【数字で救う! 弱小国家 3.幸せになれる確率を求めよ。ただしあなたの過去は変わらないものとする。】 長田 信織/紅緒 電撃文庫

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帝国での戦いからしばらく経ち――しかしなお、弱小国家ファヴェールの宰相にして、数学オタクの現代人・ナオキは苦境に立たされていた。苦楽をともにしてきた王女・ソアラからナオキに領地が下賜されることになったのだ。それはナオキを貴族階級に据え《自分と婚約できる立場になってもらう》ための、彼女からの遠回しなプロポーズだった……が。
それをこいつ――断りやがった!
前回の戦いで仲良く(?)なったライアス公爵や、助手のテレンティアにメンタルフルボッコにされる名宰相あらため、優柔不断へっぽこ人間のナオキだったが、彼にはソアラに対して踏み出せない一つの理由があった。
激動のシリーズ第3巻!!

随分と「政治」をうまく熟すようになったなあ、ナオキ。その発想と実際の行動は理論をこねくり回す学者ではなく、実践でロジックを現実にすり合わせていく政治家とか策略家の分野のはずなんだけれど、ナオキもう完全にそっちの人間になっちゃったなあ。当初の、理論を相手にしていてそこに人間が居るという事実がすっぽり抜けてたようなやり方に比べれば雲泥の差である。
あの頃は、宰相?冗談でしょう、な感じだったのですが。それに、ナオキに似たり寄ったりだったソアラも、なんだかんだとナオキにダメ出しとか出来るようになってるんだから、大したものである。
それもまあ、テレンティアとライナス公のスパルタ教育があったんでしょうか。いずれにしても、この二人を味方にできた、というのは本当に大きかったように思います。
ナオキとソアラの関係の結実を迎えるためのエピソードがグランドデザインの中での紛争ではなく、なし崩しの理由なき局地戦、というのは微妙に勿体なかった気もしますけれど。ナオキの踏ん切りのつかない想いの源泉となるものも、結構はっきりとしない曖昧模糊としたものでしたしねえ。このあたり、ナオキ自身の優柔不断もさることながら、物語としてもナオキの感情の部分だけピリッとしたものがないもやもやした感じになってしまっていた気がします。彼の拘りや心の引っかかりが如何なる部分にあったのか。ニュアンスとしては伝わってこなくもないのですが、彼自身もはっきりできない分、しゃんとしない感じになっちゃってたかなあ。
人が前に進めない、思い切ることの出来ない理由なんてだいたいはっきりした形のある具体的なものがあるわけじゃないんですけど、曖昧模糊としたものが源泉にあるのならその曖昧模糊さを明確な形にしないといけないんですよね、物語としては。そのあたりが若干、具体化できなかった気がします。
爺ちゃんの残した数式。グラフを見ると一目瞭然なんだけれど、まあね、こういうものは固定観念があると全然気づかないものだし、爺ちゃんとの末期の時間の余裕の無さがナオキから視点を奪っていた、というのなら彼が気づかなかったのも無理ないんじゃないかと思う。
でも、これって若干ナオキの爺ちゃんかわいそうなんですよね。爺ちゃんとしては、死の間際での渾身のネタだったにも関わらず、ウケないどころか結局気づかれもしないまま可愛い孫をはからずも追い詰めてしまったわけで。
爺ちゃんとしては、孫の笑い声を聞きながら旅立ちたかったんじゃなかろうか、とね、思っちゃうわけですよ。それもこれも終わってしまったこと。たとえ間に合わなかったとしても、のちに孫が気づいてケラケラと笑ってくれたのですから、爺ちゃんもあの世で苦笑してるんじゃないでしょうか。

しかし、最後まで傭兵隊長はいいキャラでした。こんないいキャラ、というか軍事面でのナオキの相棒格にも関わらず名前出てこないなあ、と思っていたのですがあくまで役職名の傭兵隊長、という表記を貫いていたからこそ、ラスト近辺の彼の行動には信憑性というか迫真が出たんじゃないかと思います。ただの「傭兵隊長」だったからこそ、もしかして、という考えをよぎらせることに成功してたんじゃないかなあ、と。
エピローグのやり取りを見てると、ナオキが一番打ち解けてるのってこの人だよなあ、とニヤニヤしながら眺めてたり。隊長からすると、微妙にいい迷惑そうなんだけど。
ナオキとソアラの物語としては今回でキレイに一通り決着をみたのだけれど、あとがきを見るとなんだかこの【数字で救う! 弱小国家】シリーズ、世界観を同じくしたままもう少し続けられそうなご様子で、もう少しこのシリーズを見続けたかった身としては、面子変わるとしても嬉しいところ。
数学のネタについては、上っ面だけさらっと見ているだけで全然理解しようとする力を働かせてなかったので中身わかってないんだけれど、なんだろう、思っていたよりもファジーで計算とか方程式から程遠い現実の出来事を数値化して計算し答えを導き出すような、現実に確固と応用できる計算式って思いの外多いんだなあ、という知見を得ることが出来たのは何とも味わい深いものがありました。数学って、一般的に思われているものよりも柔軟性というか懐広いんだよ、というアピールにもちゃんとなっているシリーズだったように思います。さて、この話を読んで数学って面白いものなのかも、興味を持つ子たちは現れるのでしょうか。
それはそれとして、テレンティアさん、今回端から端までやりたい放題だったなあw

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