【勇者よ、たのむからオレでなく魔王さまに惚れてくれ! 絶体絶命の魔軍参謀】 壱日千次/雛咲 ファミ通文庫

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女魔王ジャフィが女勇者エレナに一目惚れしたことに頭を抱える魔軍参謀カイム。さらにジャフィは世界征服よりもエレナを盗撮したり、着ていた服を回収し嗅いだり、触手プレイをしたりと変態的なストーカー行為に夢中になってしまった。そんな中、エレナが冒険者達に襲われ、連れ去られてしまう!すぐさまカイムは人間の姿に変身しエレナを助け出すのだが…。変態魔王&恋愛脳勇者&魔軍参謀が繰り広げるちょっとおかしな三角関係ラブ・コメディ登場!!
ここの魔王軍の四天王、メンツがおかしくないですか!? いや、変態という意味のオカシイではなく……変態も混ざってますが。
魔軍参謀のカイムはまあ参謀とは言え武官的な意味合いも濃い参謀なのでいいのですけれど、他の三人全員後方支援職ですよね。というか、後方支援どころか戦闘に参加しないような職人とか技術者とかそういうタイプじゃないですか、これ?
直接戦闘能力、もしくは直接戦闘指揮能力に著しく欠けた魔王軍四天王w
かつては真っ当な武官相当の戦いに自信のあるタイプの四天王もいたみたいですけど……。排除されてるし。
まあ、まともな武人ならこの魔王は嫌を通り越して許せんわなあ。おかげで盛大に反乱が起こったみたいだけど。それで叩き潰されてしまったみたいだけど。いや、武闘派に限らず魔軍の総力をあげて勇者の支援する魔王は嫌だと思うんが、先代に恩のあるカイムは仕方ないとしても、他の魔族たちも唯々諾々と従っているのは不思議ですらある。
父である先代魔王の遺徳に従ってまともな魔王を営んでいたジャフィが、厳しかった魔王としての父と今際の際に見せた父親としての愛情の食い違い、そして魔王として魔軍を率いるプレッシャーに悩んでいた部分を、暗殺するために出向いた先で勇者にそれと知らず慰められて、自縄自縛から解かれて勇者エレナ個人に惚れてしまった、ところまではまあ良かったんだけど。
この魔王の根っこがどうしようもない変態だったのが、事態をどうしようもない有様にしてしまってるんだなあ。別に同性同士でも魔王と勇者という宿命の関係であってもジャフィがまともなら、なんとでもなっただろうに、変態だったばかりに。ド変態だったばかりに。
何気に勇者エレナの方の境遇も酷いもので、いわゆる100ゴールドだけ与えて後は何の支援もせずに無責任に放り出す国王さまタイプの偉い人たちである。オマケに市井の人たちも勇者に対して求めるだけで、何も与えようとしない民衆で。勇者が不甲斐ない姿を見せると、無責任に非難を浴びせるばかりで助けようともしない。勇者は勇者でゴリゴリと精神を削られて、やる気も急降下真っ逆さまという有様。そりゃ、優しく親切に気配りしてくれて助けてくれたカイムにべた惚れするわなあ。一番辛い時に優しくされたらころっといってしまうのをチョロいというのは酷な話である。
しかし、勇者のこと人間たちは一切支援していないのに、戦っている魔軍の方が至れりつくせりで万全に支援体制をしいて彼女の旅を助けまくってるの、一体勇者何と戦っているのだろう、という有様であります。なんかもう「有様」というほかない有様ばっかりだなあ。
実のところエレナの方ももう人間に対して失望しきっているので、カイムが正体明かしてこっち来なよ、と言ったらキレイに何の後腐れもなく転向してくれそうなんですけどねえ。魔王が変態なばかりに、むしろ魔王が障害になってるんですよねえ。
頼むから魔王に惚れてくれ、ってタイトル、ぶっちゃけ無茶言うな、という話である。あれはうん、真顔で無理と言われても仕方ないんじゃなかろうか。

壱日千次作品感想