【俺のお嬢様と天使と悪魔が生徒会で修羅場ってる!】 壱日千次/ぱん MF文庫J

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この生徒会には問題がある―それは天使と悪魔とお嬢様が、副会長の少年執事・一斗を巡って世界の運命を賭けた恋の駆け引きを繰り広げているからだ。話は悪魔ネフィリアと天使ユリエルがその正体を明かした日に遡る。二人はお嬢様・桜華の月ヶ瀬財閥を没落させるため同盟を結成。だが、一斗の活躍でユリエルがあっさり堕落した結果、互いをけん制し合う三すくみの関係になってしまった。この均衡を崩すには一斗の誘惑しかない!というわけで世界のキーマンとなった少年をめぐる各勢力と乙女の意地を賭けた恋の争いは―何だかんだ仲良しだけど、ふんわり修羅場に発展中!世界の命運は、このラブコメの先にある!?
メイドの紫鏡さんはもっと怒ってもいいと思うよ。いやもうすでに相当に怒ってらっしゃいますが。
プロローグの段階ですでに相思相愛。優柔不断なこともなく、一気呵成に告白敢行する主人公の一斗くん。これで桜華が変にツンツンした前置きを挟まずに即座にOKしておけば、なんの問題もなくハッピーエンドに終わったのに、振られたと勘違いしてしまった一斗くんはここから終わった恋と執事としての職務&月ヶ瀬家への借金の板挟みに苛まれるのである。
こんなもん、桜華お嬢様がもう一度ちゃんと告白すれば済む話で、紫鏡さんが散々舞台を整えてくれるにも関わらず、片っ端からヘタれて台無しにしていく桜華の有様に、なにやっとんじゃーとなる紫鏡さんのリアクションが結構楽しい。
一斗くんの境遇と過去を思うと、桜華に告白したのって一大決心以上に覚悟があったはずなんですよね。月ヶ瀬家に借金と言っても、むしろ彼の家と彼自身の瀬戸際の状況を助けてもらったもので恩は多大なものがあるし、桜華も上から目線ではなく本当に親身になって彼のことを労って慈しんで、ただの主従に留まらない関係を育んできただけに、いやはやどうしてこうなってしまったのか。超セレブとはいえ、桜華お嬢は傲慢とは程遠い温厚で優しいキャラクターでツンデレのツンも殆ど見当たらない人なのに、なぜ肝心なときだけやらかすのかw
紫鏡さんがやさぐれるのもわかるぞ、うん。
ほんともう、絶対有利どころかゴール寸前だったのにねえ。やらかしてしまったが故に、最強の刺客が放たれてしまったわけだ。悪魔であるにも関わらず品行方正で善人の鏡みたいなイイ人筆頭の生徒会長ネフィリア。もう根がいい人すぎて、後光が見えるんですけどこの悪魔。
トドメに実は幼馴染でお互い大切な思い出であり自身の原点となっているエピソードの相手であった、というのが発覚して、まさに恋が芽生える瞬間、まで発動してしまうし。ただでさえイイな、好きだな、と思っていた人が運命のあの人だった、というのは少女漫画的な必殺技すぎて、お嬢様の地道に積み上げてきた実績が消し飛んでしまうぅぅ。
一斗くんはお嬢様に振られたと思い込んでいるし、彼女の優しさに甘えて執事を続けていると思い込んでいるので、他の女性からの好意というのはむしろお嬢様に迷惑になっているだろう未練を振り切るためにも、受け入れていいんじゃないだろうか、という超低いハードルになってて、障害って本当に彼のお嬢様への捨てきれない想いだけなんですよね。お嬢様、決死の思い出その想いを補強しようと駆けずり回っているけれど、泥縄感が否めない。ってか、告白すれば済む話なのにそれだけは「ボクは自動的なんだよ」と言ってしまえるくらいオートマティックにヘタレてしまうので、無理という……。いやそこが無理だと、お嬢様絶対にハッピーエンドないですよ?
こうしてみるとユリエルだけ、取っ掛かりが少なくて不利は不利なんですよねえ。彼女自身、恋というものを知るのは遅かったですし。この娘の場合はあれだな、子供の頃に漫画やアニメから徹底して遠ざけられていた人が、長じてまっさらな状態でそれらに触れてしまうと一気にディープなオタクにハマってしまう、というケースと似たようなもので、節制がすぎると堕落への耐性が著しく低下してしまう、という典型ですなあ。
財閥の総力をあげなくても、美味しいご飯と漫画だけで堕落させられてしまったあたり、無茶苦茶安上がりな天使様でしたが。
三人娘共、なんだかんだと根っこが善良というかいい人ばかりで自分より他人の心配を優先するような娘ばかりなので、結局の所修羅場は修羅場でも「ふんわり修羅場」に発展というあらすじのアオリは言い得て妙かと。一斗くんの立場とか結構洒落にならないというか、きついものがあると思うのだけれどヒロインが全員ポンコツ癒し系であるというのが結構場をもたせている重要な要因なのかもしれない。
でもまあ、次はネフィリアの攻勢が本格的になりそうだし、だいぶ動きを見せてきそうだけれど。