【はたらく魔王さま! 18】 和ヶ原聡司/029 電撃文庫

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マグロナルド幡ヶ谷駅前店に新店長がやってきた。年度の変わり目でベテランクルーたちの退店も相次ぎ、さらには受験に専念するため、千穂も店を去ることになってしまう。
新体制にバタつく中、魔王はペット禁止のヴィラ・ローザ笹塚でトカゲ姿の悪魔キナンナを飼育し、部屋をボロボロにしたことが大家にばれ、大問題に。退去は免れたが、修繕費として多額の請求書が届けられてしまい!?
一方異世界では、天界の危機に対処する準備として、五大陸各国の調整に芦屋や鈴乃が奔走していた。人間と悪魔の共存を目指す魔王は、マグロナルドの人手不足と合わせて解決する方策を考えるが──。
ひぃぃぃ! ちょっとこれ、想像するだに寒気しかしない状況なんですけど、マグロナルド。そうだよなあ、一番キツイのってこの場合、出ていく木崎店長じゃなくてむしろ新店長として木崎さんの後釜に座ることになる岩城店長なんですよね。
既に現状、考えうる限りの最高峰のもはや異次元ともいえる業績を挙げている店舗。木崎店長の辣腕もさることながら、彼女によって集められて鍛え上げられたスタッフたち。ここにあとから飛び込むのって、もう撤退戦なんですよね。ここからさらに業績アップさせてやるぜ、なんて自信満々でいられる人なんて早々居ないでしょう。
実質、どれだけ業績が落ちるのを食い止められるか、という話なんですよね。それでも、これだけのスタッフが揃っていたらなんとかなりそうなものなんですけれど、千穂ちゃんに辞められたらヤバイなんてもんじゃないんですよね。彼女のみならず、話を聞いてたら学生のみならずこの人抜けたらあかんやろう、という人まで抜けるうえに単純にやめる人数がヤバい。
木崎店長居なくなるタイミングで、これはキツイなんてもんじゃないですよ。おまけに、数カ月後には魔界の方の大作戦で真奥と恵美も一ヶ月丸々シフトから外れる予定が組まれてる、って。
岩城店長が引き継ぎ直後から血の気引いてるのもわかりますわー。いやマジで。質が伴った量がごっそり抜けた後のカバーって、ちょっと取り返しがつかない部分がありますし。
だいたい、バイトに限らず使える人材集めるのって何気に至難なんですよね。あれって、宝くじめいたものがありますし。面接で人となりや使えるかどうか把握するって、多分特殊スキルなんじゃないでしょうか。自分も面接する側にまわることもあるのですが、あれは本当にわからん!
しばらく仕事してみないと、わかんないですよ。その人がどういう人だとかなんて。
まあ、「あ、この人やばいわ」というのが露骨に見える人もいるのですけどね。逆に、この人当たりだ!と一発でわかってしまう人も中にはいるのですけれど。
それに選り好みしてられない状況というのもありますしね。求人って、広告出すの何気にけっこうお金掛かるんですよ、あれ。マグロナルドみたいな大手なら、そのへん予算問題ないんでしょうけれど。ってか、ドタキャンするやつが昨今多すぎる!!
って、話が変な方向行ってしまいましたが、木崎さんみたいな見極め方なんか出来る人は早々いないと思いますよ、うん。まあバイトくらいなら普通にしてれば、だいたい受かると思うんですけどね。
……普通にデキる人って、実は思いの外少なかったりしますし、うん。

