【きれいな黒髪の高階さん(無職)と付き合うことになった】 森田季節/紅林 のえ  GA文庫

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「失敬な。私はプロのニートだ」
「プロというのは、お金をもらう立場のことだろ」
「私はちゃんと親から毎月、お金を得ている」
「違う! そういう意味じゃない! 」

サークルにも行かず暇をもてあました京都の大学生、日之出は学内でミステリアスな女性に出会う――。
しかし、高階さんというその女性は学生ではなく、ニートだった!
そして、日之出が暇であることを看破した。
「なら、ちょうどいい。私と付き合わないか?」
森田季節×紅林のえが贈る、無職と大学生のスローライフだらだらラブコメディ!
付き合ってないじゃん!!
いやタイトルからして、無職と男女交際はじめました、な内容だと思いますよね、よね?
付き合ってないじゃん!!
確かに、高階さんの暇つぶしに付き合うようになったわけですから、間違っていないですけど、違うくはないですけど。
無職と付き合うというと、そりゃ相手が男か女かの違いはあるとはいえ収入のない相方をヒモとして養っていくような、色々と世知辛い男女交際についてのお話か、なんてものなのかと思ったのですが。
就活に追われる前のモラトリアム期間な大学生活スローライフ、なお話でした。色恋のビビッドな駆け引きなどは殆どなく、がちんこでダラダラしているだけのお話、というには少し意味深なところがあるか。
大学生活というのは、中学や高校時代の学生時分とはまた全く異なる時間の流れや人間関係が生まれていく期間であります。勉学に費やすそれとはまた異なる、無為のような有為のような消閑の日々。それは、もしかしたら何もしてないニートと親和性があるのかもしれないけれど、大学に所属している・ある一定の期間をすぎれば社会人にある、という敷かれた線路の上にいるという意味において、ニートとはやはり決定的な違いがあるのでしょう。
ニートとは、現実から逃避するか決然と生き様として貫くという以外に成しえない立ち位置ですし。
そんなニートの中でも、高階さんは確固たる決意を以って働かぬ!という生き様を貫こうとしている女性。だからこそ、その消閑にはニートなら常に備え持つだろう後ろ暗さや焦燥感、罪悪感や居場所の無さに狼狽えるような後ろ向きな気持ちは微塵も見当たらない。
無論、ダメな生き方である。しかし、自分だけの時間の使い方として、これほど贅沢なものが果たして他にどれだけあるだろう。私も、将来はこんなニートになりたい。
しかし、高階さんは高段者のニートではあっても、他人を必要としない一人を楽しめ孤独を苦痛に思わないというタイプのニートではないんですよね。でなければ、タダ飯狙いとはいえサークルの新歓なんかに紛れ込まないでしょうし、日之出くんをあんなふうに自宅に招くことだってなかったでしょう。寂しさを我慢できるとしても、我慢している時点で求めているものはあるということ。日之出くんは、それをとびきり優しく埋めてくれる人だったのでしょうな。
高階さんが、彼のことをどれだけ大切に思っているかは、彼女の価値観の中でもっとも尊く譲れないものを、彼のためならば躊躇いなく消費してしまえたところにも見受けられます。彼女の生き様ともいうべきものを費やして、いやそれだけ自分の誇りであり根幹であったものだからこそ、日之出くんのために費やすことでそれがどれだけ価値あるものなのかを証明したかった、というのなら随分とぶきっちょだけれど可愛い女性じゃないですか。
それもまた、一つの献身なのではないでしょうか。
まあそれも、高階さんが自分がニートであることに至上の価値を見出しているからこそ、なのですが。間違っても、日之出くんのために主義を捨てたわけでも生き方を変えたわけでもないところは忘れるべからず。
しかし、どうして大学生モノ、特に大学生活というところにスポットをあてた作品となると、舞台が京都になるケースが多いんでしょうね。いや、実際多いのかどうかは定かではありませんけれど、印象に残るとなるとやはり京都が舞台というのが多い気がするわけで、それだけ大学生のメッカなんですかねえ、京都。

森田季節作品感想