【エロマンガ先生 8.和泉マサムネの休日】 伏見 つかさ/かんざきひろ 電撃文庫

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「今日から兄さんは、私と同棲するの」著作『世界で一番可愛い妹』のアニメ化によって不眠不休の生活を余儀なくされたマサムネ。兄の無茶を心配した紗霧は、『開かずの間』での“同棲”を要求する。そうして始まったのは、妹やヒロインたちとの“同棲生活”だった!?同衾、お風呂、家庭裁判!?恋に仕事に、二重の修羅場をなんとか乗り切ったマサムネは、束の間の休日に、様々な思い出を回想していく。『妹やエルフと過ごした休日』『智恵との出会い』『ムラマサ先輩との日々』『マサムネが小説を書きはじめた「きっかけ」』。―そして、『私』が語る、和泉兄妹の過去。シリーズ最大の謎が明かされる第8巻!
これ、ちょうどアニメ化した頃に出たのですか。もうだいぶ前だよなあ。
自分の作品のアニメ化に伴って、莫大に作業量が増えてしまったマサムネだが、その生来の仕事ジャンキーな部分に点火してしまい、自分の体も顧みずに不眠不休で仕事に邁進してしまうことに。
体力的な無茶は若さの特権だけれど、やればやるほどのめり込んで余計に自分で仕事を増やしてしまう、って典型的だな、こいつも。彼の場合、創作活動に限らず普通にサラリーマンとかなっても仕事人間になってしまいそう。
それは結局、紗霧筆頭に家族総出で止められてしまったわけですが、止めたら止めたで途端に色ボケに走るのがここのヒロインたちである。マサムネを休ませる、という体が整ったとみるやすぐさま自分の欲望に負けてイチャイチャしだすんですよね。
でも、この積極性こそが彼女らをヒロイン足らしめているとも言えるのでしょう。その点、奥ゆかしく幼馴染だかクラスメイトだかの範疇を行ったり来たりしながら仲の良い趣味の合う親友、を演出している智恵なんぞ、心地よい友達関係に耽溺してそれ以上を求めないままチラッと匂わせるにとどめている、お蔭で残念ながらヒロインレースからはほぼほぼ放り出されてしまっている。彼女の立ち位置というのは本来の学生が主役のラブコメなら十分以上に有利かつ高品質な立ち位置であり、彼女の距離感身近な友達という関係も普通のラブコメならメイン格でもおかしくないんですよね。
ただしかし、本作ではマサムネは仕事に忙しくて学業には殆ど力を入れていないせいで、普段の生活で智恵と逢う機会もクラスメイトでよく出入りする本屋の娘、趣味仲間という親しい関係でありながらどうしても縁遠くなってしまっている上に、恋敵たるメインヒロインたちは義妹だったり同業者だったりとメインのお仕事関係でも深い仲であるために、機会の頻度が全然違う上に……みんな恐ろしいほどの肉食系積極攻勢型、しかも好きという感情を一切隠さずガンガン推してくる娘さんたち、特にエルフ、であるために、とかく智恵は舞台にあがる機会が殆ど与えられないんですよね、これは致命的。智恵からすると、これはもう色んな意味で相手が悪かったとしか言いようがないよなあ。
相手が悪かった、という意味ではエルフもほんとは最初から負け試合なんですよね。マサムネが小説を書き始めたきっかけ、紗霧が絵をかきはじめたきっかけから、まだ何も縁が無かった頃に結ばれた約束によってすべてがはじまり、やがて結実の果てに再会。しかも同時に家族として同じ屋根の下に住むようになった、とか運命的にも程がある、そしてお互い両思いというつけ入る隙がどこにあるんだ、というマサムネと紗霧の二人。完全に鉄板である。揺るぎのない青信号である。
にも関わらず、怯みもせず食いついて、実際脱落せずに堂々と恋人候補の位置を維持し続けているエルフ先生って、はっきり言って化け物級ヒロインなんですよね。ありえない状況を敢然と現出させ続けているわけですから。すげえなあ、と感心するばかりであり、なんというか途方もなく可愛いよなあ、と呆然とするばかりなのであります。
その手の空気を一切読まないムラマサ先生のマイウェイっぷりもある意味無敵で凄いのですが。

それはそれとして京香ちゃん、この人放って置くと無意識に間違いおかしてしまいそうで、絶対ヤバいな。実の兄に恋して、しかし恋破れた妹その後、を実録してるんですよね。なかなか見ないケースである。彼女の場合、恋した兄も、その兄と結ばれた幼馴染も、仲良くなった紗霧の母も、みんな亡くしてしまったわけで、本当にツライ立場な人でもあるんですよねえ。そりゃ、甥に兄の姿を透かし見て、ちょっと暴走してしまっても……うんうん。

さて、ついにマサムネも紗霧もお互いに契機が来るまでと秘め続けていた真実と想いを打ち明け、一歩踏み出したわけで、これで劇的に今までの関係が変わるのか。次のタイトルが新婚生活なだけに……いや、まだ紗霧さん13歳なんですけど。

シリーズ感想