【お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。】 凪木 エコ/あゆま紗由 富士見ファンタジア文庫
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孤独を恥じず、集団に属することのストレスを何よりも嫌う。ひとりで過ごす時間が最高の贅沢―おひとり様至上主義な高校生・姫宮春一は理想の学園生活を謳歌していた、はずなのに。学園の完璧ヒロイン・美咲華梨から友達作りを手伝うと言われ、趣味がドンピシャに合うクール美人・羽鳥英玲奈には懐かれる。―そんなおひとり様ライフを邪魔される状況を春一は許さない!「ひとりが寂しい?余計なお世話だバカヤロウ!!」めんどくさい性格ゆえに自らフラグを折りにいく春一だが、なぜか美少女たちは誤った方向に絶賛、逆に注目を浴びてしまって!?ひねくれボッチートな青春ラブコメ、堂々開幕!

無敵じゃないか、この春一くん。決して彼、ぼっちじゃないんですよね。仕方なく一人でいるのではなく、好んで独りを楽しみ堪能している。言い訳じゃなく本気で。必要とあればどれだけでもコミュニケーションは取れるし、自己主張もはっきり出来る。その方向性を独りを楽しむという方向に割り振っているだけで。
こういう他人を別に必要としていない人って居るんですよね。寂しいとか全然感じない人。別にお高く止まって群れる人たちを見下しているというわけでもない、そういう人の在り方を認めた上でその価値観をこっちまで押し付けるな、と思っているだけで。彼の凄いところは、思ってるだけじゃなくはっきり言ってしまえるところだけれど。
こういう独立独歩の人種は、他人を拒絶する必要すらないのである。壁を作って線を引く必要がなく、自分で踏み込もうと思ったら踏み込むし、やめようと思ったらあっさり引く。距離の開け方狭め方を自分で決めれる人って強いですよ。動けない人や退くしか出来ない人、踏み込むしかしない人と比べて自由度が半端ない。
他人に寄りかかることをしない人間というのは、逆から見ると自分に寄りかかってくる事もこうあるべきだという観念を押し付けてくることもない。一緒に居て凄く楽なんだよなあ。
矛盾するようだけれど、独りが好きだからと言って別に人と一緒に居ることが全部苦であるわけじゃないんですよね。楽しいこともあるし、波長が合う人であれば居心地よく思うケースだってある。出来るからやらない人種は、だからやろうと思えば出来るのだ。そうした無理をせずに付き合える相手とは、お互いに何かを押し付けることなく独立独歩で在るので末永く付き合えるんですよね。
さて、今春一につきまとっている華梨と英玲奈は決して春一のような独立独歩の人間ではない。他者と時間と空間を共有し続けていないと安心できない、という意味では他の同世代の娘たちと変わらないのだろうけれど、彼女らの場合自分から与えて合わせて距離を埋める努力を続けてきた娘であり、自分から都合を強要するタイプじゃなかったんですよね。華梨はそのけがあったけれど、決して無理強いするわけではなく、自分と違う価値観も在るとわかれば理解してくれる素直な娘でしたし。まあだから、春一のキャラクターは彼女たちにとっては新鮮であり何より自分を繕う必要がないという意味で楽だったんでしょうなあ。受け入れる受け入れないをこれ以上なくきっぱりと主張してくれる春一は、気を使う必要もないですし。
まあそこで止まっていたのなら、新しいタイプの友達、で終わっていたのでしょうけれど。
この主人公、独りが好きだけれどその「好き」を守るために目の前で起こるトラブルを、友達が追い詰められ困り果てているのを見てみぬフリする男じゃなかったんですよね。
華梨も英玲奈も、春一がどれだけお一人様をこよなく愛して楽しんでいるかをそれまでの付き合いで十分わかっているから、そのお一人様、自分のプライベートな部分を一部とはいえ彼女たちのために切り売りして助けてくれた意味は、多分春一本人よりわかってると思うんですよね。
それでいて、自分の価値観や嗜好を捻じ曲げて妥協したわけじゃない。譲らないところは譲らないで、でも自分の好きを費やして自分たちを支えてフォローして助けてくれた。そりゃもう、カッコいいですよ。優良物件として価値が高すぎるんじゃないだろうか、この主人公。華梨たちからすれば、絶対逃しちゃいけない魚ですわなあ。
ただ、変に執着し独占しようとつきまとうと、彼の好きを無為に邪魔することになってしまうので、ラブコメするにもヒロイン側に凄まじいバランス感覚を要求してしまう、という難易度の高い主人公なんだよなあ……なんか、主人公の方が攻略される側になりそうな感じだな、これ。