【Eクラス冒険者は果てなき騎士の夢を見る 「先生、ステータス画面が読めないんだけど」2】 夏柘 楽緒/森沢 晴行 ファミ通文庫

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咎人の烙印を押された者は、 その運命を曲げられない……!?

「咎持ち」――それは詐欺師、呪術師、そして殺人鬼など、罪科を犯す才能の保有者を指す。近頃、王都ラシュールでは連続殺人事件が起きており、犯人はその咎持ちである可能性が高いと噂になっていた。一方、ギルド職員のリカリアーナがライに対して冷たい態度をとり、どこか元気がない。さらにそんな矢先、ロロナが行方不明になってしまった! 助けに向かった先でライが目にしたのは――!? 世界の宿命に抗う、落ちこぼれ英雄ファンタジー、第2弾!
ステータスがバグっているために、どれほど実力を持ってても実績を示しても、信用が得られないというステータスが価値基準の中心にある世界における主人公ライの不遇が描かれたのが一巻だったのですが、そのライのステータスを見て、思わず「羨ましい」と言ってしまうほどの境遇にあったのがギルド受付嬢のリカさんことリカリアーナ。
それだけ、咎人スキルと呼ばれるものが人生を狂わせる凶悪な代物なんですよね。
ただ、悪逆に繋がる技巧を伸ばしやすい、というだけのスキルならまだしもその技術を悪行に使わなければ済む話なんだけれど、これに関しては場合によっては本能そのものを暴走させたり、性格や嗜好まで改変してしまうケースも多々見受けられるだけに、咎人スキルを持つものは何の罪を犯していなくても、予備軍どころの扱いじゃない罪人扱いされてしまう。国によってはスキルを持っているだけで抹殺されてしまう扱いですらあるわけで。
生まれながらに咎人スキルが付与されていた人間の人生が果たしてどうなるのか。その辛酸を嘗め切ったのがリカさんだったわけですね。
彼女もまた、ステータスというものに支配されたこの世界における犠牲者の一人であったわけだ。
実のところ一巻の段階では、リカさん裏社会で実績を積み上げた凄腕の殺し屋出身。或いはギルド専属の暗殺者、みたいな裏の顔の持ち主と思ってたんだけれど、ここまで純粋にただ犠牲者であったとは。
そもそも、リカさんが所属する冒険者ギルドの裏の顔がなかなか驚きのものだったんですよね。いささかならず、あの冒険者ギルドのギルドマスターってライの利用の仕方と言い腹黒いとまでは言わないまでも、胡散臭いというか腹に一物抱えた人物だとは思っていたんですが、これは予想外の思惑で動いている人だったんだなあ。
ただ、彼の思想やその実践であるこのギルドって、ステータスをあらゆる価値基準の要においているこの社会、世界に対するアンチでもあり対抗を志すものでもありうるんですよね。ちょっとディストピアっぽい世界だな、と思ってはいたんだけれどこのギルドのような密かに世界の在り方に対して疑問を呈する組織が存在する、というのは物語のテーマそのものがこのディストピア的世界観に対する疑義なのかもしれない。そうなると、良いようにも悪いようにも捉えることのできないステータスの概念から完全にはじき出されているライの存在は、完全な異端なんですよね。単に彼が強いというのは問題じゃないんだろうなあ。
ただ今の所、ライ自身の思想や価値観というのは現行のステータス基準の世界観に寄り添ったもので、騎士を目指しているその在り方も一般常識に基づくものなんですよね。彼自身、世界に対して疑問を抱いている様子もないし、何かを変えようとしている素振りもない。枠組みの中で満足している、という以前の枠組みが存在している事自体認識せずにその中に収まっているつもり、の人物なんですよね。
いや、だったというべきか。
この巻で、彼は常識においては絶対に排斥されなければならない咎人スキルの持ち主であるリカを、まったく疑いもせずに受け入れている。その生来から刻まれた瑕疵を問題視すらしていなかった。それは、彼の価値観自体がこの世界における基準から逸脱していることを示している。それが元からだったのか、それとも大切な友人であるリカに関すること故に生じたものだったかは、微妙に把握しづらい展開だったのだけれど、それでも彼がステータス表示のみならず、その内面もまたあるべき枠組みの中から逸脱したことは明らかなのだろう。
それは、ステータスが基準となっている世界の枠組みの最も要となっている部分を担うであろう「聖女」とは、絶対に相容れないものとなってしまっている、ということでもある。
世界の否定は聖女の否定と同義であり、世界そのものである聖女もまた、この枠組を壊しかねない異端は絶対に認めてはならないものである。だからこそ、彼と幼馴染の少女はどこかで決定的な決別を経てしまっていたのか。
虚を突かれたのは、それが今後起こることではなく、どうやら既に両者の間に共通認識として共有されているっぽいことなんですよね。いわゆる不倶戴天。
ライのこれまでのあり方を見ていると、そんな様子全然伺えなかったんだけれど、それだと既にライは騎士目指すとかの夢を真剣に考えているはずがなくなってしまうわけで。このへん、どうなってるんだろう。
リカさんはリカさんで、ライに救われたは救われたんだけれど、殺人鬼スキルの熟練度が既にリミットに達しているわけですから、全然ピンチは摘まれていないわけで、こっちはこっちでどうするんだろう。

1巻感想