ロクでなし魔術講師と禁忌教典12 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード) 12】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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待ちにまった学院の前学期休み。早速、家に引きこもろうとするグレンだったが、セリカの強引な誘いによって、極寒のスノリア地方へ旅行にいくことに。
「ねぇ、アルフォネア教授…私達と勝負しませんか?」
旅行中、グレンを独り占めするセリカに見かね、グレンデート権を賭けて、雪合戦大会が勃発!?偶然居わせた女学院の生徒たちも巻き込み、伝統行事・銀竜祭へ参加するのだが…。
「やらかしたもんは仕方ねえ、お前の償いを手伝ってやるよ」
銀竜祭にまつわる逸話と、セリカの失われた過去。二つが交わる時、滅びゆくスノリアの運命に、グレンは立ち上がる!

セリカのこの姉とは違う、育ての母親というキャラクターを崩さないまま、見事にヒロインとして確立されているところは特別感があっていいキャラしてるんですよね。そのバックグラウンドからくるセリカという女性の背負うものの重さというのは、或いはルミアのそれよりも重いかもしれない。
グレンはそれを息子として、家族として、もしかしたら男としても、一緒に背負う覚悟を持っている。いや、セリカの怯えを感じ取ってようやくそれを告げるに至ったのが、今回のお話だったのでしょう。幼い頃に拾われて、それからずっとセリカによって守られて来たという自覚があるからこその、今度は自分が守るのだという想い。これは、どう言い繕っても庇護対象の範疇から逃れられないルミアたち年下の女の子たちには勝ち得ないものである。自分を育ててくれた女性に対しての想いというのは、いつだって男にとって特別なものがあるのだから。
まあそういう母と息子という関係が一時なりとも介在した関係だからこそ、その特別性はシルフィやルミアたちが危惧するものにはストッパーみたいなものが掛かってなかなか成りえないものなのだけれど、でも彼女たちが危惧する程度には二人の関係はもう母子のものを通り過ぎちゃっているのも確かな話。心の壁を容易に乗り越えてしまい兼ねないほどのヘヴィーな展開が待っていそうなだけに、なおさらに。
まあでもこれ、本格的にメインヒロインにならない限りはやっぱり難しい間柄ではあるんですけどね。なかにはヒロインの属性的な序列みたいなものをあっさりと無視して、メインヒロインらしくないヒロインキャラが本命を勝ち取ってしまう、なんて展開をもってくる作家さんも居るのだけれど、この作者さんはそのへんオーソドックスっぽいからなあ。
もっとも、未だシリーズを完結したことがない人であるだけに、結論は出すべきじゃないのでしょうけれど。
セリカが抱えている自身の謎に対する不安感、切迫感、焦燥感というものは前に一度やってるだけに、今回はセリカの過去などだいぶ核心に近づいたとはいえ、二番煎じの感は否めない部分もありました。結局、すべてが明らかになったわけではありませんでしたしね。
「メルガリウスの魔法使い」という童話が、過去の歴史に対して本当に核心に近いものを描いている、というのが明確になったのは物語としては大きな進展ではあるのでしょう。ラスボスらしき人物も出てきましたし。
とりあえず、件の魔法使いの物語がいったいどういうものなのか、というのを一通り大枠でも語ってくれるとありがたくもあるのですけれど。その時その時に断片的に語られるだけだもんなあ。
あと、せっかく以前シルフィたちが短期留学したときに出会った聖リリィ学院の面々が再登場したのは良かったのですけれど、おおむねモブ扱いで進行してしまったのはちょっと勿体なかったですよ。シルフィたちと旧交を温める、というのも中途半端でしたし、ジニーの毒舌は炸裂してましたけれど派閥の頭二人はジニーと比べてもあんまり目立ってなかったですし。折角の学校の外のシルフィたちの同世代の友人たちだっただけに、ちょっと勿体無い再登場だったかなあ。

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