狼と香辛料XX Spring LogIII (電撃文庫)

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湯治客で賑わう短い夏が終わり、湯屋『狼と香辛料亭』はひと時の穏やかな秋を迎えていた。山々に囲まれたニョッヒラの秋の味覚を堪能しようと、いつも以上に張り切るホロとあきれ顔のロレンス。山での散策を終えて、籠いっぱいの土産とともに二人が湯屋に戻ると、入り口にはたくさんの人だかりが。「なんじゃ、よくわからぬが、色々な獣の匂いがしんす」
湯屋『狼と香辛料亭』にやってきた、時季外れの珍客たちの目的とは―。書き下ろし短編『狼と収穫の秋』に加え、電撃文庫MAGAZINE掲載短編4本を収録した、湯屋での物語第3弾。

イチャイチャイチャイチャ。わかった、もうわかったから勘弁してください、と言いたくなるくらいいちゃつくご夫婦。明らかに二人で旅していた時よりもいちゃついている二人である。あの頃はもう少し駆け引きみたいなものを二人して楽しんでいたのだけれど、今のロレンスはホロのこと好きすぎてたまらんというのを抑えも隠しもしないし、ホロが望むものをなんだかんだ言いながらも積極的に捧げまくってる。いやいや、いくらなんでも甘やかしすぎなんじゃないですか? とすら思っていたのですけれど、そうかー、ロレンスお父さんてばミューリがいなくなって寂しくなっていたのか。
その分、ホロを甘やかすことで慰めていたんですね。自分を甘やかさせることで寂しがってるロレンスを甘やかしていたんじゃよ、とドヤ顔のホロさんですが便乗して甘やかして貰っていたようにしか見えないw
いい加減太りますよ、賢狼さま。
久々に登場したミューリ傭兵団の団長さんが、ロレンスに負けず劣らずミューリ贔屓のお父さん的な立ち回りをしていて、ミューリが駆け落ちをしたと知って愕然としている様子に思わずフフフ笑い。頼もしい気のいい兄ちゃんだったのに、この人も何年経っても変わらんなあ。ミューリのこと姫、姫とえらい可愛がってくれているようで。未だに深い交流がある、というのはなんとも嬉しくなりますね。
未だに交流がある、というとホロとロレンスを結びつけてくれたあのエルサの近況も知れて良かったです。エヴァンともちゃんと結ばれているようでよかった。ってか、あっちは3人も子供生まれてるのかー。
でも、こんな風にエルサのように文で近況を送ってきてくれるか、もしくはニョッヒラに湯治に訪れてくれるか、という機会でもないとかつての旅で出会った人たちとの交流はもう無い。ロレンスとホロの旅はもう終わって、このニョッヒラから外に出ない、と思っていただけにラストの展開は思わず胸が高鳴ってしまいました。
いい加減立場も違いますし、帰るべき場所がある身、そしてロレンス自身もう若くはないのですけれど、それでもまだ旅に馳せる想いがあるなら。ただ待つのではなく、自分の足で懐かしい人々に会いに行くという能動を求める気持ちがあるなら、たとえ幸せの最中であっても心残りとして積もるものはあるんですよね。そういう気持ちを押し止めるでも共有してごまかすでもなく、ちゃんと後押ししてくれるホロは、掛け値なしの良妻なんでしょうなあ、こういうのって。
ちゃんと、留守中の宿の手配りについても考えてくれていたわけですし。
でも、このニョッヒラに腰を据えるようになってから以前よりもホロと同じ獣の人たちとの交流が増えているわけですけれど、思っていたよりもずっとたくさんの「獣」が人に混じって暮らしてるんだなあ、と実感しています。人族の隆盛によっていずれ消えゆく儚い存在なのかと昔は思い巡らせていたものですけれど、幾人もの古老たちによる苦労もあったのでしょうけれど、けっこうしぶとく人の世の中に紛れて生き延びていっているようなんですよね。ある種のノウハウやツテみたいなものも構築できているんじゃないでしょうか。獣同士でかなり密接にコミュニティめいた交流があるみたいですし。場合によっては、今後「狼と香辛料亭」はそうした獣たちの交流のハブみたいなものになる可能性もありそうですし。
ミューリの方の話に出てきた羊さんが語る夢の話のような人ならざる者たちによる国、というのは難しいかも知れないけれど、人の世の影で隠然たる影響力を及ぼす結社、或いはコミュニティ的なものが発展組織されて、現代までたくましく生き残ってもなんか不思議じゃない感じだなあ。
いつかの未来に至っても、ホロが寂しくても孤独にはならない想像の余地が広がっていく、というのはどこか安堵のようなものを抱かせてくれる。そういう意味でも優しいアフターストーリーだと思うんですよねえ、本作って。
さて、しかしこうなるとやはり以前の旅で出会った人たちとの再会を期待してしまうわけで。エーヴがバリバリやってるのはミューリ編で伝え聞こえてきているので、あとはやはりノーラが今どうしてるか、だわなあw

シリーズ感想