【ナイツ&マジック 9】 天酒之瓢/黒銀 ヒーロー文庫

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ボキューズ大森海での騒乱を終え、銀鳳騎士団は巨人族と共に王都に帰還する。巨人族、そしてエルネスティを襲ったという第一次森伐遠征軍の末裔の存在は、フレメヴィーラ王国にとってまさに寝耳に水。突如もたらされた途方もない話に、もはや既存の価値観は通じず、王国は新たな時代へと踏み出していくことになる。そして銀鳳騎士団にもまた、巣立ちの時が迫っていた。此度の事件で銀鳳騎士団の影響力を重く見た国王リオタムスは、エドガー、ディートリヒ、ヘルヴィらが率いる各中隊を新たな騎士団として独立させるよう告げる。エルネスティの下に残る者、騎士団長としての道へ踏み出す者、新たに入団を目指す者―それぞれの想いを受けて銀鳳騎士団は形を変え、新たな飛翔の時が訪れる。

リオタムス王がご苦労さますぎる! 破天荒な先代と比べて地味というか堅実な現王さまだけれど、エルくんが持ち込んでくるトラブルは先代の頃よりも更にスケールアップしてるんで、大変極まるのである。今回なんて、大陸の歴史そのものを確実に変えてしまう案件ですものなあ。それを思えば、これだけの大業を堅実に受け止めて前に進めているリオタムス王はまこと名君なのでしょう。
……よりにもよってエルくんから「自重してください!」と説教される先代と比べるのがまあ間違っているのかもしれません。
でも、巨人族なんて存在にパニックにならずになんだかんだと受け止めるフレメヴィーラ王国の人々は、国ごとエルくんに毒されてる気がしないでもないですが。
これほど異なる種族と、初遭遇でこうやって友好を結び、将来の展望を語り合いつなぎ合う、という展開はなんとも眩しい限りです。こういう未知との遭遇はどうやったって衝突から始まってしまうもので、巨人族の戦士的好戦的な在り方からすれはそれは必定であったでしょうに。
エルくんがアディを連れてたとはいえほぼ単身で接触したのが、これ幸いになってしまったのか。

その意味では、後半の方ではキッドがエルくん以上に真っ当に主人公してるんですよね。久々に登場したと思ったら、いきなり主人公やりだしたからびっくりしたよ!
エルくんの一番弟子らしい破天荒さと、エルくんや妹と比べるとまだ落ち着いている常識人なところがうまいことブレンドされて、派手にやらかすけれど真っ当なところに収めるという良い主人公に収まってるんじゃないでしょうか。派手にやらかして派手に拡大させて着地すらさせずにそこから更に大気圏外に打ち出してしまうエルくんと比べるとまあ穏当である。
でも、いいのかキッド。なんか勝手に自分のヒロイン増やしちゃってるけど! エレオノーラ女王陛下はどうするのさ! 既に飛び出してった現状で激おこなのですが。
こうしてみるとキッドはかなり真っ当な部類なので、モテるのはわかるんですよねえ。それに比べてエルくんと来たらとてもついていける人間がいないだけにアディの独壇場ではあったのですが、この度ようやくアディがエルくんの捕食に成功して、結婚と相成ったわけですが……ぶっちゃけ何が変わったんだろうというくらい何も変わらんな、この二人は。それでもまあ、収まるところに収まったのはめでたい話です。

巨人族との友好宣言に森を開拓していく何世代にも渡って続いていくだろう大事業の始まり、という時代の転換点とも取れるイベントにワクワクをつのらせていたら、一方で畳み掛けるように浮遊大陸とそこで暮らすハルピュイアというまたぞろ新しい人種との遭遇、という冒険心を擽るイベントが巻き起こり、大航空時代の名にふさわしい大空を駆け巡る飛空艇同士の空戦まで勃発して、この一巻で盛りだくさんも良いところ。
巨人族の方、落ち着いたとは言え終わってなくて一緒に連れたまま浮遊大陸編まで突入してしまうあたりのごった煮感、正直大好きです。

しかし、ヘルヴィはちゃっかりうまいことエドガーの隣に収まったなあ。いやもう、アディが結婚するくらいなんだから、こっちの二人もくっついちゃっていいと思うんですけどねえ。エドガーの甲斐性次第か、こっちは。

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