【お迎えに上がりました。 国土交通省国土政策局幽冥推進課】 竹林 七草 集英社文庫

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入社式当日に会社が倒産し、路頭に迷った朝霧夕霞。失意の中立ち寄った公園の掲示板で、国土交通省の臨時職員募集の貼紙を見つけ、藁をも掴む気持ちで応募する。不可思議な試験を経て採用が決まったが、そこは「幽冥推進課」。国土開発の妨げになる地縛霊などを立ち退かせる不思議な部署で、同僚は全員妖怪。しかし好待遇に心惹かれた夕霞は、働くことを決意し…。あやかしお仕事小説、開幕!
ガガガ文庫から出された【猫にはなれないご職業】の竹林七草さんの新シリーズ! と言っても、本作の刊行日は2017年の8月末なので、ほぼ一年半前の作品になってしまうのですが、【猫にはなれないご職業】自体2012年の作品なので結構間開いてるんですよね。いや、合間にもう一作出してらっしゃるのですが、そっち積んだまま読んでなかったんだよなあ。
ともあれ、【猫にはなれないご職業】。これがまたべらぼうに面白くて、陰陽師モノではあったのですが登場人物の内面をこれでもかと掘り下げていくスタイルで、軽妙でありながら読み終わった時の満足感たるや大長編を読み切ったようなものがあったんですね。
そんな作者さんの新シリーズである本作は、再びにゃん子先生を相棒とした地縛霊を説得し、あるいはその未練を解消して成仏させていく霊能モノ。とは言え、主人公の夕霞は霊能者などではなく、自分に霊感がある、見鬼の力があるなんてまるで知らなかった一般人。なので、除霊ならぬ成仏業務も体当たりの体力勝負。しかしこれが一筋縄でいかない案件、幽霊さんたちばかりで、というご内容。
いや、出てくる幽霊さんたちがまたありがちな「ひゅ〜どろどろ」なおどろおどろしいホラーな感じでは全然ないんですよね。夕霞も現場に向かうまではビビリまくっているにも関わらず、実際に出てきた途端に恐怖が引っ込むような登場の仕方ばかりな幽霊さんたちなんですよね。
とりあえず、皆さん死霊のくせにテンション高すぎなのである。死んでる自覚がある人もない人も。
一番落ち着いていたのは、最初に出会った人くらいなのですがこの人もこの人で、死んでる自覚があるくせに、未練あって地縛霊になっている人のくせにやたらと理知的で話しやすい幽霊だったんですよね。だからこそ、彼女を「見た」人、出会った人たちはみんな彼女が幽霊だと最初気づかなかったのでしょうけれど。
で、気づいてしまったにも関わらず、親身になって彼女の未練を果たそうと身を挺して頑張ってしまうのが、夕霞だったわけで。これ、幽冥推進課の職員になる前の話なのですよ。自分、無職になって大変なときにも関わらず、実際生活かなりピンチな状況で就職の面接に来たというなかなか一杯一杯だったときにも関わらず、生きてすらいない幽霊のために頑張れてしまう夕霞という主人公の、気合の入った人情家気質がまた温かくて心地よいのである。
こういう人だからこそ、見込まれてしまったとも言えるのでしょうけれど。
二話なんか、あれはもう貰い泣きしてしまいそうになりましたよ。現実には何も変わってないのかもしれない、それでもどれだけ救われただろう。これまでの悲しみ、苦しみが拭われただろう。
死んだ人だけではなく、今生きている人にも安らぎを与えてくれる、素晴らしいお仕事でした。
三話なんか、また小粋な結末なんですよね。課長もにゃんこ先生もいい仕事しますわー。
新人にして一番の下っ端として、ひたすら体力仕事に追われる夕霞ちゃんですが、なんていうんだろう、その心意気といい気風といい、苦労してきた分土台が大きい人物感があるんですよね。若いときはこうバリバリ働きまくっているけれど、これ十年二十年したらその筋では知らない者のいない界隈の大ボス、みたいなのになってそうな将来性すら見えてきそうです。
今はにゃんこ先生をリュックに背負って、いいようにこき使われ、何だかんだと助けられ助言され叱咤され褒められ慰められ、と至れり尽くせり猫にしていただいている現状ですが、猫とOLの実に良いコンビです。
じんわりと心を掴まれ、感情を揺さぶられ、ほっこりと温めてくれる素敵で味わい深い物語のはじまりでした。


竹林七草作品感想