【ガーリー・エアフォース 8】 夏海 公司/遠坂 あさぎ 電撃文庫

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グリペンと世界、どちらを救う? 美少女×戦闘機ストーリー、第8弾!

アンフィジカルレイヤーで目の当たりにした出来事により、ザイの正体とグリペンの理不尽な定めを知った慧。彼女を解放するために、慧はこれ以上の戦いと、世界を救うことを拒否してしまう。
そんな中、新ドーターの運用試験を行っていたイギリスのベンベキュラ基地が、ザイの戦略兵器により突如消滅。そしてザイの次なる攻撃目標は――小松!?
防戦にあたる独飛の面々だが、慧とグリペンの不在により苦戦を強いられる。はたして慧の選択は――?
巻末には那覇基地の守護神、バイパーゼロの活躍を描く短編も収録した、美少女×戦闘機ストーリー、グリペンの運命に立ち向かう第8弾!

「俺は世界を……救わない」
前巻ラストでの衝撃的だけれど、決意の籠もった慧のセリフ。さあ、そこから彼が何をしでかすのか。この行き止まりの現実に対して、どんな打開策を示すのか。と期待を膨らませて本巻のページを開いたわけですが……。
だから何もしない…って、ほんとに何もしないだけかぃ!
それはもう、世界よ滅べ。日本も自分の住む街も身近な人間も全部殺され、人類が滅びるのを座して待つ、と言ってるのと変わらないわけで、それを淡々とグリペンに指摘されて思わず激高してる時点で覚悟も何も据わってないんだよなあ。あとはただの意地、意固地。拗ねて拗らせているだけなのである。
もちろん、彼がそんな有様になってしまうだけの絶望が、慧の心身を蝕んでいるのも確かだ。彼の中には幾重にもグリペンを見捨てて見送ってきた記憶が積み重なっているわけで。幾度も幾度もその幻視に苛まれ、その際の絶望感は身を焼き続けている。
こればっかりは、慧自身しか決して理解出来ないし、実感もできないのだろう。他人には、感じることのできない虚に、彼は囚われてしまっている。
まあ問題は、読んでいるこっちにもその絶望ってのは伝わらないものであるというところで。読者として共感してしまうのは、彼の事情を知りながらもその態度に憤りやもどかしさを感じて「イイィーーッ」となってしまったファントムが一番近いところにあるという事なんでしょうなあ。
それじゃあ何の解決にもなってないでしょうが、とか。みっともない、情けない、とかそう思っちゃうよねえ。
まあ、あれはグリペンも態度悪いよ、と思うところでもありますけれど。グリペンだってもう数え切れないくらいこれ繰り返しているにも関わらず、慧のこと煽っているのか、というようなセリフしか言わないもの。あれは男の子としては憤懣やるかたないところで意固地にもなりますわな。
というところで、回り回って見ると結局痴話喧嘩じゃないか、というところに収まっているようにも見えるわけで。
やっぱりどちらにしてもファントムさん激おこである。ファントム、おばあちゃんなんだから労れよw
むしろ、現在は平均的な平和ボケしたやる気ない女子高生に過ぎない姪っ子が、自分と同じ人でなしに成り下がる、そうなるほどの地獄を見てこの救いのない選択を掴んだことに密かにショック受けてた八代通さんの方の反応にこそ、絶望感を感じてしまうわけで。
そうだよねえ、傍観じゃなく足掻くよねえ、そうなったら。
足掻くこともし難いほどに、慧の方は繰り返しを浴びてしまったとも言えるんだけれど、その割にはわりとあっさり気持ち復活させたあたり、やっぱりこっちは痴話喧嘩だよ、うん。

だから、ファントムさんをいたわってあげてください。人類を救済するためには機械的になんでもやります、的にクールな女に成り切っていたファントムが、自覚するくらいに慧に期待し、失望させられた時にこんなショックを受けて動揺しまくるくらいに傾倒していた、というのはホント人間らしいというか、グリペンに負けずヒロインしてると思いますよ。だからお婆ちゃんじゃないんですからね。
やってることは縁の下の力持ちだし、ボロボロになっても頑張ってるし、内面かなりぐちゃぐちゃになってるのに、傍目には澄ました態度を崩さないとか健気じゃないですか、優しくしなさいよ、もう。

おまけ短編では、ついに今まで何度も戦場でスーパーサブして活躍しながらもコソコソ隠れてその姿を表さなかったハイパーゼロが、御本人登場である。
ってか、そんなどえらい設定抱えてたのか! そりゃ、御本人登場できんわ。というか、よく今回姿表したもんです。
ちなみに今回は表紙まで飾ってますけど、これハイパーゼロって言っていいのか!?
ともあれ、人見知り故に出てこなかった、というわけでもないのは幸いなのか何なのか。

シリーズ感想