【デート・ア・ライブ フラグメント デート・ア・バレット 4】 東出 祐一郎/ NOCO 富士見ファンタジア文庫

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白の女王が支配する第三領域から脱出し、第八領域に辿り着いた時崎狂三。第八領域では支配者側の絆王院華羽と、叛逆軍の銃ヶ崎烈美による終わりなき戦争が繰り広げられていた。次なる領域に行くため戦争を終わらせようと狂三は、絆王院側につくのだが…。離ればなれになった緋衣響はなぜか叛逆軍側で着々と上官としての地位を固めていて―。
「わたくしも折角ですから全力を出すことにいたしましたの」
「全員撤退!あそこにいるのは自意識を持った爆弾です!」
少女たちのひと夏の思い出は、花火のように鮮烈ながらも、散ってしまう儚さと寂しさもあり…。

響って実は有能なのか!? 前回もアイドルプロデューサーとして伝説作ってましたし、今回もトントン拍子で現場昇進を繰り返して最終的に叛逆軍の副司令官格に収まってましたしねえ。そもそも、初登場時では狂三を謀り倒して時崎狂三に「成って」いたわけですしねえ。言動はひたすらポンコツにも関わらず。まあそのよくわからない有能さは一貫した目的のために行使されるのではなく、なんか成り行きでどんどん目の前のことに注ぎ込んでいく節があるので、役に立っているのか迷惑振りまいているのかいささか不明なところもあるのですが。
そんな相棒というには無軌道な響のことを、さて狂三はどう思っているのかと思ったら案外素直に「友達」だと認める発言が。ここの、というよりも「この」時崎狂三は素直だなあ。
現世の時崎狂三が、愛する者も大切な人も何もかも切り捨てて、果たす目的があったからずっと孤高を貫いていましたけれど、こっちの狂三には思えばそういう縛りはないですもんね。だから、周りの人を遠ざけるような真似もせず、本来の彼女はどちらかというと情が深く他者とも良く交わる性質だったのを思えば、こちらが本来の彼女に近いのかもしれません。
それでも、かの冷徹さは兼ね備えていますし、記憶が定かではないにしても、狂三にとって「友達」という存在は決して軽々しく作れるものではなかったはず。その意味でも、狂三にとっても響の存在はかなりの比重が置かれている相手になってるんでしょうなあ。
そんな人が、自分がせっかく心配して探しに来てあげたのに、超遊び呆けてたら、そりゃ狂三ちゃん激おこですのよ。
激おこぷんぷん丸すぎて、普段の冷静さを思いっきり取りこぼしてテンションあげあげのまま誘い込まれて、響にジャイアントキリング決められてしまってるあたり、狂三マジで色んな意味で浮かれてたんだなあ、と生暖かい表情になってしまうところでありますが。ある意味、どれだけ響のこと気に入ってるんだよ、と。
逆ギレしたり拗ねたりせず、ちゃんと素直に敗北を認めて大人しくしているところなんぞ、なんとなく育ちの良さが伺えてしまいますが。

さて、本編はというと夏の世界。バカンスではないけれど、きっとそれは遊びの延長で、真剣勝負ではあっても命のやり取りはしない、楽しく愉快に思いっきり戦える……友達と、好きな人と本気で向き合えて、応えあえる楽園のような世界。
でも、そんな世界も白の女王による侵食は進んでいて、抗うにも屈するにもいずれにしても、夏の終わりは近づいていた。絆王院華羽の時間は終わりに近づいていたのである。
だから、華羽は最後まで抗うことにしたのだ。抗って、楽に身を委ねず苦しみもがくことを選んで、そうして最期まで好きな人と一緒に遊ぶことを選んだのである。全力で、本気で、彼の人と心通わせるために。
夏は明るく鮮烈で、そして同時に儚くあっという間に遠ざかっていく季節である。それは陽炎のように揺らめいて、薄っすらと消えていく。空気のように、風のように。
これは一人の乙女が、最期まで頑張って頑張って恋に生き、恋に殉じ、願ったゴールへと辿り着くまでの物語である。

シリーズ感想