【浅草鬼嫁日記 五 あやかし夫婦は眷属たちに愛を歌う。】 友麻碧/あやとき 富士見L文庫 

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人とあやかしが共に生きる町、浅草で暮らす茨木真紀は、前世で鬼の姫“茨木童子”だった記憶を持つ女子高生。鬼的には節分の、女子的にはバレンタインの季節を迎え、元“酒呑童子”の天酒馨や、前世で眷属だったあやかしの水連や深影たちのため、恒例のチョコ作りに奮闘する!深影のお使いや、水連の薬開発、熊虎姉弟の漫画を手伝いながら、今世でも家族のように助け合う真紀たち。そんな折、浅草を守る七福神に異変が起きたようで…?「最強の鬼嫁夫婦」と眷属たちの輝かしい日々がここに!

劇的な展開なく、お付き合いをはじめてしまったご夫婦。いやうん、本人たちも傍から見ている周りの人たちも読んでるこっちも既に「夫婦」という認識しかないカップルだけに、凄まじいまでの今更感……いや、今更というよりもなんなんでしょうね、これ。
実際に結婚しているわけではない以上、真紀ちゃんと馨の関係は彼らのことをよく知らない人たちからするとどういう関係なの?と聞かれるとどうにも名前のつけられない関係ではあったんですよね。夫婦です、なんて言えるもんでもないですし。
しかし、今更恋人です、というのも気恥ずかしいというわけでもないんだけれど、なんか違うのである。違和感があるわけじゃないんですよね。夫婦から恋人に「後戻り」しているというわけでもない。ただ、そぐわないというかなんというか。
でも、まだ夫婦じゃない以上、その前の関係というのを改めて今世では嗜んでみましょう、という二人の気持ちもよくわかるんだなあ。そのために劇的な展開があるわけじゃなく、自然に付き合おうぜという風に馴染むのも自然体な二人らしいし、恋人になったからといって無理して特別なことをするわけでもなく、今までどおりの距離感にちょっとした甘酸っぱさを添えつけたような幸せのエッセンスが、本当に二人らしくてなんとも素敵なんである。
生まれ変わって再び巡り合った運命の二人は、今人として生きて、一方でアヤカシたちも見守るかつての大妖怪としての振る舞いも忘れず、つまりは今彼らは幸せなんである。
悲劇的な結末を迎えた二人が、今幸せな時間を二人で過ごしている。それを見守っている彼らの眷属たちの感慨はいかばかりなんだろう。
再び転生するかもわからない主をずっと待ち続けた虚ろの日々。それは眷属たちの心を少なからず傷つけて、その傷は未だ癒えきったわけではないのは、スイをはじめとした眷属たちのどこか必死さが垣間見える主人たちとの接し方を見ても伺えるんですよね。
でも、一方で今世の幸せな主夫婦の姿に、そしてかつて以上に自分たちを慈しんでくれる彼らの愛情に、今眷属たちはこの上なく報われているのでしょう。凛音は悲劇で終わった過去に未だこだわっているけれど、その過去にしがみついて今の真紀ちゃんたちの幸せを壊してしまおうなんて不出来な真似は絶対にもうしないでしょうし。
奇跡のような再会がなった茨姫と酒呑童子。そんな二人に再び寄り添えた眷属たち。でも、生まれ変わった鬼夫婦は今は人間で、だからそう遠くない未来に彼らは再び老いて眷属たちの前から去っていく。それを、スイたちは忘れていなくて、時折胸をかきむしるような切なさに苛まれている。今が幸せだからこそ、未来を想うことが苦しい。
でも、同時にそれを受け入れてもいるんですよね、彼らは。いや、未だ子供な深影なんかは難しいのかもしれないけれど、スイなんかはそれをちゃんと受け入れている。悲劇で終わってしまったかつての別れは、後悔と痛みと苦しみばかりが残されたものだったかもしれないけれど、真紀ちゃんたちが今度はずっと幸せなままその第二の人生を終えることが出来たなら。
眷属たちにとって、今度の別れはどれほど寂しくても微笑んで送ることが出来るだろうか。身を引き裂かれるような痛みではなく、温かい思いで去っていった人たちを振り返ることが出来るようになるだろうか。
スイがずっと味わってきたという、真紀ちゃんたちと再会するまでの時間を想うと、切に考えてしまうんですよね。真紀ちゃんたちの幸せが、彼ら眷属を終まで幸せを抱くための大切な記憶に、思い出になってくれるように、と。
だから、残されたまだ出会ってない眷属の木羅々ちゃんと真紀ちゃんをちゃんと再会させてあげたいし、このまま真紀ちゃんと馨には幸せになってほしい。彼らの幸せは、彼らだけの幸せには留まらないんだ、というのをじんわりと実感できる、二人の夫婦を取り巻く「家族」のお話でした。

新たに清明の式神に新入社員よろしく加入した由里があっちはあっちで大変そうですけど。大変というか、向こうの古くからの式神である四神たちとの距離感をどうとろう、とお互い戸惑って微妙な空気になってる感が、なんともかんとも……微苦笑が浮かんできてしまう。
ラインかなんかわからないけど、メッセージアプリで式神同士やりとりしてるのが現代的であるけど、先生全員に携帯もたせてるのか、甲斐性あるなあ。ってか、術とかじゃなくて、普通に携帯で連絡取り合ってるのね、あの主従w

しかし、狩人側に出てきた「ライ」というのは誰なんでしょうね。雷獣かなんかかと思ったら、なにやら妖ではないみたいだし、かと言って人間でもないみたい、となると真紀ちゃんたちみたいな?
大和組長もなにやら抱えているようですし。ってか、組長実は凄い力を秘めてるというか封印されてる系の人だったのか。この人も何気に1シリーズの主人公張れそうなポテンシャルの持ち主なんだよなあ。

シリーズ感想