【世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1】 黒留ハガネ/カット  オーバーラップ文庫

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ある日突然、超能力に目覚めた佐護杵光(さごきねみつ)。
そしてその力を狙う悪の組織が、突如彼の前に現れ――なかった。
隣の家の幼馴染が実は退魔師の子孫だと発覚し――なかった!
謎の美少女が転入し――なかった!!
平和過ぎる日常に逆ギレした佐護は、自分自身が秘密結社になる事を決意する。
日本中を探して見つけた有能美女・鏑木栞(かぶらぎしおり)を副官に引き入れ秘密結社「天照」を創設、資金調達事業も成功。
蓮見燈華(はすみとうか)、高橋翔太(たかはししょうた)という新メンバーも加えたところ、ついに世界を滅ぼす魔王が現れ――なかった!
そこで佐護は、とある計画を思いつくことになり……?
ひとりの最強能力者が紡ぐ、圧倒的マッチポンプギャグコメディ、開幕!!
ふははははははっ、なんかもう酷いなこれ!(褒め
佐護くん、キレるまでが何気に長過ぎる! 高校時代に超能力に目覚めてから、普通に大学進学して就職してブラック企業で何年か働くまで黙々とひたすら一般人生活、待ちの姿勢に終止してしまうこの受け身体質w
超能力も目覚めたときから超絶的な人外の能力、なんてものじゃなく煎餅の欠片3グラム相当を前後に動かすしか出来なかったんですよね。目覚めた理由も特に無く、血筋や前世からの運命なんてものもなく、本当に脈絡なく目覚めてしまった微弱な念力。
これを、最初は検証のために色々やっていたらいつしか筋トレ感覚で超能力を鍛え始めてしまう佐護くんなのである。何か目的があって超能力を鍛えているわけじゃなく、超能力を鍛えることが目的、或いは趣味になってしまったために歯止め無く際限なくひたすら鍛えられるだけ鍛えてしまう主人公。ただし、普通の日常生活の方は本当に普通に過ごしているので、超能力のために自分の生活の方を歪めて、なんてことはせずひたすら趣味の範疇なんですよね。
こいつ、超能力に目覚めなかったら筋トレが趣味になってたんじゃないだろうか。って、筋トレも普通に生活ルーティンの中に取り入れてたな。
そんな普通に日常を過ごして超能力を鍛える日々。センター試験受けて大学受験で進学して、大学生活謳歌して就職活動をはじめて、何の因果かブラック企業に就職してしまい日々精神を摩耗させながら社畜として身を費やす日々。その間も趣味の超能力は欠かさず鍛えて、最初小さな物体を動かすしか無かった念力は、佐護くんの自由過ぎる発想で様々なベクトルへと能力が伸ばされ、いつしか訳のわからない意味不明な規模の超能力へと進化していた。しかし、彼の身の回りはひたすら変化なく日常が続いていく。このままずっと続いていく。特にこの鍛えた超能力の使い所もないまま。というところで、ようやく逆ギレする佐護くん。
遅すぎるわい!!

いやこれ、就職先普通の優良企業とか過ごしやすい環境の職場だったら、こいつきっとそのまま過ごしてたよね。行動力と持続力はあふれるほど持ってるくせに、一点集中すぎて一つのことやってたら他はそのまま流れに任せてしまうタイプなのか。
実際、一端脱サラして秘密結社作るぜー、とはじめた途端異様なバイタリティで協力者見つけちゃったもんなあ。その方法もなにか効率的だったり画期的な判別方法を考えて、とかじゃなくて「虱潰し」で片っ端から探す、というある意味何も考えてない方法でしたし。
それで見つけちゃうだから、なんというか運命的?
厨二病的思想を思想で留めず、真面目に実践しようとその才能を素晴らしく無駄な方向へと費やしていた、ある意味趣味に生きていたと言っていい才女・鏑木栞との出会い。本物の超能力者と天才的組織運営者との邂逅は、彼と彼女の妄想を劇的なまでに現実のものへと昇華させてしまう。
もはや超能力でなんでもありな佐護くんだけど、超能力に関する発想は別としてそれ以外は凡人並以下の凡庸さ貧困さなので、鏑木さんと出会わなければ何も形に出来ることはなかったでしょうし、鏑木さんの方も佐護くんと出会わなければ、彼女の夢の何割も実現は出来なかったでしょう。外国の貴族籍を金で購入とかしてるので、出来る範囲で実現してたのかもしれませんがw

しかし、世界の闇と戦う秘密結社って、社会の暗部と戦うとか現実的な悪と戦うとかじゃないんだ。そういうの重いからメンタル的に無理! というこういうところでは現実的な小市民感覚で笑える。だからといってその異能者超能力者を襲う「世界の闇」という怪異そのものまで自作自演で作っちゃって、それに襲わせて新たな超能力者を生み出して勧誘する、って徹頭徹尾マッチポンプなのかよ! まさか、自分の超能力を移植して他人も超能力者に出来るという自由度にはびっくりしましたけど。何気に思いっきり世界の常識裏から書き換えてるじゃないですか、現在進行系で。やろうと思えば、超能力人類を生み出し続けて旧世代の人類との生存闘争がはじまってしまっても不思議ではない状況を導くことが出来るにも関わらず、ひたすら自分たちの厨二病マインドを満足させることに終止し、若くして厨二病マインドを燻らせている若者たちに満足を提供することで楽しみまくる悪い大人二人組。平和だ、ある意味平和だw
ともかく、超能力に目覚めてから秘密結社を作るまでのやたらと長くて趣味にひたすら没頭している期間がやたら面白かった。そうだよね、自分たちの妄想を実現するまでが一番楽しいよね。
ただ、実際に活動初めて裏でマッチポンプ主導している段階になるとちょっと落ち着いてしまったかな、という感がある。結局、全部自作自演なのでそこからあんまり盛り上がらないですし、メンバーに加えた燈華ちゃんと翔太くんの少年少女には真実を告げずに騙しているということですからね。それだけなら良かったのですけど、実際治癒能力者をゲットしたため回復できる前提とはいえ怪我とかさせちゃっているのはマッチポンプなのにそこまでしちゃったら酷くないか、と思っちゃったんですよね。真実を知らないとは言え、遊びの同志なんですからもう少し大切に扱ってほしいなあ、と。
治癒能力者の子は、さすがに予想外すぎました。いやこれ、完全にここから情報漏れそうじゃね?
あと、鏑木さんはクリスマス本気だったと思うので、ちゃんと妙齢の女性として扱ってあげてください。同志感覚が強すぎて、異性としての意識殆ど持ってなさそうなんだよなあ、この黒幕。超能力で全部覗き見してたくせにw

わりとやりたいことは大体実現したようにも思うのだけれど、ここからどうさらに話を広げていくのか。次巻も楽しみです。