【王女殿下はお怒りのようです 1.転生王女と古の力】 八ツ橋皓/凪白みと  オーバーラップ文庫

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王女であり最強の魔術師のレティシエルは、戦争によって命を落とし、千年後の世界へと転生した。彼女は魔力がないため周囲から無能令嬢扱いされるが、レティシエルの“魔術”は使えて拍子抜け。その後学園でレティシエルは、千年後の“魔術”を目の当たりにし―そのお粗末さに激怒した!我慢ならないレティシエルが見せた“魔術”は学園を震撼させ、やがて国王の知るところとなるが、レティシエルは“魔術”の研究に夢中で全く気付かず―!?前世の伴侶によく似た少年・ジークと落ちこぼれの令嬢・ミランダレットを巻き込んで、生まれ変わった王女殿下は我が道を突き進む!常識外れの最強魔術譚、開幕!!

王女様、前世で既婚者だったのか。若くして戦争で愛する家族と婚約者を喪って自分も死んで、と怨霊にでもなりそうな経緯をたどって生まれ変わった先が、千年後の未来。は、いいんだけどこれ転生って言っていいんだろうか。既に十代半ばまで成長した公爵令嬢ドロッセルに気がついたらなっていた、というのは憑依か魂・人格の乗っ取りなんじゃないだろうか。前世の記憶が復活した、という風でもないですし。ドロッセルとしての記憶さっぱり残ってないわけですしね。それで家族の名前すら覚えていないのに全部ど忘れです、で押し通すレティシエルが強引過ぎるw
そして、それで罷り通ってしまうのは何気に酷いのですが、それで特に問題視もされないというあたりにドロッセルが置かれていた環境というものが透けて見えてしまいます。学校に入学したばかり、というタイミングも良かったのかもしれませんし、ドロッセル自体がある時期に豹変に近い人格の変化があったという経緯も関係したのかもしれませんが。
ともあれ、一度殺され復讐する相手もおらず戦乱の世から一転平和ボケした世界に投げ出されてしまったせいなのか、姫様ってばマイペースもいいところで自分が生まれ変わった理由や原因とか自分が置かれた家庭環境、立場なんかに全く興味を示さず、他人にも無関心で、見た目によっては投げやりといっていいくらいにその場の勢いに身を任せて日々を過ごしだすのですが、その無関心っぷりがいっそ突き抜けてて面白く思えてくるんですよね。
右往左往するべきは姫様の方であるはずなのに、動じずマイペースにわからないまま突き進む姫様に狼狽えつい先日までの対応がまったく通じず、唖然とし混乱に落とされる周囲。それを傍目に、姫様はクールに自分の興味あることにだけ俄然食いついてやりたい放題しはじめるわけで。
この飄々としたフリーダムさとそんな彼女に置いてけぼりにされる周囲との対比がなんともはや、痛快でもあるわけです。この姫様、前世からの性格でやたらと研究家気質でもあり、興味あることにはものすげえ食い尽くし、集中しだすと時間を忘れて没頭するし、妙齢のお嬢さまが普通なら興味示さないような技術的な話など興味ある話に対してはやたら聞き上手で長時間話し込んじゃうし、逆に自分からも好きな方面のことについては語りだすと止まらないし、とまあお姫様キャラお嬢さまキャラとはかけ離れてるところがまた妙なんですよね。
また、最初他人にはまったく興味を示さなかったものの、人嫌いというわけではなく、親身になって接してくる相手にはちゃんと心開き、信頼を寄せて、ちょっとずつではありますけれど紡がれだした人間関係はちゃんと大切にして、良き関係を育んでいこうという姿勢はあるんですよね。その分、興味ない相手へのそっけなさとの対比が浮き彫りになっていくのですが。

ともあれ、ひたすら自分の興味あることに突き進むことを主にしていて、何かを良くしよう、改善しよう、将来に備えよう、というような展望は一切持っていなくて、ひたすら周りを対して顧みることなくブルドーザーのように邁進していく過程で、周りを巻き込んでどんどん影響が波及していく、という構図なのがまた興味深いところであります。
また、前世の恋人、あれどうやら転生者っぽいんですよね。そんな何も持たないところから巡り合った彼と運命的な恋をして、その果てに悲劇として終わってしまった結末。これが単なる姫様のバックストーリーとして書き割りとして済まされるとは思わないので、前世の恋人この今生でも何かしらの関係出てくるんだろうなあ。どうやら、関係ありそうな人も登場していますし。がっつりとラブストーリーはじまっても、それはそれで盛り上がるんじゃないでしょうか。