【ガーリー・エアフォース 宗曄_導 公司/遠坂 あさぎ 電撃文庫

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対ザイ戦線異常あり! 日露アニマ共闘の美少女×戦闘機ストーリー第9弾!

圧倒的な戦闘力を持つ謎の飛翔体・ザイと、美少女の姿をした兵器・アニマを擁する人との戦いは、グリペンの中に眠っていた「記憶」の解明をきっかけに新たな局面を迎えようとしていた。
しかし次なる作戦地、ベトナムで慧とグリペンを待ち受けていたのは、かつて死闘を繰り広げたロシアのアニマ、Su-27のジュラーブリクたち。共同で作戦を遂行する計画だというが、因縁ありまくりの両陣営はたちまち一触即発の雰囲気に。日露アニマの呉越同舟ですんなりミッションコンプリートといくはずもなく!?
世界規模の戦いに向かう、美少女×戦闘機ストーリー第9弾!

さり気なくハイパーゼロ、取り返しのつかないことしてませんか!? 明華にちゃんと謝って怒られてた方がマシだったんじゃないかこれ!?
グリペンの記憶が開放され、世界の真実が明らかになった前巻まで。絶望に囚われた慧もなんとか持ち直したとはいえ、結局解決に至る方策は何一つ見つかってないんですよね。
それでも、何度も世界を繰り返しているグリペンの記憶を元にして、反攻作戦に打って出る独飛。でも、この勝利の連続も局地的な勝利に過ぎず、最終的には物量に押しつぶされてしまうとシミュレーションによって答えは出ているわけで、勝利を続けても焦燥は募るばかり。
だったのだけれど、このグリペンの記憶というファクターはザイ側からすると関知しえない要素なだけに、なるほどあちらはあちらで危機感を過剰に膨らませてしまったのか。
ここまで来るとSF的な要素が凄まじい勢いで積み重ねられていって、詳しい内容についてはちゃんと腰を据えて一つ一つ読み込んでいかないと理解が難しそうな難易度になってきた。ですが、説明は丁寧かつ起こっている現象やその対処方法についての表現がわかりやすく端的なので理解が及ばなくても物語を読み進める上で十分な把握はできるんですよね。ビジュアルでイメージがしっかりと出来るように解説してくれているので、どんな理屈でこういう現象が起こっているのかはちゃんと頭使わないとわからないけれど、何が起こっていてそれによってどういう危機が巻き起こり、それをどうやって攻略するか、についてはパッと見でちゃんとわかるようになっている、というんでしょうか。

この期に及んで国単位での利害調整とか、人類そのものが滅びかかっているのにそんなんしている場合じゃないだろう、という所なんですけれど、そう簡単にはいかないものなんですよね。世界の繰り返しという真実にたどり着いてしまった慧たちからすれば、もどかしいことこの上ないのでしょうけれど。それでも組織の一員としてはそこに縛られてしまうし、真実を明かせない以上危機感は決して共有できるものではない。じゃあ明かしてしまえば、って明かしたら明かしたでそこからまた利害が発生するしその破滅的な内容からは感情に基づく混乱が発生してしまって、余計に酷いことになる、という冷静な分析はまあ全く事実なのでしょう。
だからこそ、ロシアのSu-27M、ジュラーブリクとこの真実が共有できたのは、今回の一見での最上の功績だったんじゃないでしょうか。ってか、あれを知ったからと言ってどういう反応を示すかわかったものではなかったのですが、ジュラーブリク姐御は極寒のロシア美少女とは思えない熱血漢なんですよねえ。
もともと、姉妹に対する熱い情愛からして身内に対しては本当に情深い娘であるのはわかってましたけれど、あのグリペンへの宣誓はちょっと泣きそうになってしまうほど真摯で情熱的で、そりゃ姉妹たちが慕うどころか信仰に近いものを彼女に抱いているのもわかる一幕でした。
まあそのために、グリペンや慧まで身内扱いしだしたお姉ちゃんに嫉妬して、ラーストチュカが暴走してしまうのですが。この娘、クール系に見えてヤんでるタイプだったのか! 見た目ちっちゃいジュラーブリクより、ラーストチェカの方が圧倒的にシャープで格好いい系お姉さんなのにな!

それにしても、ここしばらくのファントムのキャラの弾け方は素晴らしいです。ジュラーブリクとの喧々諤々の喧嘩といい、慧へのなんか定まらないツンデレっぷりといい、この娘こそ最初のクールで突き放したような醒めたキャラはどこに行ったんだ、と。まあ分身のトゥエルブの再登場、ファントムの黒歴史再び、というあたりでファントムのメンタル休まるところ最近全くなかったところにトドメきた、みたいな感じでしたしね。なんか、グリペンと慧の関係が完全に収束したのを目の当たりにして、若干やさぐれてる風でもありますし。

で、今回のMVPはなんといっても八代通さんでしょう。この人、天才科学者という以上に組織の運営者としての凄まじいパワーショベルのような行動力が何よりもデタラメなんじゃないでしょうか。
普通、たった数日でこんな大規模ミッションを実現可能なところまで持ってけませんよ。なんでそんな短期間で必要な機材手配して現地に持って来させるの間に合わせられるの!?
化け物か!! 化け物か!!
ロシア側の担当の中佐が唖然とするのも無理ないですわ。
世界最大離陸重量を誇るAn-225 ムリーヤの登場には胸熱でした。ってかこれ、世界に一機しかない機体なんですよ。最大離陸重量が600t! 600トン!! ドスゲエ。

さて、世界崩壊待ったなしの大ピンチの難局を至上の結果で乗り越えた慧たち。しかし、ここでまたありえべからざる矛盾点が浮き上がってくるんですよね。忘れてた! わけでもないのですけれど、それが現実の現在に現物として存在していることについて、そう言えばグリペンの記憶では説明つかないことでした。
そう、あれは一体どうしてそこに現れたんだ!?
これが、完全に詰んでいるこの世界の危機を、グリペンに押し付けられる定められた運命を覆す転換点となり得るのか。面白くなってきた!!

シリーズ感想