【幼女戦記 4.Dabit deus his quoque finem.】 カルロ・ゼン/篠月しのぶ  エンターブレイン

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世界を敵にまわして、幼女は戦う

愛くるしい幼女の外見をしながらも『悪魔』と忌避されるは、帝国軍の誇る魔導大隊指揮官、ターニャ・フォン・デグレチャフ魔導少佐。

砂塗れの南方戦線から帰還するや否や、待構えていた参謀本部より彼女に発令されたのは、胡散臭い『演習命令』。それは、連邦領への極秘裏に遂行される越境作戦。

そこで目の当たりにしたのは……誰もが、ありえないと信じて疑わなかった連邦の参戦。その幻想は、放たれる列車砲の一弾と共にかき消される。

帝国は、戦うしかない。世界の全てを敵に回しても。もはや勝ち続ける以外に道はない。その先にあるのは不朽の栄光か、栄光の残照か。答えは、ターニャ・フォン・デグレチャフだけが知っている。

既に西部戦線を整理しきれず南方戦線を開幕してしまった時点で国力の限界を突破してしまい泥沼の状況へと突入したという危機感をこれ以上なく何度も何度も繰り返し言い募っていた上での……東部戦線の開幕である。
いやもう、これ完全に詰みでしょう。既に、合衆国も参戦を前提とした物資の流入に義勇兵の派遣、というところまではじまってしまっている段階で、デグさんとっとと店じまいして逃げ支度を始めるべきなのだろうに、まだ生き残れる目があると判断してしまっているのは組織内でこれまで投資し続けていた努力を無駄に帰するのを惜しんだか、それとも愛国心でも湧いたか部下に情でも湧いたか。後者2つは笑い話にもならないのだけれど、でも内心肉盾扱いだった部下たちを今では随分と慈しむようにもなっているので、自分で思っているほどデグさま冷徹でもない気がしないでもないのだけれど。
連邦の参戦は、幸か不幸かWW兇砲ける共産ソ連へのドイツ側からの奇襲ではなく、共産連邦側からの奇襲となったわけだけれど、予想していなかったわりに素早い帝国側の戦力投入と、粛清によって弱体化していた赤軍、さらに開戦冒頭にデグさまが部隊引き連れて連邦首都を急襲してやりたい放題やった影響で戦線は膠着化。いきなり前線が瓦解しなかっただけでも幸いなのかもしれないけれど、それでももう本当に無い袖は振れない状態になっちゃってるんですよね。あのゼートゥーアさんがこれほど言葉を尽くして、出涸らしも出ない!と言い切ってしまうのはよっぽどですよ。ルーデンドルフ将軍も、ツーカーの仲なんだからそれはわかっているだろうに、それでも戦力を絞り出させようとするのはどうしたって前線で戦う将軍のサガなんだろうか。後方の視点も多分に持っている人のはずなんだけれど。逆に言うと、ルーデンドルフ将軍がそれだけ無理を強いようとするくらいには、それくらいしないと戦争自体がどうしようもない瓦解を迎えてしまう、という認識を持っている証拠なのかもしれない。
つまるところ、言葉は違えど二人ともこれはもうあかん!と言ってるようなものなんですよねえ。
それでいて、戦争自体を終わらせる手段については今回二人から一切聞かれなかったのはなんとも身につまされる。逆に、デグさんからは連邦との戦争は妥協の余地のないどちらかが滅びるまで終わらない戦争だ、という見解まで示されてしまったわけで。
デグさままだ若いどころか幼女なんだから、また一から始めても十分お釣りが来ると思うんだけどなあ。
ただでも、戦況がどうしようもないことになっている、という意外ではデグさんの置かれた環境って上司も同僚も部下も大きな意味での軍組織も理想的、と言っていい環境なだけに捨てがたいというのも非常にわかるんだけれど。いやまあ、ゼートゥーア将軍は凄まじい無茶振りを喜べとばかりに投じてくるブラックもいいところな上司なのだけれど、でも彼のブラックさを引き出しているのはデグさん自身の黒さと見通しの甘さなわけですから多分に自業自得だしなー。
そもそも、サラマンダー戦闘団の結成過程とか、それ以前の独立魔導大隊構想でデグさん自分同じことやらかしてたじゃないですかー。そういう新基軸の戦闘単位を提案したら自分が実証のために創設して指揮するはめになる、と学んでいなかったのでしょうか。完全に同じパターンだし!
まあ以前と違って、十分な訓練期間なしに速攻で作って速攻で前線投入、なあたり余計に酷いことになっていますが、どうやら構想案で自分で即席で編成するよ、と書いちゃってたみたいだし、だから自業自得だよー。
だから、猫の手も借りたい戦力不足兵力不足精鋭不足が極まっている状況で、理想的な軍人にして英雄的な戦果をあげつづけているデグさんを手放すはずがなかろうに、そのへんデグさん自分の評価をどう考えているんだろう。過小評価する人ではないと思うんだけれど、どうにも周囲の評価に対して自分の評価の質というか方向性が根本から異なってるのかしら。
ゼートゥーア将軍との会談にしても、言葉は通じて会話も成り立っているのに妙に意思の疎通が出来てないような感じだったもんなあ。アレに関しては、双方ともそもそもの前提が違うにも関わらずそれを踏まえて話しているので、妙な齟齬が付きまとうのは当然なんだが。

あと、ついにあのメアリー・スーと直接交戦。この段階では普通にデグさん悪役で、メアリーは父の仇と遭遇した可愛そうで勇気のある少女兵って感じなんですよねえ。
ロリヤさん的には、デグさんなんかよりもメアリの方がストライクな気がするんだがなあ。ってか、ロリヤさんって名前がダイレクトすぎやしませんかね、ほんとに! そこまであからさまでいいの!? 政敵に粛清材料にされたりとかしないの!? まあ一番偉い人公認っぽいので、責められないのかもしれないが。

シリーズ感想