【昔勇者で今は骨 3.勇者と聖邪】 佐伯 庸介/白狼 電撃文庫

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骨になっても心は勇者な冒険者(※ただし骨)が往く、 異世界ファンタジー

『――――久しぶりね、アル』
イザナを追ってエルフの国・精霊領域フィネグンドを訪れた昔勇者で今は骨な冒険者・アルと仲間たち。彼らを出迎えたのは、かつての勇者アルヴィス……と瓜二つの容姿をした人物だった!
『シミュラルと申します。以後、お見知りおきを』
ついにイザナとの再会を果たしたアルだったが、彼女の口から語られた計画はアルの存在を根底から覆しかねないもので――!?
魔王が倒された後の世界で、なんだかんだと世界を影から救ってきた骨勇者もついに年貢の納め時か!?

オーク王アライシャル格好いいなあ。いわゆる雑魚か汎用扱いなモンスターが、こんな風に威風と知性と品格を兼ね備えて一勢を、或いは一族、一国を率いているのって結構好きなんですよね。安易に敵ではなく、話が通じる相手なら尚更に。
さて、勇者時代の仲間であり、聖女にして死霊術師。魔王との決戦時にアルヴィスの願いを叶えて彼をスケルトンにした張本人でもあるイザナを探して、エルフの国を訪れることにしたアルたち。いわゆる本妻の登場である。ってか、マジで年季が違うなあ。シミュラルが丁度、イザナの子供でも在りアルヴィスの子供でもある、という立ち位置になってしまったために、がっつり夫婦感が出てしまいましたし、アルのあの枯れた部分を一番理解してそうなのがイザナなだけに、余計に離れていてもパートナー、ってな感じが出てるんですよね。
もっとも、アルのそれを受け入れいている、というわけではないのは一連の事件を引き起こしたことからも明らかなのですが。ただ、ミクトラやハルベルがスケルトンのアルしか知らないという事もあってか、勇者である彼の本質に対してまだよく理解も及んでいないし、焦燥を感じるまでにも至っていない。ハルビルに至っては勇者アルヴィスの風聞についても知らないわけで、知っているのはこの骨のアルがすべてなのである。イザナとはステージが噛み合ってない、とも言えるんですよね。
ただ、イザナはアルに出会う前の人生、アルと旅した時の体験、アルと別れてからの歩みが凄まじすぎてねえ。彼女の情の深さ、愛の深さを考えるならアルヴィスへの一途な想いが執着から深淵に至ってしまいそうなところだったのでしょうけれど、なるほどあとがきで「彼女は根底が愛の人」と語られていたのを見て納得。イザナという人は一つの愛に傾いて他を眼中に入れなくなる狭くも深い愛の人ではなく、普通に多くを慈しみ愛しむことが出来る人だったわけだ。だからこそ、かつて自分を率いた軍勢を見捨てることができずに魔軍に居たのだし、だからこそ勇者アルヴィスの仲間になり、彼をスケルトンに変えてしまった罪悪感から彼を救うために邁進し、しかしそこから生まれたものをもまた愛してしまったんですなあ。いわば、愛ゆえに誰も見捨てられない人なのだろう、イザナという人は。
だからこそ、その愛に挟まれて苦悩し続けていたのに、肝心要のアルくんがねえ、その葛藤の片側としてサクッと断ち切っちゃうんだからさあ、考えようによっては酷い話である。イザナが彼を頭おかしいんですよ、と言っちゃうのも無理はない。彼が骨になった経緯からして、自分に対する欲の薄さ、自己愛の薄さが透けて見えるわけですけれど、これは彼を好きになった人たちからすればもどかしいを通り越して立つ瀬がないというか切ないというか。
もっと頼って、期待して、と願うイザナのセリフには胸を突くものがありました。ってか、アルも魔王倒したあとトンズラこかないで、イザナ頼って身を寄せてたら、一緒に復活の方法考えようとしていたらイザナも一人で暴走せずに済んだんじゃなかろうか。
死んじゃったしもういいやー、で済ましてしまうところ、そういうところですよ、アルヴィスさん。
この人はほんと、もっとしがらみとか人の縁でがんじがらめに縛っておかないとだめなのかも知れない。骨のアルとなってからできた人の縁も、そう考えるとよいことなのでしょう。船霊のソカリィも、言うたら放ったらかしにしちゃいけない縁の錨として出てきたものと言えるかも知れませんし、フブルさんがあれだけトラブル引き起こすにもかかわらず、アルに紐つけて逃さないようにしていたのも考えようによっちゃそういうことなんでしょうし。
ともあれ、ソカリィちゃんのような船霊や、シミュラルみたいな子が居たら、さすがに知らんぷりはできないでしょうし、着実に重石は増えてってるんでしょうねえ。ちゃっかりハルベルは学校に通わせたり、今度はイザナに弟子入りさせたり、と放ったらかしにしようとしてなくも見えなくもないですがw
それでも、人に戻る気が少しでもできたなら、アルの周りの人たちにとっては前進なんでしょうねえ。
しかし、あれで六割八割って元の勇者の時のアルヴィスってどんだけだったんだ。そのアルヴィスが死んでようやく届いた魔王って、ほんとにヤバかったんだなあ(しみじみ
何気に魔王以外の普通の魔軍にとってはアルヴィス以下勇者パーティーって自然災害並の災厄以外のなにものでもなかったみたいだけどw

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