【始まりの魔法使い 4.魔術の時代】 石之宮 カント/ファルまろ 富士見ファンタジア文庫

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竜歴900年。村では、精霊魔法の発展による弊害として精霊の暴走による事件―精霊災害が頻発していた。その対策として、“私”は、免許制度や対精霊魔法の研究を進めることに。ある日、ヒイロ村は死骸を操る黒い影―屍鬼の襲撃を受ける。その犠牲として残された赤子を拾った事で、“私”は―
「クリュセがハイハイしたわよ!」
「おつかれさま、おとうさん」
ニーナと初めての子育てに挑戦することになり!?魔法の時代が終わる時、幸福な最果ての村に、災いを報せる鐘が鳴り響く。これは、すべての“始まり”を創った竜の魔法使いと、その家族の物語。
一気に竜歴1000年台にまで突入。精霊の利用と免許制の構築によって一気に利便性がよくなって、これまでずっと村規模だったヒイロ村、ついに先生やニーナが全住民を把握出来ない規模にまで大きくなりつつあるんですよねえ。彼らの目が届かない、愛情が届かない相手が出てくるということはその影響力からも脱しつつあるということでもあり、先生やニーナは全然そんなつもりはないんだろうけれど、これまで彼らの存在こそが統治の要になっていた以上、これからは緩やかに村の在り方も変わっていくんだろうなあ。
先生がこの頃から表舞台から姿を隠すことを考え始めているのは印象的な出来事でもあった。シリーズの冒頭では、竜とその一党の存在は表舞台からすっかり居なくなって市井に紛れていたわけですしね。
しかし、この頃になると悠久を歩む先生とニーナたちの永い旅に付き添ってくれる面々が増えてきていることは喜ぶべきことなんでしょう。これまで1000年近く村の面々をずっと一人残らず覚えて忘れていない彼らですけれど、やはり死に別れは辛いでしょうし、今となっては忘れる以前に知ることのない村人も増えてきたわけで、永遠に近い時間をともに過ごしてくれる家族が増えるというのは大事なことなんでしょう。
その中に、娘という存在まで加わるのは尚更に。嫁に出さなくていい娘って、お父さんとしてはどうなんですか、これ?
しかし、同じ時間軸の中で過ごしていくとなると、やっぱり先生とニーナの関係って気になってくるよねえ。性急に答えを出す必要がまったくない関係だから、短い寿命の中にいる人たちは敢えてそこを突っ込むこともなく、見守っているうちに通り過ぎてしまったけれど、同じ悠久に付き合える人たちからすると、答えは出さなくてもその行き先くらいは気になってくるよねえ、と。
だから、先生がニーナのことああいう形ではあっても明言してくれたのはちょいと嬉しかった。同じく彼らの悠久に付き合っているのは読者であるこっちだって同じわけで、気になっていたのは間違いないものねえ。どうやらエルフの寿命問題は相手の寿命に合わせる形になっているようで、それなら人間ではなく竜である先生なら、ニーナの寿命を縮めてしまうなんてことはないでしょうし。
にしても、寿命問題クリアした面々、みんなそのクリアの方法が違うのが面白いなあ。真っ当な人間であるイニスが、まさかこっちサイドに来るとは思わんかったけど。でも、寿命が伸びると恋愛面での思い切りに著しく欠けてしまうのは難儀な話である。彼女の場合、不老を達成してなくてもヘタレたままアラに告白できないまま終わってしまいそうなので、挑むチャンスが伸びたのは良いことだったのでしょう。
ユウカについては、彼女あれだけ「ユウカ」では知りえないことを口走っているにも関わらず、何百年も先生気づいていないというのは、このドラゴンぇという気持ちにさせられてしまいます。これだから寿命がない種族は、とディスるとドラゴンに怒られそう。これはもう先生個人の問題だわさね。

いくつもの事件は魔法におけるブレイクスルーがあり、魔術が誕生し文明が発展し、幾つもの出会いと別れが繰り返され、先生とニーナは家族を増やしながら愛する人の生まれ変わりを探しながら時代を旅していく。その中で、もしかしたら最悪であり最凶であったあの敵再び、という事態があったものの……なんか拍子抜けというくらいあっさりかたがついてしまったなあ、という印象。
アレに関しては、当時はどう対処したらいいかわからない恐ろしさがあって、不安となってこびりついていたものだけれど……アレが進化したのと同様にこっちだって技術的に躍進は続いていて、それ以上に助けてくれる一緒に戦ってくれる、皆を護ってくれる存在の多種多様さについては、大昔とは比べ物にならないものになってたんですねえ。その意味では、先生たちは正しく良い発展を促し続けた、その証明がこのあっさりした結末だったのではないでしょうか。
でも、これで相いれぬ不倶戴天の敵との決着はついてしまったので、これからは外敵の脅威には怯えなくて済むようになるのかなあ。いや、外の世界は更に広がっていて人間の国家なんかも生まれているらしいし、内側だって先生やニーナの目が届かない広く深い世界になりつつあるわけで、先生たちも呑気にしていられない時期に来ているのかなあ。

シリーズ感想