【魔王の娘だと疑われてタイヘンです! LV.2 今度は聖王の娘だと疑われました!】 姫ノ木 あく/よう太  GA文庫

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「これは……!?」
エリナの家へ向かっていたカナーンは、立ち止まり地面を見つめた。まだ新しい馬の蹄の跡や、馬車の轍がそこにあったからだ。
「まさか、エリナを狙った何者か!? でも『名もなき勇者』がその辺の盗賊に負けるとは思えないし……」
気配を殺しそっと屋敷へと近づくカナーン。すると大きな悲鳴が――。
「エリナっ……!!」
「か、カナちゃん! 助けて……! 」
そこに居たのは賊――などではなく、艶やかなプラチナピンクの髪を二つに束ねた愛くるしい少女で!? この娘はいったい誰!? 魔王どころか、今度はなぜか聖王の御子と間違われ――熱い友情パワーの第2弾!!

尊い! なんかもう尊い!! 女の子たちのお互いを想い合う友情が、その一生懸命さが本当に尊い!
まだ大人になりきっていない子供だから、少女だからこその、目の前のことに全力な姿がキラキラ輝いてるんですよね。遊ぶのも全力、勉強するのも全力、当たり前の日常を当たり前に過ごすのも全力。特に主人公のエリナが何事もニコニコと目一杯という子なので、幼馴染のフランも新たに友達になったカナーンも、エリナについていくために全力で走らないといけないのだけれど、そうして息を切らせてエリナと時間を共有することが楽しくて仕方がないという様子なのである。
これをこそ、黄金の日々というのでしょう。大人になってから振り返って、さながら宝石のように思い返すようになる思い出を作っているさなかの日々。
そんなエリナのことが癪に障ってしかたなかったペトラも、前の事件で彼女の全力に助けられ、エリナというキラキラ輝いている子に惹かれてしまい、でも素直になれずに煩悶しながらままならない距離感に七転八倒している姿もまた、ペトラという子の全力疾走なんですよね。
本作のよいところは、そんな子供たちの一生懸命さを大人たちが、保護者たちがちゃんと見守ってくれているというところ。リクドウたちって、エリナたちにまったくといっていいほど干渉しないのだけれど、それでいて放置しているわけではなく、ちゃんと彼女たちを庇護していて、それでいて子供たちが自分で考え自分で悩み自分たちで答えをだそうとしている事には余計な手を出そうとしない。子供たちのことをちゃんと信じて、尊重してくれているのが伝わってくるのです。
こういう大人たちの姿は、見ていて本当に安心させられます。
でも、本当に危なくなったら、子供たちのキャパシティをこえる事態になったらちゃんと助けてくれる。まあ前回の事件も今回の一件も子供たちが負うべき危険の範疇を明らかに逸脱したピンチに見舞われていたのも確かで、万事もと勇者たちの手のひらの上、というわけにもいかないんですよねえ。
それだけ、エリナたちの出自が関わる問題が深刻であり、今の穏やかな生活がそろそろ本格的に砂上の楼閣になってきた、とも言えるのかもしれませんが。
変わりゆく状況に翻弄されるのは、人間関係もまた同じ。エリナ自身は何が起こっても何も変わらないし、幼馴染であるフランとの関係だって何も変わらない。そう信じようとしながら、でもカナーンという友達が今まで二人だった関係の中に入ってきて、他にも目まぐるしいトラブルが自分たちのもとに舞い込んできて、でもそんな嵐の中をエリナはカナーンとともに颯爽と駆け抜けていく。果たして自分はこのまま大好きな幼馴染についていけるのだろうか、今までのように一緒にいられるのだろうか、という不安がフランを揺さぶっていく。まだ幼い少女にとって、自分のキャパシティに収まらない急激な変化はやはり負担だったのでしょう。太陽のように明るいエリナに照らされ、温かい気持ちになるのは今まで道理だったとしても、その強い日差しに眩んでしまうときだってある。日の当たるその足元には影がおちていくというのが必定。
揺れる少女の不安感、絶対的に信じられる友情を信じられなくなってしまう不安定さ。友情に悩む、というそんな姿もまた、キラキラと輝いている日々につながると思えばなんとも胸震わされるものじゃないですか。
一方で、初めての友達! という関係にフワフワしちゃいながら一生懸命仲良くしようと頑張る強面少女なカナーンの初々しさもまた可愛らしいんですよね。
そんな三者三様の一生懸命な友情が、見ていて本当に尊いのです。思わず、合掌。

と、ぶっちゃけ物語的には大まかな舞台が整い役者が揃って状況も可動しはじめ、ここから本格的にスタート、という感じだったのですがまさかの打ち切り! まさかの打ち切り!!
マジかーー。お膳立てがすんでここからという前のめりな気持ちだっただけに、結構なショックでした。
ただ、作者さんもこれは収まりがつかなかったらしく、ウェブの方でこの続きを書いてくれるということでありがたい限り。月イチ更新のようで既に現段階で二話まで投稿されている模様。続きが気になる方は是非にそちらで。

1巻感想