに絡まりすぎて、自ずと最愛の人に始末をつけてもらいたいと願ってしまう。
その哀切に満ちた気持ちを、激情を、受け止めねばならない兄としての懐の広さ大きさ受容力。既に妹嫁さんが居るにも関わらず、お兄ちゃんこと昴に求められるキャパシティーたるや、尋常のものではないのです。これで元来、姉妹全員を嫁にもらうべく育てられた、という家庭環境がなかったらとてもじゃないけど受け止めきれなかったでしょう。普通、紅葉だけでもいっぱいいっぱいだもんなあ。一巻の際の紅葉の現況を振り返ってみれば、彼女の境遇事情諸々だけでスーパーヘヴィ級ですよ。おぱーいだけが大きくて重いんじゃないのさぁ。おぱーいだけでも、大きすぎておもすぎるのですが。
巻を重ねるごとに10センチずつ巨大化する巨乳って、どんなモンスターだよ。さすがに大きすぎると人体バランスとしてあかんでしょうw
ダッシュエックス文庫としては既存のラインを大いにぶっ超えたエロス描写満載な本作でしたが、まず何よりも姉妹の抱えるヘヴィすぎる鬱々とした状況を受け止め、護り尽くすお兄ちゃんの深くて広いくてエロい愛情の悲壮な覚悟を語るべき、愛とは自分ボロボロになって死ぬほどになるほど与えてなんぼ、というお話であり、邪悪をやっつけたからと行ってそう簡単にスカッとみんな解決して幸せになれるんじゃないよ。地道に傷は埋めて癒やして治して慰めてあげないといけないよ。壊すのは簡単で、元通りにするには途方もない労力と忍耐と愛情が必要なんだよ、というなかなかに厳しいお話でもありました。
だから、エロいことしてイチャイチャしないとやってらんないよ、というのは大変よくわかります、はい。大いにイチャコラしなしゃんせ。それだけの苦労はしてるし、結果も出してるんだから、やりなんせやりなんせ。

1巻感想