【百竜殺しと武器屋の幼女 遺跡探索に女の子がついてくるのはなぜだろうか?】 秋月 煌介/ 八葉  MF文庫J

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

「また折れちまった!今月の家賃どうすればいいんだよ!」
“魔獣殺し”と評判の凄腕冒険者、アーヴェイには悩みがある。魔力運用が優れすぎた結果、武器が耐えられず頻繁に壊れてしまい生活費が足りない!さらに外見が怖いせいで相棒ができずに一人、探索をする毎日だった。ある日、偶然助けた武器工房の一人娘、リリーシャ(12さい)に一目惚れされ、なぜか武器工房の用心棒を任されることに。だが、彼女たちの工房は借金で倒産寸前だった!?工房を救うべく、へっぽこ雑誌記者や天才エルフ魔法技師と魔術武器審査会で優勝を目指す。幼女の為、生活費の為アーヴェイは奮闘する!幼女同伴わくわく探索コメディ、ここに開幕!
女子供が泣いて逃げるほどの凶悪な人相の主人公、って設定つけられるとキャラデザインする絵師の人大変だなあ、と毎回思うのですが、本作のアーヴェイくん本気で人相凶悪で明らかに見た目ヤバそうな雰囲気出ていて笑いました。確かに、この人相だと怖がられる!
ただ、殺人鬼というよりもチンピラ兄ちゃんという風情でありますが。
アーヴェイくん、タイトルからして百竜殺しなんて異名がついているものですから、元々すでに竜殺しを成し遂げた英雄かなんかが落ちぶれて場末で草臥れているのかと思ったら、そもそも百竜殺しなんていう異名も単語も本文中に出てこないですし、アーヴェイくん自身は凄腕であっても田舎から出てきて冒険者はじめてまだ浅層で燻っているだけの、何も成し遂げていないまだ誰でも何者でもない無名の若者でしかなかったんですね。
そして、彼に偶然助けられてアーヴェイくんに懐く武器屋の娘、というか武器工房の娘であるリリーシャも実家の工房は潰れる寸前の小さな下請け工房でしかなく、お金持ちのお嬢様というわけでもなんでもない。
これは、そんなまだ何者でもなく何も出来てない二人が、借金で潰れかけている工房を立て直していくゼロからどころかマイナスから頑張っていく物語なのでした。
過去の栄光とか秘められた実力なんかに頼らない、力を合わせて小さな店をもり立てていく話って、これはこれで物語の王道の一つだと思うんですよねえ。まあアーヴェイくん、実力だけはほんとピカイチなので、その本領を発揮する体制さえ整えれば浅層で燻っているような人材ではないのですが。その体制を整えることこそ、工房専属になるという縁だったわけですけど、何気にリリーシャくっついて迷宮に潜るのは結構無理やりだったような気がするなあ。いくらリリーシャが希望しているからといって、こんな子供を危険な場所につれていくというのは、面倒見る方も大変であるのだからして。
でも、早々にサポーターとして迷宮でのサバイバル術などの必要技能や知識を習得してアーヴェイくんを手助けできるようになっていたので、どうしてもソロで潜らないといけないアーヴェイくんにはちゃんと助けになっていたのだから、あながち間違いではないのか。
とは言え、それを許してしまうリリーシャのお母さんのルイーズの判断はやっぱりどうかと思うけれど。この人、いまいち優秀なのかそうでないのかわかんないんだよなあ。経営者として、直接的な金儲けや運営はいきなり夫をなくして一人で切り盛りしなくてはいけなくなった分、知識や経験が浅いので失敗も多かったようだけれど、こと経営という大きな視点から見ると後々のもり立て方を見てもかなりのセンスがあるようだし。ただ娘の扱い方に関しては……あれは可愛い子には旅をさせよ、というたぐいなのか、恋する娘は危険があっても全力支援という姿勢なのか。
……正直言うとね、アーヴェイくん的にはまだ12歳の幼女よりもまだ多分二〇代後半の若い未亡人なルイーズさんの方が絶対お似合いな気がするんですよね。ほら、リリーシャ懐いているのも新しいお父さんに懐いている、という風で片付けることは可能ですし、というかソッチのほうがしっくりくるぞ。ルイーズさんもそんな若いみそらで娘の婿の世話とか考えてる場合じゃないでしょうにw
アーヴェイくん婿に迎えて工房の経営は自分、素材の確保は旦那さんに、という体制にしたほうがね、ほらいい感じなんだよなあ。
まあライトノベル的には、子持ち人妻がヒロインというのは難しいのでしょうが。ましてや母娘丼とか幼女よりもアウト案件ですか、そうですか。

秋月煌介作品感想