ガーリー・エアフォースVII (電撃文庫)

【ガーリー・エアフォースVII】 夏海 公司/遠坂 あさぎ 電撃文庫

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バディを撃墜され、F‐15Jから降ろされた蛍橋三等空尉。失意に沈む中、彼をスカウトしに技本室長の知寄蒔絵がやってくる。半信半疑で訪れた技本で蛍橋を待ち受けていたのは、複座の軍用機JAS39グリペンと、ポルトガル語を操りペールピンクの髪をなびかせるアニマの少女だった。パートナーの少女グリペンに加えて、新たな翼を手に入れた蛍橋は、以前にもましてザイへの敵愾心を強めていくのだが―。ザイとの大空戦に世界中のアニマが大集結!?グリペンがその身を懸けた、次元を越えたもう一つの物語。

……想像以上に凄いのが出てきてしまったんですが。うわぁ。
本格的にSFに突入してきた、と前回の巻の感想で書いていたのですが本格的どころの話じゃなかったよ。完全にこれSFだわ。
ザイとはいったいなんなのか。モンゴルの鉱山で発見された千年前のイーグルの残骸の正体とは、そしてグリペンが抱えている真実とは。
これまでずっと伏せられていた物語の根幹となる部分の秘密が、ほぼすべて明らかにされたこの巻の内容は、ちょっとどころではない衝撃的なものでした。
世界の構造そのものに、そこまで手が加わっていたというのか。
既に現状でも慧たちの住む世界の状況は切羽詰まったを通り越してほぼ滅びへのカウントダウンへと突入してしまっているのだけれど、実情はそんな地点すらある意味通り越してしまっていたのである。
この七巻は、そのブレイクスルーに至る最初にして始まりのステージというわけだ。
それにしても、ここまで作品としてのスケールが三周りくらい一気にでかくなるとは思わなんだ。そして、その分だけグリペンが背負ってるもの、抱いている覚悟の密度もまた実は桁違いのものだった、ということが明らかになってるんですよね。そして、彼女が「彼」に対して抱いている愛情の深さも。そして、その揺るぎなさも。
アニマとは一体なにものなのか。どういう存在なのか。どうして、一機種に対してアニマ一体しか発現しないのか。わりと、この手の擬人化ものってどうして「擬人化」したのか、その仕組みに関しては曖昧にぼかすか、或いは詳細に設定詰めるか、の両方のパターンがあると思うのだけれど、本作は見事なまでに後者でありました。アニマの存在について詳らかにされていくがゆえに、その扱い方についても深く考えざるを得なくなってくる。もっとも、それを知らずしても彼女たちの「本質」とちゃんと向き合えることが主人公たちの主人公である資質ではあったのでしょうけれど。
その意味では、この蛍橋三尉という男はわりとロクでなしの類であったんですよね。ザイへの憎しみに荒れてたとはいえ、その素行は狂犬そのものでしたしちょっとまともな人間ではなかった。グリペンと出会ってからも、無神経の極みで視野も狭くまあひどい男でしたよ。
でも、そう言えば最初期の鳴谷慧のメンタルの不安定さを思い返してみると、あれをそのまま煮凝りのように固めてしまって年を経たら、なるほど蛍橋みたいな感じになってしまっていたのかもしれない。正直、選択肢が限られていたとはいえ、よくこの男を選んだなあ、と思ってしまいます。途中まで明らかにハズレ引いたとしか思えない状態でしたし。ある意味イーグルの相方が反面教師になったんじゃなかろうか。あれがひどすぎたぶん、蛍橋は自分を顧みることが出来たんじゃなかろうか。本質的に女性に対しても他人に対しても優しく気遣いの出来る人間であったとしても、あそこまで荒んでしまってたら、自力で修正していくにも時間かかったろうし。グリペンって受け身な方だから彼女の方から積極的に「彼」を変えていくみたいな影響力って何気にそんなに発揮出来なかったでしょうし。
ただまあ、お互い不器用な分思い込んだら一直線、というありさまがいわばグリペンをこの円環へと突入させてしまった、というのなら、無垢な愛というのは罪深いものなのかもしれません。
そうかー、第一巻でグリペンが初対面から慧を特別と認識した理由が、ついにここに回帰してきたのか。七巻まで引っ張ったというのは長いというべきか、一冊丸々こういう話に使えたというのは長期シリーズゆえですけれど、ずいぶんとスケール大きい構成組みましたよねえ。ここまで話広げられるか、はじめた当初はわからなかっただろうに。
表紙のライノも、なんで今さらこの娘? と思ったのだけれど、こうなってみると大いに納得。
いわばこっちのライノが本来の彼女だった、というわけか。本来の、というと若干微妙なところがあるけれど。一応、あれも計算によって構築された演技だ、という話ですし。でも、それにとどまらない萌芽が垣間見えたわけですけれど。逆にこっちではかつてのライノよりも酷いことになっていたイーグルの有様。普段のあの天真爛漫さが、今回のライノと被るところがあって、対比にもなっていたんでしょうなあ。
ともあれ全部を知ってしまった慧にとって、今後どうするか、どの選択肢を選んでも地獄なんですよね、これ。果たして、最後の場面での宣言は深い決断故のものなのか。いずれにしても、大いに悶着起こりそうです。なんかこうなってくると、腹黒ファントムが癒やしに思えてきたw

それはそれとして、明華の扱いがホント酷いんじゃないですか!?(苦笑

シリーズ感想