【魔術破りのリベンジ・マギア 5.救世の屍王と恩讐の行方】 子子子子 子子子/伊吹のつ  HJ文庫 

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中華魔術と激突! “邪悪の樹"から鴨女を救え!

祭宴が終わってすぐ、鴨女が突然姿を消した。彼女の両親の仇が米国内で目撃されたため、復讐を果たしに向かったというのだ。
その仇の名はフー・マンチュー。【邪悪の樹】序列第九位『不安定』を司る狂気の道士。“救済"を謳い、人類の同時鏖殺を目論む彼の男の圧倒的な力を知った晴栄たちは、
謎の包帯美女・リンタンを仲間に加え、鴨女の救出に向かうが……!?
屍霊渦巻く廃坑の街・セントラリアに魔術の火花が散る!
フー・マンチューって名前だけちらっと聞き覚えある、というくらいの人だったのですが、本作に登場するゲストキャラクターはみんなその筋では著名な人物ばかりなので、この人もそうなんだろうと調べてみたらこれがまた、滅茶苦茶有名な人じゃないかー!
とは言え、彼に関しては実在の人物ではなく、名探偵ホームズの敵役であるモリアーティ教授のような創作上の悪役なのだけれど、一作品に留まらない活躍を見せてるんですねえ。しかも、探偵小説におけるノックスの十戒で、中国人を出してはならないという項目が加えられたのはまさにこのフー・マンチューという怪人の存在があったからこそ、という話を聞いてしまうとその存在感が当時の欧州においてどれほどのものだったかというのも伺い知れるのではないでしょうか。
そんでもって、彼がまたキョンシー使いなのですよ! いや、そういう単純にカテゴライズされてしまう術士ではないのですが、霊幻道士とかストライクの世代なんでこれくるものがあるんですよねえ。
まああの古典名作のキョンシーみたいな両手前に突き出してぴょんぴょんと跳ねて移動するようなのは殆ど出てこないのですけどね。その意味では、相変わらず魔術に関する資料の練り込み具合は瞠目に値する質量であります。参考文献も相変わらずの量ですしねえ。キョンシーが上級になると空を飛ぶ!というのも昔件の番組で見たなーと思いつつ、どうしてもそのイメージに引きずられて、ワイヤー見えてるワイヤーアクションな、思いっきりぶら下げられて平行移動みたいな情景ばかり浮かんできてしまうw
凄いなー、と思ったのがクトゥルー神話体系と既存魔術の融合である。クトゥルー神話というのは、どうやったって独自性が強すぎる代物だけに、色として既存の文化文明を背景に成立し形成されていった魔術大系とはなかなか混じりえないものなんですよね。
それをフー・マンチューのあの外の神の召喚法は、見事にすり合わせてたんですよね。見立てとしても類感魔術としても面白いアプローチで、非常に興味深いものでした。
本作って、ほんと魔術関連に対しては徹底して掘り下げもするし、それらを応用しての演出にも凝っていて魅せ方として一つの確立を得ているところは感心させられるばかりです。
ただ、それらに妙に比べて物語自体の「語り口」という点に関しては若干単調さがあって盛り上がりの加速のノリがちと鈍いんですよねえ。
物語のテーマとしては、今回も復讐について、というもので元々実家への復讐の念を募らせていた晴栄の変化に、鴨女の両親の仇の登場、その仇であるフー・マンチューもまた恩讐を原動力にしているキャラクター、と敵味方、主人公本人とヒロインとの関係の中に主題を絡ませた上でそれを解いていくと同時に、登場人物の心のうちにそれまで囚われ続けていたモノのその先へと踏み出させる、という構成としても非常に堅実に練り上げたものを感じさせるものとなっていて、ビシッと真ん中に一本筋の通った良い物語だと思うんですよね。
ただ、それを語って聞かせる言葉の色合い、音調、冴えとかそういうのなんだろうかなあ。変に状況の推移を単調な説明で語っちゃってるなんてところもあるし、展開の見せ方やセリフなんかもちょっとなあ。そういうところが、作品に感じるポテンシャルに対して物足りなさを感じる部分なのでしょうか。

あと、晴栄。それは誰がどう聞いてもプロポーズにしか聞こえないじゃないかな!? あれで勘違いも付け入りもしない鴨女は物分りがヨすぎると思いますよw
ラスト、鴨女のあの告白まがいのセリフに対してまんざらでもないどころか、ええんかい!? というようなセリフこぼしちゃってる晴栄は、もしかしたら無自覚ではなくプロポーズでも良しという気持ちがあったかもしれないけど。でもそれだと、ガチで鴨女が本命になってしまうんですが、いいのか!?

シリーズ感想