【魔術学院を首席で卒業した俺が冒険者を始めるのはそんなにおかしいだろうか】 いかぽん /カカオ・ランタン  ファミ通文庫

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魔術学院を首席で卒業したウィリアムには高給と安定のエリート街道が開かれていたのに、彼は自由と可能性に満ちた冒険者の道を選ぶ!盗賊、神官、侍の少女三人とパーティを組むことになった彼は、駆け出し冒険者の水準を遥かに凌駕する高い魔法能力と、頭脳的かつ実践的な戦い方で、軽々とギルドのクエストをこなしていく。更に彼は、魔術師を超える導師の称号すら持っていて…!?実力派の冒険者少女もタジタジ、凄腕魔術師の冒険譚、ここに開幕!

国内の最高学府を首席で卒業、というのはそりゃもう凄まじいことなんだけれど、逆に言うとそのレベルの人は毎年一人は卒業してくるし、同程度の人間は上位十名くらいを範疇としても数年で何十人と出てくる程度なんですよね。つまり、チートな能力を持った特別な人間でも世界で五指に入る実力者というわけでもない、ある意味常識的な範疇に入るエリート、というくらいの人間なんですよね、この主人公。
……いや、ぶっちゃけリアルだとそのレベルの人は本気で「バケモノ」なことも全然珍しくないのですけどね。エリートって本来やられ役なんかじゃなくて本気で凄い連中なんだぞー。
とはいえ、所詮学生での首席レベル。現場に出れば机上の勉強とは異なる実践についていけない、なんてことはザラにあるのですが……。
このウィリアムくん、なんちゅうか実践派すぎるんじゃないだろうか!?
派手だったり強力な目立つ魔法や、莫大な魔力、高度な術式に基づくなんていうんだろう、特別であることを全面に押し出しての圧殺という方法じゃなく、彼が取る手段というのは睡眠魔法でモンスターを眠らせて安全に処理する方法だったり、事前に先の地形や敵情を偵察することの出来る遠見や透視魔法によって完全に主導権を握ってから行動するようなやり方だったり、地味なんだけれど玄人好みの方法ばかりなんですよね。
いやそりゃもう安全マージンを確実にとって、危険を極力排除し、出来れば戦闘前に勝利を確定させられる優位を確保して、という支援と補助を優先した戦闘というのはもう文句の付け所もないのですが、それを新人の身で出来るというあたりにウィリアムの地に足の着いた姿勢が鑑みれるわけです。
そこまで地に足がついているなら、そもそも冒険者にならずに宮廷魔術師として安全で高収入で仕事としてもやりがいのあるだろう政務関係に入ったらいいじゃないか、と思う所なんですが、何事も効率ではなく、夢を追うという若者らしいあり方を忘れてないあたりが、彼の面白いところなのでしょう。
そういう効率重視だけれど絶対視をしていなくて、情や自分と異なる価値観や考え方も尊重するというあり方は、組むことになったパーティーメンバーとの間で育まれていく信頼関係の中でも大きく作用してるんですね。頭でっかちでもなく、自分の考えが正しいと考えているわけでもないので、人の話はよく聞きますし、自分の節を曲げることになるケースがあってもそこに理があるなら、その理由がその人にとって大事なことであるのなら譲ることに躊躇いのないおおらかさみたいなものもありますし。
なによりも、彼の美徳としては人を褒めることがうまい、というのがあるのでしょう。それもおべっかや建前ではなく、他人の良いところを目ざとくみつけて、それを嫌味なく褒め称えることが出来る。
いやね、褒められるってどんな形でも人間嬉しいものですし、頑張ろうって気になるんですよ、これが。それでいて、他人を褒めるのって案外難しかったりするんですよね、これ。
多分、ウィリアムはそれを自然に出来る青年なんでしょうね。彼の数ある長所の中で最たるものがもしかしたらこれなのかもしれません。お蔭で、彼を慕いまた可愛がる人は老若男女問わない多岐に渡る模様で、人脈の広さがえらいことになっている。
これって、父親が反面教師になっているのかもしれませんけどね。逆にあの対人関係壊滅的だろう狷介な性格の父親が魔術師の筆頭やってるあたり、それだけ能力ずば抜けてるんだろうな、と想像もつくわけですが。まあそれだけではないのは、彼の峻厳さが自分自身もまったく守っていないあたりに垣間見えるのですが。でも、ああいう在り方って敵しかいなさそうだけどなあ。

ヒロインたちはまあ、確かにチョロいとは思うのだけれどあの子らはあの子らであんまり褒められたこともなさそうだし、自分の能力や成果を正当に評価してもらい称賛してもらえる、というのはほんと、思いの外グリグリと心をくすぐるものですから、多少チョロくなってしまうのもわかるんですよね。まあ、さつきはあれ極端だと思いますけれどあのキャラ、チンピラ系純情乙女だからなあ(苦笑