【死神に育てられた少女は漆黒の剣を胸に抱く 2】 彩峰舞人/シエラ オーバーラップ文庫

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死神から授かった漆黒の剣を手に戦場を駆け、ファーネスト王国の南方戦線へと勝利をもたらした銀髪の少女・オリビア。
久方ぶりの勝利に浮かれる王国だったが、間を置かずして舞い込んだのは、北方戦線を維持していた第三軍、第四軍が壊滅したとの報だった。
状況を打破すべく、オリビアを有する第七軍は制圧された地域奪還の命を受け、北方戦線へと進軍を開始する。
一方、帝国軍の指揮を執るのは、帝国三将が一人にして紅の騎士団を率いるローゼンマリー。
濃霧が覆う渓谷で、戦いの火蓋が切られようとしていた――!
王国軍“最強の駒"として、常識知らずの無垢な少女が戦場を駆ける、第二幕!

おお、敵味方の個性的な将帥に第三国の動きも明確になってきて、さらに戦記物らしくなってきた。
そして相変わらず第七軍のお爺ちゃん将軍と参謀諸氏がオリビアのことうまく使うんですよね。はっきり言って軍に馴染まないだろう異端を、能力を制限することなくかと言って完全の野放しにするでもなく、統制下に入れながらも自由にやらせていて、ほぼほぼ全力を出し切らせているんですよね。
この手の異端となる才能はどうしたって上からも横からも下からも掣肘や足の引っ張りが入ってきてフルスペック活用出来なかったりするものなんですけど。
その上、単体でどれだけ強くてもそれだけでは戦局に寄与しきれないのを、ちゃんと戦場での効果的あるいは決定的な打撃力として運用出来ているわけで、そりゃ強いですよ第七軍。
そのようにオリビアを動かせるのも、彼女の傍らに軍師参謀たるアシュトンと副官のクラウディアがついているから、とも言えるのですけれど。あれでオリビアってちゃんと人の言うことはちゃんと聞く子なので……伝わりにくいきらいはありますけど、結構素直になんでも聞いてくれるので意外と扱いが面倒な子ではないんですよね。
敵を殺すことに関して忌避感とか全然持たない化け物と呼ばれても仕方のないようなところはあるにしても、無邪気で無知で育ちの関係上社会的通念とか常識倫理観に乏しいところはあるにしても、オリビアって別に人間として壊れているというタイプでもないんですよ。面倒になったらとりあえずぶっ殺して問題をなかったことにしてしまおう、みたいな物騒な鎌倉武士マインドもありませんし。オットー副官の毎回のごときお説教も、うへーとなりながらもわりとちゃんと言うこと聞いてますしね。
何より、アシュトンやクラウディアへの懐きっぷりを見ると小動物的な愛らしさすらあるわけです。
クラウディアなんか、そういうオリビアの可愛らしいところにメロメロになってる感もあるんじゃないでしょうか。戦士として指揮官として至上この上ない上官への敬愛、みたいなものを通り越して、オリビア好き好き、になってるところありますし。
しかし、何気にアシュトンくんがオリビアとクラウディアで両手に花状態で羨ましいことになってるぞ。主人公でもないくせにw オリビアには無邪気に懐かれてますし、クラウディアともなんか距離感近くなってますし。まあこのまま、もうひとりの主人公格となってもおかしくない活躍はしてるんですけどね、アシュトンくん。
ほぼ今回の戦い、主導権を握っていたのはアシュトンでしたし。敵の紅騎士団、痛恨の一撃を二度三度と直接ぶん殴ってみせたのはオリビアですけれど、こと一連の会戦、そこに至るまでの作戦的な勝利をローゼンマリーから常にもぎ取り続けたのはアシュトンでしたからね。
まああれ、ローゼンマリーが作戦上下手打ったというのもあるんでしょうけれど。ちょっと私情に拘りすぎて、要らない小細工を弄しすぎた部分もありますし。ただ、この時代の乏しい情報の収集状況から、敵軍の意図や戦域の全体像を把握して敵を戦略的に切り崩していく策をどちらかというと感覚的に導き出すアシュトンは、これもちょっとした異能なんでしょうね。
でも、これ結論を導き出す過程が決してロジカルではないっぽいので、何気に他者に納得させがたいところがあるのも確かな話で。そこらへん、アシュトンって大きな商家の出らしいのに営業というかプレゼンテーション力はもっと磨いておこうよ、と思うところでもありました。これ、第七軍の首脳部でないと聞く耳持ってくれなかったでしょうし。まあこの軍でなければ、一兵卒だった彼が准尉でオリビアの側近みたいな立場まで出世させてくれることもなかったのですけれど。
その辺の士官として軍師参謀としての立ち居振る舞いに関しては、ここからの勉強と成長ですなあ。実際、ローゼンマリー軍との決戦ではアシュトンの作戦が使われてハマったわけですし。

しかしまー、オリビアの強いこと強いこと。彼女と彼女の率いる精鋭となった部隊が遊軍として戦場を駆け回って、ぶち当たった一勢を片っ端から叩き潰していくのですから、相手からしたらたまったもんじゃないですよ。こういう相手は遊兵にできればいいのですけれど、見事に痛いとこついてくるわ、本陣へとツッコんでくるわで。いやまあ、今回はローゼンマリーが本陣囮になんかしてこれ見よがしに届くところに置いちゃうのが尚更悪いっちゃ悪かったのでしょうけれど。
個人的武勇でも欠片も負けると思わずに図に乗ってる連中を片っ端からずんばらりんと片付けていくオリビアの快進撃は、まあ痛快の一言でありました。ローゼンマリーは最初から偉そうに格上風を出しまくってたわりに、作戦家としてはアシュトンにイイようにねじ伏せられ、個人的な武勇ではオリビアに一方的にけちょんけちょんにされて、何気に良いところなしだったんじゃないでしょうか。このまま退場でも良かったような気がしないでもないですけど。
なんとか亡国一直線の敗勢を食い止めたところで、ゼットとは違う死神らしい怪しい存在の蠢動や第三国である神国メキアも動き出し、また国内でも第6軍の姫将軍や第二軍の曲者っぽい将軍とか出てきて、舞台のスケールも広がってきた感もあり、さらに面白くなってきそうなワクワク感が増してきました。
これは期待の一作となりそうです。面白かった!

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