【青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる】  刑部 大輔/あやみ 角川スニーカー文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

昼休みに教科書ばかり開いているぼっちの一条純は、青春世界における敗者だ。ある日、“気に入った男は食う”と噂される学年一のギャル・橘かれんに勉強を教えて欲しいと言われ、彼女と二人きりで放課後を過ごすことに。かれんはクラス内でも純に話しかけてくるし、陽キャ集団とは仲良くなるし、何故か彼女とデートすることになるし、あげくに二人が付き合ってるとまで言われ始めて!?
「いろんな噂流れてるらしいけど、あたしキミがいちばん仲良い男の子だよ?」
「ふつーにカッコいいし」
「あたしも同じ。ドキドキが止まんないの」
「こんなの初めて…」
ギャルにかまわれまくって、ぼっちの日常が一変していく!

そりゃあ、お一人様が大好きな奴ばかりじゃないですよねえ。最近、お一人様大好き野郎が主人公の作品を読んだばかりだったので、ぼっちの概念が揺さぶられていたのですが、ぼっちにも色々いるわけです。好きで一人でいるやつもいれば、仕方なく一人でいる人もいる。集団の中に居てもそれがしんどい人も居るし、一人のほうが楽なんだけどやっぱりずっとお一人様が貫けるメンタルは持ってないのでグループの中に居る人もいるでしょう。
この主人公の場合は、一人でいることが寂しいタイプだったんでしょうね。だから、リア充集団と一緒に過ごすようになっても、慣れずにアップアップになりながらも一人でいるよりもワイワイやってることが楽しくて嬉しかったからこそ、馴染もうとすることが苦じゃなかったわけだ。
だからこそ、クラスメイトの一人が自分と同じように嫌なのに独りになってしまいそうになったときに、どこにも角が立たないように手を差し伸べることが出来たのだろう。
いいヤツである。相手は自分に乱暴な言葉を吐いて因縁つけてきた挙げ句に見下して笑っていたやつだった。それでも、そいつの事が嫌いでも、誰かが自分と同じように……もしかしたら自然とハズレていた自分よりも強烈な敵意に囲まれる形で人が孤立するという境遇になる、という事が耐え難いものだったから、その境遇を解消するために動くことが出来た。それは他人を助けるというよりも、自分の嫌なことをやめさせる、という行為だったんだろうけれど、人が追いやられる様子が嫌、っていうのは優しいってことなんだろうし、そのために動けるというのは勇気があるということだ。
かれんは、見る目があったんだろう。彼女が純を気にかけるようになったきっかけというのは、ほんと全然大したことでもなかったんですよね。でも、理由なんてきっかけなんて大したことなくても全然構わないものなのだ。人を好きになることに、意味も理由も必要ない。
これ、タイトルとかからだと「お気に入りになる」とか「かまわれる」という表現で、なんかかれんが純のこと面白がってちょっかいかけてるくらいの好意に思えるんだけれど、見ている限りでは最初から好感度マックス、というか完全にべた惚れなんですよね。少なくとも、一緒に勉強会しているうちにリミット振り切ったのは間違いないでしょう。ある段階から、ちょっと熱病に罹ったんじゃないかと言いたくなるくらい逆上せて、それこそ熱に浮かされたように純に接しだすんですよね。
しかも、態度も中途半端なものではなくちゃんと好き好き言い出すし。
これで男の子の方も平静でいられるはずがなく、感染したように純もかれんに夢中になっていくのである。いつでも、どんなときでも、彼女のことばかり考えてしまう。彼女のこととなると、体中の熱があがっていくように浮かれてく。
もう後半行くと、二人きりで居るとお互い耳まで真っ赤になって熱でフラフラしてるんじゃないか、と思いたくなるようなふわふわとした地に足がつかないやり取りに終始してるんですよね。意識ははっきりしてるんだろうか、理性はちゃんと効いてるんだろうか。恋の熱量に脳がやられて茹だってるんじゃないだろうか、と心配になるくらい。
いや、正直いってこの状態でなんで付き合ってないの? と不思議になるくらい。純の自信のなさと、自分に対しては勇気ないんですよね、この少年。彼女が好きになってくれる自分が信じられない、彼女が好きという気持ちに逆に足を取られて踏み出せずにいる。この段階では完全にヘタレ極まっていると言って良いかも知れない。
かれんの方もギャルのわりにイケイケドンドンではないんですよねえ。いや、十分あれは迫りまくってるし、アピール全開だし、ぶっちゃけ告ってるし、受け身ということは全然ないんですけど、相手の意志をかえりみないような無理やりな強引さは全然ないのである。いや、自分たちのグループに純を引き込んだあたり、強引ではあったけれど。
ともかく、これを尻軽ギャルとか言うのは、さすがに誹謗がすぎるんじゃなかろうか。めっちゃいい子である。
まあ、彼女に限らずかれんの属する陽キャ集団、みんな気のいい連中なんですけどね。最初場違い感満載でアップアップだった純に対しても、邪険にせずコミュニケーション厭わず受け入れてたものねえ。あれ、多少なりとも辛辣な態度取られてたら、最初の頃の他者とのコミュニケーションに怯えてた純では、耐えられなかったんじゃないだろうか。

ともあれ、メインとなる純とかれんの関係はもうお互いに好意の堰が決壊していて、外から水ぶっかけても本人たちまったく気が付かずに濡れた部分蒸気になって乾いてしまいそうな夢中さなので、これあともう結ばれたらそれでハッピーエンドでしょう、という段階なんですよね。
物語の起承転結だと、ここから拗れる展開が大いにありそうなんだけど、なんかそれも野暮だよなあ、と思うくらいにはもう青信号真っ青なので、二巻はさてどうなることか。