【昔勇者で今は骨 4.わたしからあなたへ】  佐伯 庸介/白狼  電撃文庫

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骨になっても心は勇者な冒険者(※ただし骨)が往く、異世界ファンタジー!

『あ~故郷の香りっス~』
かつての愛船・ソカリスヘヌ号を修理するため、北方のオルダネル帝国を訪れたアルとイザナ。
そこで出会ったキメラの少女を救う為、断崖の街ガイムラを訪れたアルだったが、ひょんなことから封印された“神の骨”を探すことに。
いつものお気楽な冒険になるはずが、アルの魂が神の骨に取り込まれてしまったことで事態は急変し――
(あれ? もしかして俺マジで消し飛ばされる五日前って感じ。なのでは?)
骨になっても心は勇者、コツコツ世界を救ってきた最強冒険者もついに昇天!?
うぉお、テンション上がったぁ! 面白かったぁ!!
前回にも増して今回は登場人物も多い上に、各メンツが分散して行動していて場面転換も多かったのだけれど、どちらかというととっ散らかった印象があった前巻よりも遥かに物語として収斂していて、クライマックスなんぞ二箇所同時上映みたいな感じで同時進行していたにも関わらず、ギューっと凝縮された纏まりがあって、盛り上がりにしても燃え上がりにしても満足度充足度が半端なかったです。文句なしに滅茶苦茶面白かった。
というのも、やはり主題が一つのテーマで統一されていた上に、能力の上下関係なく登場人物全員に出番と重要な存在意義があって活躍度に過不足がなかったからなんでしょうね。お蔭であっちこっち場面飛んだり、そのシーンで動くキャラクターが次々と変わっていっても、物語として一点に流れが収斂していっているので、全体として一本の筋として意識が滑らずに集中して深みにハマっていくことが出来て、素直にお話にのめり込んで行けたんですよね。
そこに、話の盛り上がりの連鎖が登場キャラの活躍シーンやテンションを増し増しにする展開が多い分、それが多段加速効果となってたように思います。これはエンタメものとしても構成が抜群だったんではないでしょうか。これのお蔭で読後の満腹感が凄かったもんなあ。

「わたしからあなたへ」。これが今回のサブタイトルだったのですが、まさに今回のテーマはこれ。
受け継がれていく想い。今回のキーパーソンに滅種博ペルゼンという絶滅種の骨を蒐集する人物がいるのですが、彼がまさにその象徴的な人物でもありました。滅びゆく種が居た証としてその骨を蒐集する奇矯な人物。ある意味行き止まりの終焉を担っているような在り方に見えるかの人なのですが、その実はむしろ正反対。彼の真の目的、そして彼のもとに築かれた行き場をなくした希少種たちが集った街の姿は行き止まりの終わりなどでは決してなく、それは潰えて消えていくものを残し、先へと繋げ、届けていくための一つのカタチだったのです。
そんな彼のもとで偶然生じた死体の複合キメラである〇三。幾つもの希少種の亡骸をつなぎ合わせて生み出された彼女は、本来何も生み出さず何も残さず消えていくだけのゾンビという行き止まりの存在だったはずでした。しかし、その肉体に生じた意志は彼女の体を構成する部位である希少種たちのこれまで生きた証の残り香であり、終焉の街で眠りについた彼らの最後の安息の地への優しい思いを引き継いだ魂であり、だからこそアルに導かれて自らの生じた理由とその意味、そしてこれからなすべきことを思ったときに、彼女は気づくのです。終わったはずの自分でも、生きていない自分でも、子供を生むということも出来ない自分でも、自分の中に託されたもの、宿ったものを繋いでいける、受け継いで貰える、先へ未来へと送り出していけるのだ、と。
同時に、それは彼女〇三だけではなく、この物語に登場する幾多の人物にも該当する主題でもありました。それは師弟の話でも在り、姉弟の話でも在り、仮の母娘の話でも在り、船に宿った魂の話でも在り。
そして、そんな人のあり方を、想いの後継を、示された勇を、束ねて集わせて力に変えて先へと繋げていく存在こそ、勇者と呼ばれる者だったのかもしれません。個々の小さな可能性を、背中を押す願いに変えて、束ねて未来を手繰り寄せる力へと成す。
それこそが、勇者アルヴィスの強さであり、ならば今回はあの元竜王ダイスくんも見事に勇者やってたんじゃないでしょうか。
しかしまあ、勇者が想いを束ねてつなげる存在なのだとしても、アルにしてもダイスにしても放っておくとフラフラと人との繋がりを放り出してどこかへ行ってしまいそうな人たちなのですけれど。むしろ、周りの人たちが無理矢理に繋ぎ止めておかないと一人で消えていってしまいそうな人たちなのですけれど。そう考えると難儀な連中だよなあ。まだ人たらんと自分を律しているダイスくんの方がこの場合、根っからの根無し草なアルよりもマシな気もするけれど。無理やり構って丁度いいくらいですもんねえ。
ただし、構うにしてもアルにしてもダイスにしても、階位があまりにも高すぎて、並んで歩くどころか後ろからついていくにも一苦労。だから、凄まじい覚悟と努力が必要になってしまう。
自然と化物クラスの力量が必要になるわけで、ミクトラとハルベルは死に物狂いでそれを成し遂げようとしているお蔭で、無事にイザナやフブルさん級の化物クラスに足を踏み入れつつあるようで、毎度ながらアルたちよりもこの娘たちの方がよっぽど無茶してるような気がするぞ。アルやダイスが持ち得る能力を存分に振るっているのに対して、彼女たちは自分の限界を何度も何度も突破して血反吐を履くことでようやく追いかけているわけですからねえ。
彼女たちですらそうなのですから、秀才ではあっても一般人の範疇であるハルベルの級友であるペリネ、ダステル、ゲルダの三人組は今回ほんと頑張った。あのダイスをして勇を示した、と最大限の敬意を払ったくらいであり、彼の価値観をひっくり返したわけですからね。今回は誰も彼もが大活躍したわけですけれど、MVPはこの三人でしょう。それに、彼らは現状で満足なんかしないでしょうしね。それこそ、ハルベルにだって追いついてくるかも。
あと、なにげに影のMVP、地味に功労賞、あんたが一番、な活躍してたのってデケニーさんだったような気がします。この人、縁の下の力持ちすぎるw
これまでの登場人物根こそぎに登場させ活躍させての、集大成にして総力戦。見事なまでの盛り上がりは、なんか涙出てくるほどの感動すら抱くものでした。これぞ、エンターテイメントの傑作という逸品、心より堪能したぞーー!!

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