【ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? Lv.18】 聴猫芝居/ Hisasi 電撃文庫

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「私は高校を卒業したら会社を興すぞ!」
大学受験へ向けそろそろ進路を決めようというところで、マスターが突如としてご乱心!?
何を寝言を言ってんの? と、本来は止めるべきなような気がしつつも、マスターの甘言の前に次々と洗脳されていく残念美少女・アコはじめネトゲ部の面々。
だが、そんなことでは屈しない常識人がいた……。
「そこまで言うなら、LAのトップを取って、力を証明して見せるのにゃ!」
顧問としてそこは譲れない猫姫さんと売り言葉に買い言葉で始まったLA天下取り。その手段は――農業?
ていうか本当に勝って良いの? この戦い!? 残念で楽しい日常≒ネトゲライフ、進路指導の第18弾!
わかる! すごくわかる! コネ入社って素晴らしいよね! しかも、相手が気心の知れた仲間が経営してる会社となればなおさらに。将来、苦労して就職活動して精神すり減らして働かなければならないという不安を、高校二年で解消できて将来約束されてたら、そりゃ嬉しいし楽だし大勝利じゃないですか!
まあ、楽に入社できたからといって仕事も楽だとは限らんのですけどね! むしろ、マスターはナチュラルにブラック経営者である、というのが発覚してしまったわけですがw
気心が知れている分、遠慮せず仕事を振られるし、乗せられ方も把握されているので知らず知らずいつの間にか馬車馬のごとく働かされることに。
でも、マスターが偉いのは自分の体験や経験、常識が絶対でも万人の共通認識でもない、というのを言えばわかってくれるところでしょう。これ、本当にびっくりするくらい大半の人間が人の話も意見も聞かないものなんですよね。成功体験者にこういう人多いかもしれないけれど、それに限らずどういう階層、立場、種類の人間でもかなりの人間が、自分の中で既に定まっている意見や基準を外からの言葉でひっくり返すことがないんですよ。それでいて、自分が人の話を聞かないとは露ほども思っていない。これは自身も自戒スべきところで、自分で気づいていないかもしれないけれど自分だってそういう傾向があるかもしれないんですよね。
なので、フィクションノンフィクションに限らず、自分の中の固定観念を外からの意見でちゃんと考慮して覆すことの出来る人というのは、尊敬してしまうんですよね。敬服してしまう。
その意味でも、マスターは大した人だと思いますよ。こんな風に人の意見を聞けるのなら、たとえ会社を立ち上げてもブラック企業にはならずに済むんじゃないでしょうか。そのかわり、成功するかどうかはわかりませんけれど。
でも、この面白いことをやろうという精神はかっこいいですわ。彼女の動機というのは多分にモラトリアムに類するものなんだけど、彼女の場合は消極的でも停滞の結果でもなく、むしろ逆に積極的に能動的に動いてるんですよね。ここまで前向きにモラトリアムをモラトリアムでなくそうとしている人は珍しいかも知れない。今の心地よい居場所を無くすことを恐れて、色々と迷走する展開は多いですけれど、大人になったその先の社会の中に永続的にその居場所の続きを作ろうなんてパワフルに動ける人はなかなかいないですよ。
猫姫先生のおっしゃる通り、目的と目標がブレていただけにそれを成し遂げられる可能性はまあヤバかったのかもしれませんが、目的が定まったのなら会社という形でなくてもマスターなら何らかの居場所を作ってくれそうなんですよねえ。それだけのすさまじいポテンシャルを持っている人、というのは今回のゲーム世界全体を巻き込んだ大どんでん返しをプロデュースしたことからも大いに信頼できますし。
これだけの人が、失いたくないと思うこのネトゲ部というのは、それだけもう上限に達していると言っていいくらい完成された幸福な楽園なんですよねえ。そりゃあ、これ無くしたくないよなあ、わかる。もっとも、今更マスターが焦らなくても、大学行ったり社会出たりでバラバラになってもとてもじゃないけど疎遠にはなれないと思える濃い関係なんですよね、この面々は。マスターだけ年齢が一つ上なのでその分の焦りがあったのかもしれないけど、他の連中がそんなに焦ってないようにいつまでも馬鹿やれそうな安心の関係なんですよねえ……。まあ、他のヒロインズ、ネトゲばかりやってたら恋人も出来ないし結婚も出来なさそうなんですけど。部員増やすだけでもえらい揉めたくらい、部内で関係が完結してしまっているだけに、余計な人間関係増やす余裕がこの娘たちにあるものか。セッテさんあたりはそのあたりのバランス感覚上手そうなんだけど、茜はともかくマスターは見事にドツボ嵌りそうだなあ。
しかし、猫姫先生の先生レベルの高さはちょっと眩しすぎて気が遠くなりそうです。数いる先生キャラの中でも、この人ほどちゃんと先生として生徒を指導できている人が果たしてどれくらいいるんでしょう。先生として生徒を指導し、大人として子どもたちを見守り、それでいてネトゲ仲間として同じ視点から一緒に遊ぶことが出来て、と友達感覚までは馴れ合わずしかし大人として一線を引くまでは行かずに身近に接してくれて、と本当に絶妙なラインで関係結んでるんですよねえ。先生としての猫姫さんは、マジで尊敬に値する人ですし。それでいて猫姫というキャラはなんというか可愛すぎるし。猫姫さんがニャーニャー鳴かされてる時が確かに一番可愛いよ! わかる!
ネトゲの時だけじゃなく、現実でもにゃーにゃー言ってる時が可愛いもんなあ。
今回はネトゲの方でもギルド・アレイキャッツが中心となって暗躍していて、LAの中でもネトゲ部のギルドが零細弱小ギルドではなく、規模小さいけれど何をしでかすかわからない、という以上に他の古参ギルドからも一目置かれつつ、なんかみんなから愛されてるギルドになってて、なんかうん、立派になったなあと感慨深い。
今回も文句なしに面白かったです。いや、この作品毎度ほんとに隙なくおもしろ楽しく安定しきってるなあ。ハズレがないですよ。

シリーズ感想