【ポンコツ勇者の下剋上 2】 藤川 恵蔵/ぐれーともす MF文庫J

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勇者の素養がない英雄。今度は世界を救う勇者の“仲間”を探す旅に――!?

選ばれし勇者のみが扱える神剣――聖光剣エクスキャリバーを無事に勇者の下に届け、目的を果たしたかに見えた少年・クロウ。ところが全部で12本あるという神剣の姉妹剣の過半数が所在不明という事実が判明。これでは魔王戦に臨めないということで、聖光剣の精霊・ホリーの導き(という名の脅し)によって残りの神剣を探すことになり……
〈貴方が私と一緒に探してくれないなら、もう人類には滅びてもらうしかありませんねえ〉
「……俺が姉妹剣を全部見つけるよ……」
そう覚悟を決めたクロウの下へ、姉妹剣を持った暗殺者が訪れ――!?
おおおっ!? ちょっと主人公のクロウくん、思っていたのとは全然違う方向でこの子ヤバイ子なのか?
一巻の印象では、根本的に怠惰でやる気ないタイプなのに妙なところで責任感が強くて自分しか出来ないことがあったら、どんな困難を前にしても頑張ってしまう子。他人に評価してもらうことに殆ど興味なく、ある種の自己満足で充足できるが故に、前回なんぞ世界中を敵に回すような状況になってしまっても臆さなかった、という風に見えてたんですよね。
基本的にそれは間違っていないと思うんだけれど、立脚点が想像していた善性によるものとは全然違うのかも知れない、このクロウくん。
生まれ育ちの孤独さ、育ってきた環境の下劣さ。それから救い出してしまった恩人に何も報いることの出来なかったという無力感。自分の無能さと、それ故の苦しみ多き生涯をこれまで渡り歩いていた経験が彼を形作っているのだとすれば、その研ぎ澄まされた才覚と根底にある冷たい鋼のような精神性は絶望と諦観によって形成されているのではないだろうか。
自分に期待せず、他人を利用することでしか何もなし得ない自分に対する嫌悪感。そこから派生して生まれてくるのは、冷徹なまでに理想も願望も介在しない現実主義だ。先の勇者捜索で、国に反逆者認定されてすら思いとどまらずに、勇者の発見をやり遂げたのは彼にとってはそれが世界を魔王の脅威から救うために必要なただの現実だったからなのかもしれない。正当な世界の破滅に対する危機感が、それ以外を余分として処理してしまったが故の邁進だったのか。
クロウくんに情がないとかそういうことはないんですよね。親しいクラスメイトを心配し、世話になった恩師に気遣い、幼い勇者を慰め、うるさい聖剣の精にはなんだかんだ構ってあげている。
ただ、目的を達するためには手段を選ばない以前に拘泥すらせず、降った暗殺者の少女にもう殺しという汚れ仕事をさせないという大切にする態度を示しながら、一方で欠片もその心底を信用していなかったその心持ち。なんというか、ダーティーである……というよりもバランスが崩れている、或いは偏りきっている、リミッターが外れている? というべきなのか。
無知とやたら強烈な女の情念故に倫理観と常識に欠けている幼女勇者は、いわば未成熟ゆえのアンバランスさなので成長いかんによっては突拍子のない子に育ったとしても壊れた人間になるようには見えないんだけれど……ヤンデレにはなりそうな気質ではあるが。
クロウくんに関してははっきりと異常者のたぐいっぽい。
誰が悪いというわけではなく、状況と環境とクロウくん自身の見通しの甘さの結果とは言え、この主人公を選択の余地のないところまで追い詰めてしまったのは、果たして誰にとっての致命になるのか。
完全にスイッチ入ってしまったクロウくんの、これからの活躍が色んな意味で楽しみすぎます。

しかし、電書の特典SS読むと聖剣ホリーと勇者シオン、二人きりだとそこまで仲悪いようにも見えないんですよね。ホリー、幼女勇者のことあれだけ毛嫌いしているのに、何気に過保護かというくらい細々と面倒見てますし。恋愛脳のホリーですけれど、意外と子供の面倒見るの嫌いじゃないのかしら。

1巻感想