とまあ、うん、読んでて黄金の貧乏くじを引かされた岩城新店長の方に思いっきり感情移入してしまったのですが、辞める方の千穂ちゃんの方も大変なんですよね。ってか、作品的にはこっちが主軸の大変さなんでしょうけれど。受験を前にして、周りの友達が真剣かつ具体的に進路について考えている中で、自分はまだ曖昧模糊にしか受験を捉えておらず、一方でエンテ=イスラの方の作戦や地球サイドの安全保障にも関わってくるだろう国際情勢の緊迫化に直面して、果たして喫緊なにに集中すればいいのか、若干混乱状態に追い込まれてる千穂ちゃんの現状、受験生としてはキツイものがあるのも確かな話で。でも、ちゃんとここで一人で抱え込まずに近い境遇にある梨香や、社会人である木崎さんに相談しているあたり、しっかりしているなあ、と感心してしまいます。何気に、大人に相談するのって、高校生くらいだと壁があって難しいものだし、具体的に自分が抱えているものを言葉にして問いかけるのってめちゃくちゃ難易度高いですしね。
……でも、そんな相談にこうもしっかりアドバイスを返せる梨香や木崎さんがまた半端ねえと思っちゃうんですよね。こんなん相談されても、自分だったらまともに助言らしい助言とか出来ませんて。通り一辺倒の一般論以外に実のある言葉が紡ぐことが出来るだろうか、と自問してしまいます。

一方でエンテ・イスラの方でも芦屋がえらい頑張ってるというか活躍しているというか。もう真奥関係なく、というわけじゃないけれど、腹心とか参謀とかではなく完全に独立して独自の判断で外交交渉をつなげて、同盟や協力者の輪を広げてますもんね。真奥とか魔王軍という看板ではなく、アリシエルという個人を信用して、協力してくれている、という感じですし、魔界の住人の移民問題にしても魔王軍首脳部による政策ではありますけれど、完全に芦屋が主導してるもんなあ。
いい意味で、今までべったりだった真奥と芦屋が離れて個人個人で動けているのが、なんとも頼もしいというべきかなんというか……これだけ一人でやれてるなら、芦屋さん……梨香のこともちゃんとしてあげたほうがいいですよ、ほんとに。

色々とエンテ・イスラ側でも地球……というか日常サイドでも激動と言っていいくらい状況が動いているようで、未だ準備期間ではあるというなんとも錯綜した状態なのですが、魔界の住人の未来という点に関しては、真奥や芦屋たちが着実に将来の展望というか戦略に基づいて動いているので、そこだけは何とも安心感みたいなものがあります。まさか、リヴィクォッコが人化して地球サイドに来て、働く魔族さまやるとは思いませんでしたけど。ってか、よりにもよってこいつかよ! 強面すぎるでしょうに。
てか、その強面外国人をビシバシと現場でうまく教育してのける千穂ちゃんが、やっぱりすごすぎる。ある意味、エンテ・イスラ側で魔族たちに元帥としてうまく統制していたのを見たよりも、こっちのほうがインパクトありますわー。木崎さんからも岩城さんからも高校生としては破格、ってか高校生にしてはなんていう前置きは取り除いて、超出来まくるスーパーアルバイター的な評価を受けている千穂ちゃんですけれど、本人は不安ばかり抱いているようですけれど、この娘ならホントどこに行っても全然問題なしにやれるに違いないでしょうね。
木崎さん、ちくっと迷走しかけてた彼女に厳しいこと言ってましたけれど、逃避の結果だろうとなんだろうと来てくるなら絶対に確保、捕獲、ゲットしておくべき人材だよなあ。ってか、真奥にサリエルの二人を独立の際に抱え込むつもりって、無茶苦茶贅沢なんですよね。どれだけ確実に勝ちに来てるんだろう。

しかし、梨香に千穂ちゃんが相談してるときに、真奥との恋愛話に発展してましたけれど……梨香から、恵美はない、と断言が出るとはちょっと驚いた。一番親しい友人の一人である梨香から、そう見えてるのか。ただ、現状の恵美の内面描写を見ると、これはなかなか、ねえ。千穂ちゃんの勘は外れてないと思うんだけどなあ。ただ、鈴乃に関してはどうだろう。最近、鈴乃本人が自重している節もあるんだけれど、確かに千穂ちゃんが最初の方に危機感を感じてたのは鈴乃の方だったんですよね。
次回あたり、鈴乃がメインになりそうですし、最近ちょっとそっち関係ベルは大人しかったんで、どう動くか楽しみなところであります。

シリーズ感想