【放課後は、異世界喫茶でコーヒーを 4】 風見鶏/u介  富士見ファンタジア文庫

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ここは、この異世界でただひとつのコーヒーが飲める場所。現代からやってきた元高校生ユウが切り盛りする喫茶店だ。いよいよ迷宮街に歌姫がやってきた。日に日に賑やかさに拍車がかかる街の喧騒から離れるように、ユウの店は深夜営業中。そんなある雨の日、ユウは店の裏口に座り込んでいた、真っ白なドレスに身を包む鳥族の女の子ティセと出会う。
「わたし、またここに来ていいですか?」
深夜に集う「ろくでなし」なお客さんたちのなかで、いつの間にか場違いな常連となっていたティセ。どうやら彼女こそ祝祭の主役である「歌姫」そのひとらしく…?

昼は喫茶、夜はバー。ってわけじゃないのに、意外と夜は夜で繁盛してるんですねえ、この店。深夜営業の方で来るお客さん、これはこれで昼間の客とはまた違うタイプが多いのですけれど、なんか居酒屋みたいなノリの人たちが多い気がするんだけれど、ほんとに酒出してないんだろうか。スリの婆ちゃんみたく寛いでるならともかく、あんまりコーヒーと料理でまったりしている、というタイプの客層とも思えんのだけれど。
曰く「ろくでなし」どもである。でも、ほんとにロクでなしなら酒場で一晩中どんちゃん騒ぎだよねえ。でも、さすがに酒場のノリじゃあティセはついていけなかっただろうし、それなりに落ち着いた雰囲気なのだろう、深夜営業の方も。
そして、ろくでなしを自称する客や店主たち相手だからこそ、ティセも自らの境遇から打ち解けることができたのだろう。彼女がずっと抱えていた苦しみを思えば、真っ当にちゃんと生きている人達ちうのはまともに顔も向けられない相手になってしまうのでしょうし。
息を潜めて苦しみもがきながら、それでも必死にあがいていた彼女がきっと初めて心から安らげた場所。ただ年相応に笑っていることができた場所は、正しく生きなくてもダメなままでも咎められない蔑まれないここだからこそ、だったのでしょう。
最後のティセの独白を聞くと、どれだけ彼女が苦しんできたのかが伝わってくるだけにこの店で見せていたほんとに愛くるしい姿がどのようにこぼれ出たものだったのかがわかって、あとからすごく沁みてくるんですよねえ。
ティセとその保護者、お互いに相手を思ってのことだったのにここまで見事にすれ違い食い違ってしまっていたのは、どうしてなんでしょうねえ。なかなか、どれだけ親しい相手でもその本当の気持ちを察するのは難しいということなのか。どうしても、思い込みと自分の中の価値観という楔が柔軟性を縫い止めてしまうのでしょうか。特に、かの御仁は偉大な人物である以上、外部から何かを言われるということが極端に少なくなってしまっていたのでしょうし。
正直、喫茶店のマスターとしてはユウのあの客に対して踏み込みすぎるスタンスは、経営者としてはダメなんだと思う。それは客に対する接し方ではなく、誰に対しても友人に対する接し方であり、ただの友人では済まない入れ込みようなんですよね。これが、そうそう商売として客商売として成り立っていくものかは疑わしい。
ただこれは異世界喫茶。ユウはこのスタンスでこれまでやってきて、それが受け入れられ多くの贔屓客を得てやってこれたわけですから、これはこれでいいのでしょう。
ただ、唐突に知ることとなってしまった、自分以外の異世界からの来訪者の存在とその行く末。それが自分の身に同じような形で降り掛かってくる可能性を、この世界に歩み寄り、この世界の人間に踏み込んで、多くの人たちに受け入れられたからこそ、彼は受け止めることが出来るのか。
なかなか難しい問題提議がなされてしまったなあ。

あと、やっぱりこの店は音楽流してた方がいいよ。BGM無しはちょっとどうよ。

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