【雛菊こころのブレイクタイム 2】 ひなた 華月/笹森 トモエ 講談社ラノベ文庫

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生徒達の悩みを解決する“お雛様”こと雛菊こころをサポートするようになった伊莉也は彼女に影響されてか、困った人に対して敏感に反応し、ついつい手をさしのべてしまうようになっていた。今回も選択授業で知り合った少女・ユリが抱える闇に触れた伊莉也だったが、彼女の不思議な思考と言動に振り回され苦戦する。なんとかユリの心を開くことに成功したとき、彼女の闇の元が“お雛様”誕生のきっかけになったある事件へとたどり着くのだった…。誰もが持っている闇を解決するために、おいしいコーヒーと温かい助言をくれる“お雛様の部屋”の扉は誰にでも開いている。第4回講談社ラノベチャレンジカップ“佳作”受賞作、2杯目!

聖女のごとき優しさと温もりを示すこころさんだとて、その心には闇があり、人を恨み憎む気持ちはある。それが自分の大切な妹にまつわるものだったら、なおさらのことだ。彼女は人形ではなく、人間だもの。「お雛様」という虚像の向こうにはちゃんと年相応の女の子が隠れていたのだ。
人の悩みを解決する、ということはすなわち相手の内面を聞くことでもある。それは弱みであったり、他人に知られたくない気持ちを、こころさんには知られてしまうということだ。
だから、かつて相談に訪れた人の多くは、こころさんを人間の同級生や先輩として捉えるのではなく「お雛様」という虚像を作り上げることで、自分の悩み、内面をさらけ出したという事実を隔離して祀り上げ、棚の奥に隠していたのだという。そして、人間であるこころさんに近づかないことで怖れから目をそらしていたのだそうだ。だから、こころさんはあの温かい人柄にも関わらず、周囲には友人と呼べるような身近な人も殆どいなかったという。
長らく、こころさんはそうした「お雛様」という偶像に甘んじていた。他者の悩みを聞いて皆が抱える色々な問題を解決するきっかけを与えるという行為は、自分の妹の悩みをきけなかったということからの代償行為だったのだろうか。いずれにしても、彼女の時間は促す人の居ないままずっと止まってたのだろう。
ところが、伊莉也が彼女をサポートするようになり、それをきっかけとしたように桃花をはじめ、こころを慕って入り浸る人が現れ、また前に悩みを相談に来て、その後も縁が途切れずに遊びに来る人が増えてきたのである。
孤独ではなくなる、ということは何かを変える勇気を得る、ということでもある。
妹の自殺未遂に関わりのあるユリとの交流が、こころさんにこれまで踏み出せなかった躊躇を振り切る一歩を得るきっかけとして働き、ついにこころさんは自分の闇と向き合うことになるのであった。
そこには、今回一連の相談事で逃れられない心の闇が誰の中にでもある、ということを浮き彫りにする話が続いたことも大きなきっかけではあったんですよね。そして、その闇は決して許されないものではなく、お互いを大切に思うからこそ時として冷却期間を置かないといけない場合もあったり、憎しみを抱くことがその相手を全否定することではなかったり。
人の心は複雑で、だからこそ乱暴に扱わずに丁寧に解きほぐしていかないといけないものなんだなあ、としみじみと感じるエピソード群でありました。
ただ、伊莉也は若干繊細に扱おうとしすぎて、手に負えねえとすぐに逃げ腰になって放り出そうとするきらいが見受けられるんですよね。こうして書くと無責任な人間に見えてしまいますけれど、そうではなくて、相手を大切に思うからこそ余計に触れて壊すことを怖れて、ってかビビって何もしようせずに時間が流れるママ放置してしまうという感じで。
周りに叱咤激励してくれる人が居たから、あまりひどい事になる前に動き出せたように見えましたけれど、後押しなかったらいつまでも自力で動けなかったんじゃないだろうか。そう思ってしまう程度には、ちと意気地が足りなかったですねえ……。
個人的には、そこまで意気地のない男の子にはそれまで見えていなかったので、なんとなくそこらへんだけ話の都合上、みたいなところが垣間見えた気もしたのですけれど。
それはそれとして、あの伊莉也の告白は勘違いしようのないはっきりした告白だったと思うんですけれど、こころさんそれ本気で天然なのか、無意識の自己防衛なのか、どっちなんでしょうねえ(苦笑

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