【スレイヤーズ 16.アテッサの邂逅】 神坂一/あらいずみるい 富士見ファンタジア文庫

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魔王との壮絶な戦いを乗り越え、故郷へ向かっていたリナとガウリイ。その途中で立ち寄ったアテッサでは奇妙な野盗騒ぎが起こっていた。案の定リナは用心棒を頼まれるのだが、その騒動は恐るべき危険をはらんでいた!

スレイヤーズ!! スレイヤーズ!!
スレヤーズである。ライトノベルという概念においては、スレイヤーズ以前と以後に時代を分けてしまえると言って過言ではないくらいの金字塔なんですよね。自分にとっても、この作品との出会いこそがライトノベルというものへとのめり込むきっかけとなったのであります。
最初に呼んだライトノベルこそ、小学校低学年の頃に読んだ【ロードス島戦記】でありましたけれど、それがライトノベルと呼ばれる分類の書籍だとは認識していませんでした。当時はまだジュブナイルとかヤングアダルトとか言われていて、明確にジャンルとして確立していなかったのもあるでしょうし、とにかく一部ロードス島戦記のように読んでいる作品はあったものの、レーベルを意識したことはありませんでしたし、カテゴリーとして若者向け青少年向けの小説があるという認識そのものがなかったんですよね。
それを決定的に覆されたのが、アニメ「スレイヤーズ」の放映でした。今まで見たことのない世界感と個性的なキャラクターに度肝を抜かれた私は、そのアニメに原作があるということを知って早速読んでみて、完全にこれまでの既成概念をふっとばされたのであります。
そも、これまでこんな弾けたキャラクターが大暴れして走り回る小説なんて見たことなかったですし、ある種のしっかりと詳細な設定が組まれた魔法や世界観なんて初めてみたんですよ。
特に呪文、あの詠唱にはとてつもない興奮を覚えたのでした。未だにドラグスレイブの詠唱ソラで唱えられる人、たくさんいるでしょう。自分、ノートに書き取り練習しましたよw
ロードス島戦記も含まれるソード・ワールドなんかも世界観の設定がしっかりと組まれているとも言えるのですけれど、それと比べてもゲーム的にきっちりしていたというか、それまで読んできたファンタジーではファジーに描かれていた部分が当時としてはびっくりするくらいロジカルに描かれていたと感じたんですよね。
自分、未だに設定厨な部分があるのって振り返ってみるとこのスレイヤーズの衝撃が根源だったような気がします。
まあこのしっかりかっきり決め込んだ世界観が、のちのち魔族強すぎ!という凄まじく偏ったゲームバランス的な敵味方、というか魔族と人類の戦力差に連結してしまって、話の構成的にも難易度をましてしまう結果になったところはあるのですが。
標準的な魔族ですら、人間が使える最高位の魔法であるドラグスレイブやラ・ティルトでもダメージを与えれても必殺にはならないくらいですからね。必然的にどうしてもトドメとなる術が限られてくる。さらに高位魔族や幹部クラスとなったらろくに利きすらしないんですから。
おまけに、ドラグスレイブって戦略級呪文だから威力強すぎる上に広範囲に効果及ぼしすぎて、街中では使えないし。
そういう縛りプレイめいた制限が多量についたものだから、特にクライマックスらへんでは展開に苦労が伺えたものでした。
ともあれ、あの頃は本当にどきどきわくわくして次の巻の発売を楽しみにしていて、発売日となればウキウキしながら書店へと駆け込んでいったものでした。あの頃はライトノベルの新刊の数自体が少なくて、そこには今まで経験したことのない新しい面白いものが詰まっていて、だからこそ一冊一冊が珠玉のように輝いて見えてたんですよねえ。

とはいえ、それでもスレイヤーズの前の最新刊は18年前。本編が盛り上がった全盛期だったのは90年代の前半から中盤にかけてです。もう二十年以上前の古典とも言えるシリーズ。原初であり先駆であり開拓の突端であった本作は、現在あまたあるライトノベルの原点であり原典の一つであるのでしょう。でも、だからこそ幾重にもバージョンアップがなされた現代のライトノベルに比べれば未だ研磨の方が古い作品だとも言えます。旧式、型落ち、古い人間である私にとってかの作品は珠玉であり未だ輝き続ける宝亀でもありますが、それでも二十年余も昔の作品ともなれば思い出も美化されているところが多分にあるでしょう。
だから、決して期待しすぎることなく、懐かしい気持ちに浸りながら、戻ってきてくれた青春時代の軌跡を楽しもうじゃありませんか……などと、思えば何様か、と思うようなことを考えながら手にとったスレイヤーズ。スレイヤーズの最新刊! スレイヤーズ本編の最新刊!!のページを開き読み進めたわけですが。
……あれ? あれあれあれ? これ……今読んでも、面白いんですけど。

めちゃくちゃ面白いんですけど!!?

うおおおお! いや、懐かしいとかリナやガウリィがまたぞろ大騒ぎしている姿に感動する部分もあるにはあるんだけれど、それとは別に、関係なく、話自体や展開や描写やアクションやら、すごく面白い!!
いやあ、リナの戦闘や交渉の駆け引きなんぞ思わず前のめりに見てしまうし、登場人物同士の掛け合いなんかも、今なお新鮮でめっちゃ楽しい! そして、インテリジェンスが敷き詰められた戦闘シーン。描写もわかりやすい上に躍動的でなんかびっくりするくらい脳裏にその情景が浮かんでくるんですよね。しかも、ちゃんと声優のアテレコ付きで(笑
うわー、脳裏でめっちゃ動いてる! 意外と行動や起こった出来事の描写も詳細でしかもクドくないんで、スッとその情景やアクションが頭の中に浮かんでくるんですよね。ここまでイメージが具体的かつ動画枚数めっちゃ多い感じに浮かんできたのって、小説読んでてのだと久々かも。
だからか、アクションシーンが読んでてすごく楽しかった。ガウリィが相変わらず、剣士としてデタラメすぎて本当にこう、作中の登場人物も「ええ!?」ってその無茶苦茶っぷりに度肝抜かれるの、懐かしいわ面白いわで、いやあいいなあこれ。これですよ、ガウリィ。これで頭クラゲなのは相変わらずで。ボケボケしてるのに格好いいの、これこそガウリィだよなあ。
今回は特別編ということで、二部には登場せず実のところ本当にご無沙汰していたアメリアとゼルガディスという、アニメだともうレギュラーもレギュラーな面々が同窓会的に登場してくれた上に、かの大魔獣再びってな感じで、そうだよなあ、あの魔獣戦が魔族戦以外では一番盛り上がったかも、という思い出からすると、今回の敵役としてはピッタリだったかもしれません。下手に魔族絡めなかったのも良かったんじゃないかな。ゼルとの再会では、ゼルと初対面の時の展開が利用されたりと、なかなか粋な演出もありましたし、新キャラのエルフの姉ちゃんも……ってか、今回に関してえらいエルフ種族が、世界観的にもバージョンアップされてたんじゃないですか!? エルフ、前はこんな力設定的に持ってなかったと思うんだけれど。でも、そのおかげで展開にも幅が出てより派手に起伏ある内容になってて、これはこれで良かったんじゃないでしょうか。
18年ぶりとなった本編新作。どうやらこれ一回の特別版、といった様相ではありますけれど、その分ありったけの力込めた力作という感じがして、過去故に美化されてたんじゃないかという自分の印象を吹き飛ばすどころか消し飛ばす勢いの、面白くも楽しく懐かしくも新鮮な、素晴らしい復活作でありました。
読めてよかった、おかえりリナ・インバース!