【インフィニット・デンドログラム 7.奇跡の盾】 海道左近/ タイキ HJ文庫

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奇跡の盾は、ここに在る

リューイを送り届けたトルネ村で、風星祭が始まる。しかしその時、過去に封じられたと言われる怪物・コクテン様の封印が解ける。
その正体とは、古代伝説級のUBM【黒天空亡モノクローム】だった。そのモンスターに対抗しようとしたレイやビースリーだったが、混乱に乗じたPKもレイたちに襲いかかる。
ティアンの村人たちの安否は、そしてかつて村を救った英雄であるリューイの義父の行方は――。
「『来るがいいモンスター。奇跡の盾は、ここに在る』」
「起きないから奇跡って言うんですよ」と言われるとだいたい奇跡さん起きる法則。これはもう奇跡さんが天の邪鬼だから、としか言いようがありませんよね、うん。
まったく関係ないのだけれど、本作のUBMって全部じゃないのだけれど、その大半が四文字の仇名持ちなんですよね。今回の「黒天空亡」然り。これって、中華武侠モノの二つ名みたいで結構好きなんですよ、私。二つ名とか異名持ちとかライトノベルでは定番も定番、昨今では揶揄の対象になって目減りはしていますが、それでも良く散見されるわけですけれど、不思議と漢字四文字のって意外と少ないんですよね。音としても韻を踏むことが出来て耳触りも良いと思うのだけれど。
なので、本作ではこうした漢字四文字の冠を持つUBMがたくさん出てくるので、それだけでもなんだか幸せな気分になります。マスターの通り名の中にもけっこう四文字があるので、それはそれで見てるだけで嬉しくなります。

しかしビースリーの兄貴は、挿絵なかったらイメージが完全にガテン系兄貴ですよな。実際はフルアーマー兄貴なんだけれど、イメージではタンクトップ兄貴しか浮かんでこない。これを誤解せずに先輩と見抜く、見抜くとかじゃなくてキッチリした清潔でスマートな女子大学生な先輩とこのバルバロイな先輩に差異を見出してないって感じの認識なんですよねえ。マリーのときもそうだったけれど、これはレイのリアルでも有している特質なんだろうか。
そうすると、彼がゲーム内のNPCであるティアンたちを普通に生きている人間として、自分たちと区別していない、というのはかなり意味深なものがあるんじゃなかろうか。他にもティアンを人間と思う人たち、この世界をリアルに受け止めている人たちがある一定以上の割合でいる、というのを考慮しても、それと別にしてレイの彼特有の認識力に基づくティアンに対する認識には無視できないものがある。
月世会が以前から医療目的でVRの開発企画に幾つも出資していたけれど、ダイブ型VRMMO<Infinite Dendrogram>が唐突に現れて、しかし月世の会はまったくこれを把握していなかった、という情報はなかなか意味深じゃあないですか。
まあそういう世界の秘密に関しては追々進行していくのでしょうけれど、実際にティアンとマスターとの間に子供が生まれる、という事例が現実のものとなりつつある、という時点でなんかもう吹っ飛んでるんですよねえ。
果たして、このティアンの奥さんと結婚した旦那さん。シジマ・イチロウの顛末についてはこの巻において存分に語られるのだけれど、彼にとってもう現実がどっちとか果たして意味のあるものになっているのかどうか。おそらく、本来のゲームのルールからは完全に逸脱しただろうシジマ氏の騎獣グリンガムの行動は、魂魄実装ともいうべきそれがこの世界の人間だけではなく、モンスターにまで至っていることを証明するようなものでしょうし。これ、実際に生きているもの、心持つモノと何が違うというのだろう。
それはそれとして、暗殺王さん。その言い方は絶対に誤解するから。話の流れからしても。月夜さん、後始末させる方とばかり思ってたけれど、何気に後始末させられる方も経験豊富なんじゃないですか?
本番のVSモノクローム戦はついにネメシスの第三形態発動ということで、これロマン武器だわなあ・【不屈】にふさわしいと言えばふさわしいのでしょうけれど。
しかしこれ、モノクローム戦にはピッタリの兵装だったとは言え、他の使い勝手とかどうなんでしょうね。かなり面倒くさいけれど、使いようはけっこうあるのか。

恒例の番外編はルーク探偵、反知能犯罪者と相対する編でありました。ミステリー特有の探偵の犯人探しって、キレキレの知能犯との頭脳勝負という側面があるものですけれど、ここまでことごとく予想と想像を下回る! 下回る犯人が相手だと、そりゃ探偵怒るね! とりあえず、ヒントの暗号文素で間違えるのはアウト!! なにかそこに作為があるのでは、と疑ってしまうの当然ですから。
これは探偵としても怪盗としても、許しがたい認めがたい相手でしたなあ。これで相手に自覚があればまだ救いがあるのですが。最後探偵とか関係なしに心理カウンセラーみたいになってましたよ、ルークくん。いやアノ場合あれをカウンセリングと言っていいのか、人格を暴き出す心理攻撃と言うべきなのか。
ラストに出てきた監獄在住の【犯罪王】。またこれが字面から想像するキャラとは全然違って。アル・カポネ系の犯罪王なのかと思ったら、違う方向でヤバイ人だこれ。


シリーズ感想