はたらく魔王さま!17 (電撃文庫)

【はたらく魔王さま!17】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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フリーター魔王さまの庶民派ファンタジー、大魔王の遺産を探す第17巻!

正社員登用試験に落ちた悔しさを仕事にぶつけ、いつも以上に神クルーっぷりをみせる魔王。だが、異世界エンテ・イスラから日本にやってきて以来ずっと掲げていた目標を失い、見た目とは裏腹に落ち込んでいた。
さらには、何者かに襲撃され可愛いニワトリの姿で弱ったままのカミーオや、「大魔王の遺産」最後の一つ「アストラル・ジェム」の行方など、解決すべき問題も山積みだった。
そんな中、カミーオ襲撃の鍵を握ると思われる存在が代々木周辺で目撃される。天祢と共に現場に向かった魔王は、そこでワニのような悪魔と遭遇。なんとか確保したものの、六畳一間のヴィラ・ローザ笹塚201号室で世話をすることになり、仕事にプライベートに、魔王は心の休まる暇がなくなってしまい……。
一方マグロナルドでは、店長の木崎に異動命令が出たことで、恵美や千穂を始めとしたクルー達に動揺が広がっていた。木崎と今後について話す魔王を見て、恵美と千穂は魔王が日本に留まる理由がなくなるのではと、不安を覚え始める。エンテ・イスラに戻るのか、日本で仕事を続けるのか、今後のキャリアをどうするか悩み始めた魔王のとる選択肢とは──。
お仕事成分多めでお贈りする、庶民派ファンタジー第17巻!
木崎店長の実年齢が27歳であるという事実にショックを隠しきれない!
いやあ、これほどのやり手の女性の年齢が未だ三十にも届かない27歳ですよ。すごいなあ、すごいなあ。
ぶっちゃけねえ、出来る人って年齢関係ないんですよね。出来る人は若い頃からバリバリできる。もちろん、歳を積み重ねることで出来ることの増えていく晩成の人も少なくはないでしょうけれど、それはあくまで一つの要素であって、年齢ってのは出来る出来ないを左右する大きな要因にはあんまりなりえないんじゃないだろうか。
不惑に至って自らを省みて、また様々な年齢の人と関わる機会があってしみじみそう思うのですけれど、それでも二十代後半というのは得るべき経験もまだ足りなく手探りの時期でしょうに、木崎さんほどの能力と、能力を発揮する意欲と、その能力を向けるべき方向性への確固たる指向性。尊敬の念しか浮かびません。何度生まれ変わっても、こんな風になれるとは思えんなあ。
果たして、こういう女性ってどういう男性を好むのでしょう。木崎さんに関してはもう男の影なんて微塵も見えないだけになおさらにその好みとかが気になってしまう。サリエルは信奉者であって、異性としてはなんか違うだろうし、木崎さんてばサリエルに対してはなんかもうこれどういう扱いなんだ? 今回の「お話」でのサリエルへの対応見てたら全然わかんなくなったぞw
真奥に対しては好感度はそれこそ最高級に高いだろうけれど、異性に対してのそれでは全然なさそうだからなあ。こういう人に限って、ダメンズウォーカーだったりするのだけれど、木崎さんに限ってはなんか想像できないし。温厚な家庭人タイプの優しい男性とかなんですかねえ。
いやいやうん、今回はほんと木崎さんの異動通達にはじまるあれこれが発端だっただけに、木崎さん回とも言える彼女のお話で、色々と考えさせられました。彼女も色々悩み、妥協や迷いに向けるべき足先を踏み出せないときもある、という普通の人……いや、この時点で普通の人の範疇よりもずいぶん上な気がするけれど、決して完璧超人じゃないんだよ、という側面を見せる……ことで、むしろさらに完璧度をあげているような気もするのだけれど、ともかく木崎店長という一個人、大人の女性としての魅力というか、器?みたいなものを否応なく知らしめさせられるお話でした。そりゃ魔王さまもこの人に対しては敬すべき上司から揺らぎようがないよなあ。
それはそれとして、マグドの正採用試験に落ちてしまった真奥。本命とはいえ、一回落ちたくらいでなんだよー、と思うところでもあるのだけれど、一回でも一社でも落とされるというのは深刻にキツイものでして。それを何十何百と繰り返す就職活動は、あれ精神的に死にます。ただ、真奥に関しては別に正社員にならなくても、本業で「魔王」という活動が残っているわけで、そこに生きるための必然性はないのであります。そこを、ヒロイン衆は危惧してるんですよね。まあそりゃそうだよなあ。こちらの現代日本と真奥の縁というのは今となっては彼の意志一つで断ち切れるものになっている。まあそう簡単に切り捨ててしまうには、こっちの暮らしは彼らにとってもそんな軽いものじゃなかったんですけどね。でもまあ、彼女たちからすれば心配は心配なのだ。それを払拭するには、明確な真奥の意思表明みたいなものが必要だったわけで、そうかー、それでこの間のバレンタインとつながるわけだ。この構成は実にうまい。真奥がなんだかんだと要所のイベントは抑えている、という気の利いた一面も見せてくれたわけですしね。まあ真奥側からすれば、いくら身辺がドタバタしていたからといって、このイベントを忘れて放っておけるほど無神経ではありませんし、周りの人間関係蔑ろにしてないですわな。むしろ、気遣いの魔王さまなんですから。
でも、恵美のあの内面乙女モードは素直に可愛いです。この娘さんはもう本当に、目覚めてしまいましたなあ。変な妄想してたら、千穂やベルに女子力の違いを見せつけられて、恥ずかしさのあまり顔を覆ったまま動けなくなってるところとか、特に特にw
一方で、この局面で「老人介護」の展開をぶっこんでくるとは思わなかった。それも、重度の認知症の介護生活。相手はトカゲ型の魔族とはいえ、状況は完全にそれ。これはもう本当にキツイ。お客さん相手にする接客業というのがなおさらにキツイ。まだ一緒になって手伝ってくれる人たちがけっこうたくさんいる、というのはまただいぶ助かっているんだろうけど。何気に隣に住んでるベルがこの「老人介護」に限らず、いろんな局面で真奥の生活支えてるよなあ、と今更ながらに実感させられる。内助の功? 千穂ちゃんも受験も迫って大変だろうにまめに通ってきてくれていて、色々と助けになってくれているのはもちろんわかっているのですけれど、隣に住んでいるというのはやっぱり即応性が違いますもんね。近所付き合いの重要性は現代になってもなお変わらんのです。彼女が近所付き合いの範疇か、というと大きな疑問が生じるところですけれど。

と、日本の生活の方は色々とトラブルではないけれど、問題が多発しながらなんとかみんなで協力してしのいでいる一方で、エンテ・イスラの方はアイテムの奪取などなんやかんやとハードルはあるものの、ある程度順調に進展しつつ、ナイナイの協力体制もある程度安定して結束出来ていたので安心していたら、天使側もここに来てキツイ一手を指してきた。これはもう、戦争への一直線。それも前のような魔族と人類というわかりやすい構図ではなく、混迷しきった泥沼になりかねない危機である。矢面に立たされるベルが、これえらいことになりそうですよ。
そして、ほんと肝心なときには席を外している魔王と勇者!!

シリーズ感想