【女神の勇者を倒すゲスな方法 5.「そして日常へ……」】 笹木 さくま/遠坂 あさぎ ファミ通文庫 

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魔王の機転により女神の襲撃から逃れ魔界に辿りついた真一たちは、反撃の糸口を探していた。しかし古い文献をあたっても女神の存在は見当たらない。代わりに判明したのは太古より存在する赤き竜の眠る場所だった。けれどアリアンの父であるはずの竜は、娘を前にしてもタヌキ寝入りを決めこむばかり。そんな竜から女神の真実を聞き出すため、ここぞとばかりに真一は策を披露するが―。ゲス参謀の策は強大な女神に届くのか!?異世界勇者攻略譚、決着!

面白かった! ライトコメディなノリではじまった本作だけれど、ラスボスの女神エレゾニアは全く冗談の入る余地がないガチのゲスだったがために、このクライマックスはかなりハードな展開に。
ってか、女神によって生き返らされた幼い頃に事故死した幼馴染の正体というか真実がエグすぎじゃないですか、これ? むしろ偽物とか別人の方が救いがあるんじゃないだろうか、という代物でかつてここまで人の尊厳を蹂躙し尽くしたものがあっただろうかというくらいなんですよね。
エレゾニアに比べたら、古今東西の偽物用意する悪役さんたち素晴らしく仕事が丁寧なんだと思い知りましたよ。エレゾニア、雑すぎる! というよりも、本当に状況に合わせた必要最低限のことしかしなかった、という事なんでしょうね。その場限りで良かった、ということなのでしょう。あまりにも舐め腐っている。あまりにも、真一が可哀想過ぎる。ここまで大切な思い出を穢されて、冒涜されて、許せるはずがなかろうに。
エレゾニアの正体とその過去が明らかになり、それに伴ってこの世界の真実、魔族やエルフ、この世界の構造の秘密なんかもわかってくるのですが、がっつりとSFだったのは勿論なんですけれど、古代の高度な文明が滅びて、魔族が生まれこういう世界になっていった、という成り立ちが見事に論理だったものになっていて、この過不足のない過去から現在に至る筋立てはちょっと気持ちの良いくらいキレイに整ったものでした。かなり最初からガチ目に設定作ってたんだねえ。ライトコメディ作品的な適当な世界観とは程遠いビシッと整備された世界観であることが、こうして歴史を紐解くことで明らかになる、というのは何とも心漉くものがあります。
それにつけても、同情の余地が一切見当たらないエレゾニアである。
いや、生い立ちなんかを考えれば余地はあったのかもしれないですけれど、そこからの言動は明らかに彼女自身によって積み上げられていったものなんですよね。環境がどうのという問題じゃなく。
挙げ句に、最後にはそのあったかもわからない同情の余地すらも自ら捨て去ってしまったわけですから。
それでもなお、和解を試みるリノちゃんの心根は尊重すべき純粋さであり決して非難すべきものじゃないけれど、現状やエレゾニアによって喪われたもの、苦しめられた人の想いに対してそれは無慈悲ですらあるんですよね。
真一が凄いなあと思うのは、リノちゃんの思うようにやらせてあげた上で、きっちりとリノのそれもまた暴力の一種であるんだよ、と彼女のあり方の良いところとその中にも悪しきものがあるというのを体験を添えて教えた上で、その先の選択を彼女に委ねるところなんですよね。自分でちゃんと考えて、選ばせて、責任をもたせる。
女神教をはじめとした盲目的に既存の教えに従う、誰かの言われた通りにして何も考えない、という思考停止に対してアンチテーゼを投げかけてきた本作らしい、アプローチでありました。リノちゃん命の聖女さまにも、最後ちゃんと一人の女の子と向き合わせてリノに対してだけ盲目的ではない、自分の考え、自分の感じ方というのをもたせるような描写もありましたしね。
一方で、大衆は場の空気の流れに逆らえない、というあたりは冷徹なくらい徹底して描いてもいて、ラストの大逆転劇はこれまでの積み重ねでもあったのですけれど、思いっきり情報操作と扇動でもありましたからねえ。理想と現実を起用に操る、ほんとゲス参謀の真骨頂ともいうべき策の弄し方でありました。
しかし、勇者たちの死んでもすぐに生き返る不死システム、思ってた以上に生々しい科学の産物で、具体的に描写されるとグロテスク極まるんですけど! これ、知ってしまうと精神崩壊してしまう死亡経験勇者、山程いるんじゃなかろうか。ちょっと耐えられん事実だぞ。実際、このあたりの情報は伏せる予定みたいだけれど。
これを知っていながら、エルフにドM戦隊を特攻させて、死なせまくった真一、マジで鬼畜なんですがw

ちょっとラスト、余韻が全然ないあっさりとした終わり方で、せっかくクライマックスから盛り上がってエピローグの余韻に浸ろう、彼らの関係やその後の世界の様子とかどうなるんだろう、と思ってたところでバッサリ切り取られたような感覚で、うえ!? と拍子抜けのような梯子外されたような感じだったのですが。
あれ? 続刊の発売予定が12月にありますよ!? まだ続くの!?

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