【超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです! 7】 海空りく/さくらねこ GA文庫

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「作戦の最終段階に移ろう。敵を崩壊させ――安土へとなだれ込む!」
エルム共和国に新政権が樹立され、フレアガルド帝国で内乱が勃発する中、ヤマト自治領ではレジスタンスたちの戦いが繰り広げられていた。
要衝・不動砦を奪取したレジスタンスは、司の機略、葵の戦闘力、そして林檎のテクノロジーという支援を受け、ジェイド率いる圧倒的な大軍勢を相手に、順調に進撃していく。
だが、落城を目前にした安土城で、ヤマトの支配者マヨイは、臣民に対する非道な洗脳魔法を発動しようとしていた。
城を包む炎が、ヤマトの深部に秘められた過去を映し出す、異世界革命譚第7弾!

ぐわぁ、これはなんというかダメージ食らう。喰らった。
同情の余地など欠片もなかったマヨイとジェイドの支配者コンビでその所業たるや無辜の民を虐殺する以上に、人の尊厳を徹底して踏みにじるようなおぞましいやり口だったんですよね。人の心を洗脳して作り変え、意志も都合の良いように書き換え、最終的には人間ですらない生きた獣ですらない壊れた人形のような有様へと変えてしまう。そこにあったのは、人を決して同じ人と認めない、虐げ踏みにじる対象としてしか見ない考え方。こういうのって、自分一番嫌いだったはずだったんですけどね。
そんなマヨイのおぞましい意識が生まれた理由が、ヤマトに元々あった統治制度にあったのだとしたら、いったい誰が悪いのか、って話になるんですよね。
彼女の思想は、上から見下すものではなく、地べたに這いずり踏みにじられた者が抱いた怒りであり憎悪であったというのなら、その怒りも憎しみもいったい誰が否定できるのだろう。
やったことは決して許されないことなのだけれど、彼女が受けた仕打ちもまた同じことなんですよね。人として扱われず、人としての尊厳を奪われ、生きることすら許されず、ただ生きたいと願うことが醜く汚らしいこととして切って捨てられた。
彼女が受け続けた仕打ちが、この国ではずっと美談として讃えられ、この国の民はそれを享受して、食い物にしていた。ならば、果たして彼女の復讐は正当と言えるのか?
マヨイがやり続けた国全体に及ぼす洗脳魔術、でも視点を変えてみたら長く続いた統治システムとそこから生じた価値観によって、長年に渡ってこの国に根付いてきた思想と何が違うんだろう。それは魔術でなくても、効果としてはマヨイの行った洗脳と方向性として何が違うんだ?
そのおぞましさに、どれほどの違いがあるのだろう。
老将は、国も民も裏切って、ただ一人の少女の純粋な懇願を、ただ生きたいという願いを叶えることにした。この国の在り方のおぞましさにも、マヨイの成した復讐のおぞましさにも背を向けて、しかしだからこそまっさらな願いに縋った意志を、どうやったら責められるのだろう。

なんかもう、途中でそれまで寄って立っていた部分を根底からひっくり返されたような心持ちだった。ちゃぶ台返しで善悪がひっくり返ったわけじゃないんですよね。でも、一方的にこっちが正しくあっちが悪いという視点が徹底的に叩き潰され、民意もまた個々の尊厳を踏みにじる在り方を喜び尊び受け入れて、結果として猛悪を生んだのなら、それは自業自得じゃないのか、という考えが生じてしまうのである。
無辜の民など存在しない。
それが長年に渡って正しく効率的かつ平和的に機能し、それを民が受け入れているのならあえて口は出さないとした司の、政治家としてというよりも政治理念の体現者としての生き方もまたあまりにも人としてハズレ過ぎてるんだよなあ。それで居ながら、マヨイたちに訪れただろう結末に涙する人間性を失っていない。その矛盾は、果たして破綻とどう違うんだろう。
民主主義をこの世界にもたらしておきながら、こうして民意が肯定するもののおぞましさを、それが生み出した怪物の恐ろしさと哀れさをこうも冷徹に描かれてしまうと、正直震え上がる部分がある。
何気に痛快娯楽エンタメ作品とは全く異なる方向性に、意欲的といっていいほどグイグイ進んでいるあたり、このシリーズの実験作的な試みというかエッジの鋭さというか血塗れ感というか容赦のない喜悦みたいなのを感じてしまうのでした。

シリーズ感想