【異世界最強トラック召喚、いすゞ・エルフ】 八薙 玉造/bun150  ダッシュエックス文庫

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それなりにコミュ症で異世界に憧れる女の子、ナギはある日、本当に異世界に迷い込む。
「異世界だここ! やったー!」
ナギは国の興亡すら左右する最強の召喚魔法を身につけていた。その力は襲い来る竜を一蹴する!
トラック召喚。いすゞの小型トラック――ELFを喚び出す力。
「なんか思ってたエルフと違う!? これじゃない!?」
愕然とするナギだが、ネコミミ美少女勇者アラシとの出会いを経て、(トラック召喚で無双するとかじゃない)理想の生活を目指し、トラックで異世界を奔走する!
いすゞ自動車容認! トラック召喚ファンタジー! のんびり幕を開けました。
これはズルいですよ! もうタイトル見た瞬間に笑っちゃったじゃないですか。異世界ファンタジーと言えばエルフ! エルフと言えば、あの耳が尖っていて不老長寿で神秘的な森の妖精種族。日本でもっとも有名なファンタジー種族といえるでしょう。
しかし、業界が異なればまた事情も異なってくるもの。エルフと言えば、自動車業界運送業界で言うならば、微塵の疑いもなく「いすゞエルフ」との答えが返ってくる、それくらい有名で巷に溢れている小型トラック、それがいすゞ・エルフ!
いやマジでちらっとでも調べてみると、2トンクラスのトラックって半端ない比率でエルフが占めてますよ?
でもさすがに、ヘッドライトを照らすとビームとなってドラゴンを吹き飛ばすようなエルフトラックは見たことがありませんが。
異世界最強の召喚術が、まさかのトラック召喚ということになっている世界に招かれてしまった少女ナギ。別にトラックにもいすゞエルフにも縁があるわけでもないのに、トラック召喚士になってしまった内気な少女が主人公なのですが……トラック召喚士という語感だけで笑う。トラック運転手の亜種にしか聞こえないw
そして、付与されたこの世界のスキルにあたるクラフト呼ばれる技能「エルフの知識(トラック)」によって語られるいすゞエルフの様々な薀蓄! かつて、ここまで小型トラックの歴史とスペックと能力が語り尽くされたライトノベルがあっただろうか、というくらいに力説されるいすゞエルフ! これを読めば、いかなる人も「いすゞエルフのD-COREってすげえ」とため息をつくだろうくらいにやたらと推されるいすゞエルフのクリーンテクノロジーの粋が集められた環境に優しい排気量を極限まで抑えたエンジン「D-CORE」。
いや、ほんとにやたらと強調されてるんですよ、「D-CORE」w
そして、唐突に習得しているクラフト「準中型自動車免許」。……最近の異世界ファンタジーだと自動車免許もチートで習得できるのか、それは凄いな、それは羨ましいな。教習所にも行かず、飛び込みで運転免許試験場で試験を受けずとも、私有地で運転を練習しなくても取得できるんだから、さすがチート。ってか、女子高生なのに「準中型自動車免許」を持ってるのって、フィクション含めてもあらゆる媒体でこのナギちゃんだけだろうな、うん。ちなみにこの準中型自動車免許って、普通自動車免許を先に取得していなくても、18歳から取れるようで。最近、色々と自動車免許制度は細かく変わっちゃってるんだよなあ。自分らの頃は普通自動車免許とったら4トントラックくらいまでは乗れたんだけれど。大型免許もだいぶ簡単に取れたんだけどねー。
ちなみに、エルフタイプの2トントラックは自分も乗ったことがありますが、下手すると普通乗用車よりも乗りやすい場合がありますよ。車体の長さと後方確認の難しさ、という難点もありますけど、ミラーは見やすいですし、何気にトラックとかダンプって普通車よりも曲がりやすいので。
ってか、エルフの歴史語りを聞いてたらこのいすゞエルフって初代は1950年代に登場してるって話じゃないですか!?
ちょっと待って? そんな昔からいすゞエルフって存在してたの!? 本邦においてエルフが周知されだしたのって、1970年代に出た「指輪物語」あたりからですし、本格的に認知が広がったのは1988年の【ロードス島戦記】シリーズのヒロインであったディードリットがきっかけだった、というのは有力な説であります。
でも、それでも指輪物語でいすゞエルフよりも20年。本格的に知名度が広がるディードリットとなると30年もあとの登場となるわけですよ。
ということは、もしかしてこの作品にも登場する1959年に登場した初代モデルのいすゞエルフこそ、日本最古のエルフとなるんじゃないですか!?

日本最古のエルフ!!

すげえぜ、いすゞ。あの時代にどこからエルフなんて単語持ってきたんだろう。
と、D-COREぱねえっぜ!など、エルフに関して随分と詳しくなってしまいましたが、物語の方はというと……実のところトラックの扱いには結構難渋してたんじゃないだろうか、これ。
いやさ、いきなりトラックで敵集団のど真ん中に突っ込んで、引きまくってやるぜー、的なことはいすゞさまから許可受けて名前出して書いちゃっている以上それはアウトな展開ですし、だからといってじゃあトラックで何するのさー、となると……。
いやさ、実のところトラックの本懐であるところの運送運輸や後ろに架する荷台部分も冷凍やら色々と特殊なものもあるので、それを取っ替え引っ替えして使ったら面白いやりようはあったようにも思うのだけれど、何しろトラック最強(物理)な世界だっただけにトラックを実際にどう扱ったらいいか出し所使い所が難しい状況になってしまってたところはあると思うんですよね。
肝心のトラック召喚士となってしまったナギが、そのあんぽんたんなスキルを縦横無尽に使ってしまうアーパーな娘だったら、色んな意味でシッチャカメッチャカに出来たんだろうけど、この娘からしてちと引っ込み思案であると同時にトラック召喚ってなんなのさー、というネガティブなツッコミを入れるのに忙しいタイプだったので、トラック召喚というネタをなんでもありのやりたい放題やり倒せる武器として振り回せなかったんですよねえ。おかげで、小ネタや掛け合いのキレに関しては、実績のある作家さんらしく面白さがついてまわっていたのですが、大きな物語としての面白さに関してははっちゃけが足りなかったかな、と感じる部分もありました。
その分、中盤から登場人物が主人公含めて全員女の子、というところをいかしたように、やたらと百合百合しい女の子同士の友情モノ、かなり女の子同士でイチャイチャしてるようなキュンキュンしてるような展開になっていたのは、これはこれでご馳走さまでした!

八薙 玉造作品感想