【お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。 2】 凪木 エコ/あゆま紗由 富士見ファンタジア文庫

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席替えで美少女に囲まれてもラジオを聴いて無関心、完璧ヒロインからの休日のお誘いは華麗にスルーでカフェで一人読書。相変わらずのおひとり様至上主義な高校生・姫宮春一だったが、彼の望む平穏なおひとり様ライフは確実に邪魔されて―。
「学校でバイトのこと誰にも言わないでよ?」
クラスのギャル・洞ヶ瀬夢乃とは知りたくもない秘密の共有。
「というわけだから姫宮、わたしの彼氏になって」
ムードメーカー・倉敷瑠璃には理想の彼氏作りに付き合わされる。―そんな状況をやっぱり春一は許さない!
「ボッチ=暇?充実しまくってるよバカヤロウ!!」
ひねくれボッチートな青春ラブコメ、無双乱舞!
いや、春一よ。それはクラスメイトじゃなくてもう友達だよ。さすがにそれをまだクラスメイトだと言ってしまうと「友達」のハードルが高すぎてどこまで行けば友達なのかわからなくなる。
逆にクラスメイトの範疇が広すぎて、クラスメイトの概念が変わってしまう!
春一の正直な告白は、それだけ彼女……華梨に心をひらいている、とも思えるのですが、そうかー、友達の定義がわからないかー。それだと春一もまだまだおひとり様至上主義を極めたとは言えないのでしょうね。彼くらいのレベルになったら、友達が要らない必要ないと拒絶するのではなく、友達がいるけどそれはそれとしておひとり様がいい、でもまあ偶には友達と遊ぶ選択肢もあるだろう、という使い分けが出来るくらいじゃないと。実際問題、現状でも春一は余裕でそれが出来るくらいには至ってると思うんだよなあ。春一っておひとり様至上主義ではあっても、おひとり様唯一主義という周りにバリア張って他人を寄せ付けない、という類ではないんだし。
暇じゃない、充実してるんだ。その気持は大いによくわかる。でもそれは、数ある選択肢の中から独りでいる時間が一番好きだから優先するのが一番満喫できると思うんですよね。おひとり様しか選びようがないから、だといくらそれが好きだとしても、どこかで焦りみたいなものが出てきてしまうんじゃないだろうか。無かった可能性についつい目がいってしまうんじゃないだろうか……。
……なんて書いてみたが、ふと自分に照らし合わせて考えてみると、別に他に選択肢がなくても可能性がなくても、それが好きな時間の消費の仕方なら別に全然満足だよなあ、という結論に達しました、オーバーw
いやでもまあ、春一の場合友達と遊ぶ、という時間をおひとり様時間よりも楽しみの度合いは低いかもしれないけれど、その時間が辛いとかしんどいとかいや、とか感じているわけじゃなくて、相応に楽しいなあ、と思えてるようなので、偶には違うつまみ食いもしたっていいじゃない。それなら、友達が居たって全然オッケーじゃないか。ということで変にハードルあげたり難しく考える必要もないんじゃないかな、と思うんですよね。
なかなか、そういう距離感を維持したまま友達付き合いって難しいだろうし疎遠になりがちではあるんだろうけど、春一がそういう人間だと理解してくれた上でそのブレなさと実際付き合ってみた時の人間的な信頼性を知ってくれているなら、良い付き合いが出来そうなんですよね。華梨と英玲奈はそこに見事にガッチリとハマったわけですし。
それに春一って、一方的に受け身なわけではなく、相手に付き合うときはちゃんと相手のこと考えて色々とやってくれるので、一緒に遊んで普通に楽しい人なんだよなあ。ただ、束縛されることを嫌がるだけで。
華梨も英玲奈も、なにくれとちょっかいかけてくるし無理やり構ってくるのだけれど、春一の自由を無理に邪魔したり侵害したり束縛しようとしないからこそ、上手く成り立ってる関係なのかもしれません。そこらへんのライン、春一は多分かなり明確に線を引いているっぽいのだけれど、華梨も英玲奈もその一線は超えませんし、超えそうな場合はうまいこと妹のゆずを介在させて迂回してるんですよね。家に遊びに来たり、一緒にプールというのは結構際どいところだったように見えますけど、その意味でもゆずの存在ってかなり融通が効く要なんだよなあ。
洞ヶ瀬と瑠璃は、前述の二人と比べたらやっぱり春一とは関係深くはないんですよね。だからこそ、瑠璃なんかはある意味華梨と英玲奈よりも春一と浅層でうまいことやれてる感じなんでしょうし、洞ヶ瀬の方は今回自分のことで色々と手一杯で華梨たちと違って春一という人間に興味を抱いているわけではなかったんですよね。だからこそ、彼女も春一に相談出来たんでしょうし、困ってたら助けることが吝かではないくらいの良い友達関係になれてたんでしょう。
そう考えると、やっぱり華梨と英玲奈はちょっと違う気がするなあ。ただ、華梨の方はほんと純粋に友達!という感覚なのは間違いなさそうですが。
いずれにしても、友達以上を模索してしまうとその人間関係に生じるのは自由の阻害です。恋人関係なんてのはその最たるもので、それはお互いに相手に対して自分の時間を与え交わし続ける関係とも言っていい。それは束縛であり、相手に好きという感情を、場合によってはそれ以外の多種多様な感情を注ぎ続けることを約束した関係なのではないでしょうか。
果たして、おひとり様を楽しむことと恋愛は両立できるのか。ラブコメのカテゴリーに入るだろう本作ですが、この相反する在り方がせめぎ合うところにまで踏み込むのか、それとも敢えてその周辺を回遊するに留めるのか、先の展開が実に興味深い。

1巻感想