【黄昏の騎士団、蹂躙、蹂躙、蹂躙す】 あわむら赤光 /夕薙  GA文庫

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裏城紫苑は余命少ない末期患者の少年。生きる楽しみを何一つ知らず死にたくないと、闘病を続ける姿が、天上界の姫エミルナの目に留まった。
「適格者よ。我が“不死の騎士公”となり、君が求む快楽を探すといい」
不滅の肉体と、『他者にも不死性を与える』規格外の力を得る紫苑。そして、彼が見出した喜びとは―エミルナの右腕として無敵の軍団を結成し、地上を支配せんとする天上界の王族を殱滅することだった!
「強くなって悪い奴らを踏みにじる。これより気持ちいいことってある?」
不死の暴力。不滅の純愛。今、灰色だった人生への大叛逆が始まる!正義を娯楽とし圧倒的な力で為す独善懲悪バトルパレード、開幕!!
これはまたぶっ飛んでぶっ壊れた主人公だ。でも人間として異常であり破綻していて壊れていても、人間性という部分においては真っ当で物事の善し悪しについても純朴で、他人の感情の機微についても敏いものだから、独善懲悪なんて自ら謳いながらも不快ではなく好感の持てる少年なんですよね。作者のあわむらさん、こういう規格外の一方で感性真っ当な孤立しない主人公描くのうまいなあ。
エルミナ姫も、あらすじ見ると偶々出会って適格者だったので拾い上げました、みたいな感じですし傲慢なお姫様っぽく見えるんですけど、それどころか行きずりの犯行ではなく、何気に何年も紫苑のもとに通って闘病生活を支えてたんですよね。それも、逃亡生活で本来なら一処に留まることすら危険なのに。長きに渡って紫苑の闘病を、終末治療を拒んで苦しみ抜きながら生きることを諦めようとしなかった彼の足掻きと絶望をずっと見続けていたからこそ、献身的に介護し続けてきたからこそ、言えるセリフがあるというものです。
これは間に割って入るの難しい主人公とメインヒロインの一途な関係ですよ。
不死となり、あれだけ自由闊達に振る舞いながら、いざお姉ちゃん属性を振りかざすエルミナにはついつい弟気質が出てしまって、エルミナにうまく迫れなくてジタバタしている紫苑くん、あのお姫様に対してだけ初心でぶきっちょな姿は、別にショタじゃないのだけれど妙に可愛らしくて心擽られるものがありますなあ。
何気にダダ甘お姉ちゃんな姫様も、これはこれで実に可愛らしいのですけど。なんとも微笑ましいカップルなのです。
しかし、一方で敵に対しては死んでも死んでも瞬時に再生して、ニコニコと満面の笑みを浮かべながら迫りくる不死身の怪物さながらで、この盛大にぶっ壊れた精神性こそがキモなんでしょうなあ。普通に怖いもんね!!
とはいえ、不死身とはいえ決して無敵ではなく、封印などの術によってあっさり無力化されかねない可能性は一番最初の戦闘から提示されていて、これ何気に一番最初の戦いこそが最大のピンチだったんじゃないだろうか。というわけで、不死そのものが無敵の理由ではなく、不死の体、そして将棋のように相手の駒を不死にして自軍へと取り込むその能力、そして不死身という特性を存分に利用し尽くした死を全く恐れない理外の戦術策謀こそが、この紫苑の蹂躙劇の要なのである。
でも、もともと死に慣れていると言っていい紫苑と違って、後から仲間になるみんなはそこまで死に瀕するような状況に陥ったこともないだろうに、何気にすぐに身体が原型トドメないほど損壊するような死に様晒してもすぐにもとに戻る状況に適応してるの、果たして彼らが凄いのか不死になったことで彼らも何かが壊れたのか、微妙に恐ろしいところである。一度死ぬたびに人格やらが徐々に欠損していく、と最初から明言されているのでみんなもう少し気をつけて死のうよw
しかし、紫苑くん。あんな境遇でいながら性格壊れはしても歪んでないのは凄いなあ。もっと世界を憎み嫉み負の感情を拗らせていてもおかしくないどころか死んだら怨霊になっても不思議じゃない有様だったのに、常に前向きでプラス思考なんですよね。だからこそ、死に抗い続けられたとも言えるのでしょうけれど。あるいは、それだけエルミナの看護が心の支えになり続けていたのか。
それを言うと、渚なんかも酷い境遇で理不尽を強いられ続けていたのに、根っこはものすごくイイ子であり続けていたのは何とも微笑ましい。いや、境遇相応に性格ひねちゃってるんだけれど、そこから善良さや優しさが滲み出てくるのって、やっぱいいんですよね。ただまあ、紫苑はエルミナに一途も一途だから、報われなさそうなのは可哀想なところだけれど、これに関しては最初からバッサリされているので、ある意味後腐れはないのか。でも、姫様の悪口言うと紫苑にセクハラされる、という取り決め、悪用するとえらいことになりそうだぞ。渚ってむっつりっぽいキャラだしw 紫苑って、変なところで頑固だから一度決めたことは自分に都合悪くても曲げないだろうしw

あわむら赤光作品感想