【わたしの魔術コンサルタント 2.虹のはじまり】 羽場 楽人/笹森 トモエ 電撃文庫

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東京の片隅の薄汚れた古い雑居ビルで魔術が使えない魔術士・黒瀬秀春は、相変わらず魔術に苦しむ人々に救いの手を差し伸べる魔術コンサルタントを営む日々。そして事務所に居候していた朝倉ヒナコは永聖魔術学院への入学を果たし、秀春はそれを見守る。けれども入学早々、ヒナコの存在は魔術学院に波紋を広げ、魔術士の名家・皇希遊と対決することになり―。四年前に起きた魔術による大規模魔術消失事件「消失した正午」の真実、そして秀春の過去を知る美女・逢夏との出会い。秀春は様々な思いを抱えて、更なる一歩へと歩み出す。
大人の主人公の幼馴染ときたらそりゃ当然大人の女性だわなあ。そして大人の関係でもある。大人の関係だからこそ、軽々と仲直り出来ないという面もあるんですけどね。
一端距離と時間を置くことで自分たちを見直せるというのは、子供の頃には出来ない時間を積み重ねてきた大人ゆえの特権なんでしょうなあ。
逢夏と秀春が別れた理由も突き詰めると、逢夏が秀春の魔術への偏執的な拘りを危惧したからでもあるし、彼女ってば健気に別れたあとも秀春が魔術を取り戻す方法を探し研究していたわけですしねえ。好きあっていても上手くいかない時は上手くいかないもので、だから好きという気持ち自体が歪んでしまう前に出ていった逢夏の判断は終わってみれば正しかったのかも。
まあ、考えあってのことではなく衝動的なものだったのであろうことは、彼女のコミュニケーションのとり方の不器用さから想像がつくのですが。エリートで優秀であるがゆえに自分の意見や考えがすぐ通ってしまっていたが故に、自分の思う通りに相手が動かないとなると途端に迷走しはじめる、というのはなかなかポンコツであるようにも見える。根が素直で純情でまっすぐなので、思い通りにならないことに腹立てて感情的になる、なんてことがなくただただどうしたら良いかわからなくなる、というあたりに人柄の良さが伺えて、育ちの良さというかいい娘さんなんだな、というのが伝わってくるキャラクターなのですが。一途ですしねえ、健気ですしねえ。その上大人の女性である。
……ちょっと十代の小娘たちでは対抗できんわなあ、これ。なんだかんだと相思相愛なわけですし。
まあ、本気で秀春に食いついていたのは朱歌だけで、ヒナコは元々秀春のこと父親だと勘違いして会いに来たわけで、家族同然という認識はあっても異性として見ている様子はなくて、素直に逢夏との仲を応援しているようでしたし、希遊に至っては純粋に師匠として慕ってる、という風情でしたからね。意外と敵になるようなヒロインはいなかったか。

一巻では色々とあらの目立った文章立てだけれど、見違えるように場面転換からストーリーの組み立てに登場人物たちの言動の機微がハマっていて、本当に面白かった。完成度が段違いにあがっているのが見て取れる。魔術を憎み消し去ろうとした朝倉響示の思想に相対するように、魔術を失ってもなお魔術にのめり込み傾倒する秀春に、その指導を受けて真っ直ぐに切磋琢磨してお互いを高め合う皇希遊と朝倉ヒナコという魔術の素晴らしさを体現する姿が、情熱が、青春が描かれているわけですが、その熱量こそが黒幕たる朝倉の暗躍に対抗する盾となり矛となっているのが見て取れて、物語の構成としても美しい形になってるんですよね。
どうも語り口から見て、この二巻で〆られてしまっているようなのですが、ここで終わってしまうのが非常に残念な良作でした。シリーズとして続けばもっともっと良くなる感触があっただけに惜しいなあ。
次回作はさらなる期待を。

1巻感想