【継母の連れ子が元カノだった 2.たとえ恋人じゃなくたって】 紙城 境介/たかやKi  角川スニーカー文庫

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元カノvs新カノジョ候補!? ぼっち系オタク少女・東頭いさな襲来!

親の再婚できょうだいになった水斗と結女は、元恋人同士。
両親の前では“家族”らしく振る舞うも、二人きりになるとあの頃の思い出が蘇り、やっぱりお互いが気になる日々で――。
そんな中、水斗の前にぼっち系オタク少女・東頭いさなが現れ、二人はすぐに意気投合! 図書室で放課後を過ごす関係に!?
ただの気の合う友達だと真顔で言い張る水斗といさなの、友達以上な距離感に結女はやきもき。しかも、
「わたし、水斗君の彼女に、なれますか……?」
徐々に水斗への恋心を自覚していくいさなを、”水斗の義姉(おねえちやん)”として応援することに!?
恋と友情ときょうだいの絆が錯綜する、『水斗攻略作戦』が始まる!
プロローグから殺しに掛かってるんですけどーー!? 殺意高すぎるんですけどーー!? 悶絶死させる気満々じゃねえかぁ!!
もうなんですか、あれ〜。自分の勧めた本を水斗くんが読んでいく様子を傍らからジーッと見つめてる結女。ついさっき自分が読み終えた本だから、どのくらい読み進めた段階でどんな展開が待っているのか当然知っている結女は、その展開ごとに水斗くんがどんな想いを抱くのか、どんな風に感情を揺らすのかを、彼の横顔をジーッと見守っているのですよ。そんでもって、自分が読んだ時と照らし合わせながら、共感したり思わぬリアクションに驚いたり、期待通りの反応に内心ニマニマしてしまったり。
人が本を読んでいる姿がこんなに色彩溢れているのか、と驚くようなシーンであると同時に、それだけ結女の目から見る水斗くんの姿が鮮やかということでもあるんですよね。ほんと、めっちゃ見てるんですよ。水斗くんが本の中にのめり込んでいくのを、傍から見ていてちゃんと把握しているし、彼が読んでいる時に何を考えているか、とか細かな仕草や表情の変化の捉え方がいやもうどれだけ見つめてるんだよ、というくらいなんですよね。その見つめていることそのものが、楽しそうで。
この場面の二人の様子を思い描くだけで、なんかもう悶絶してしまうのである。なんかもうたまらん気分にさせられてしまう。初っ端からなんという凶悪なシーン打ち込んでくるんだ、この作品は!!

でも、結女のこの視線って、多分中学生の頃の彼に恋していた頃ではきっと生まれ得ない視点だったんだろうな、とも思うのである。中学生の頃の結女は、水斗のことが好きで好きでたまらなくて、だからこそ「好きな人」という部分に意識の大半を奪われてしまって、果たして水斗という等身大の少年をどこまで直視できていたのか、怪しい部分がある。彼のどんな姿を見ても、そこの「恋」というフィルターが挟まってしまっていたのではないだろうか。
今、この時水斗の読書する横顔をジーッと眺めている結女の眼差しは、あの頃に比べるととても率直にこの新たに出来た家族である少年を見つめている。
だから、彼に対して生まれる感情は、見つめたその先にあるのだ。前のようにフィルターを通した先にあるのではなく。お互いを全部さらけ出して、お互いの様々な側面をもう一度知り直して、お互いの等身大を目の当たりにしたその先に、もう一度芽生えたものなのだ。
このプロローグはその象徴的な1ページであり、この先の物語はそうして芽生え始めたものを、新たに横から割って入ってきたファクターによってお互いにどう処理するべきか考え始める、そのきっかけとなるエピソードである。

と、言ってもその重要人物となる東頭いさなの登場は後半から、となる。前半を引っ掻き回してくるのは、前巻で友人となった南暁月と川並小暮の両名だ。
この二人がまた曲者であると同時に、何気に伊里戸兄妹を上回る地雷持ちなのである。サイコレズの看板を背負って結女に迫り、水斗を引っ掻き回した暁月だけれど、この巻では結女の親友として相棒として、思いの外存在感を示しながら立ち回るのであるけれど、ただの脇キャラじゃ済まない様相を呈してくるのが、川並小暮と暁月が実はマンションの隣同士の部屋に住む幼馴染であり、しかもどうやら水斗と結女と同じく交際していて、盛大に失敗した元カレ元カノ同士であるらしい、というのがわかってくるあたりからなんですよね。
あくまでメインが伊里戸兄妹二人の視点で進むために、詳細は不明なのですけど友人の家でのお泊り回でその一端が明らかになり、この元カップルの幼馴染同士の微妙過ぎる距離感がわかってくると、小暮のあの妙に傍観を気取りながら変なところに地雷ポイントがあるところや、暁月のある一定のラインを超えると尋常じゃなく重いキャラになるところなど、想像の羽が羽ばたくところが怒涛のように湧いて出てくるんですよね。思えば、結女たちのように突然家族となり同居生活になる、というわけじゃないけれど、この二人隣同士で住んでるだけあって普段の生活範囲や行動パターンは完全に重なっているし、別れても即他人というわけに行かず、物理的にも精神的にも離れられない距離に居る、という意味では伊里戸兄妹と似た傾向にあるとも言えるわけです。
しかし、そこは幼馴染という関係を理して、適切な距離感というのを保ってきていたはずだったのが。二人が伊里戸兄妹ともっとも親しい友人になってしまい、必然的に今まで以上に顔を突き合わせる機会が増え……でも、それだけなら今までの「適切な」距離感が揺らがなかっただろうところに、間近でその適切な距離感を取れずにトンデモナイ勢いでグルングルン揺れまくってる自分たちとよく似た関係の元カップルが暴れまわる余波をもろに真横で受けているがためか……どうも、こっちの幼馴染たちも煽りを喰いはじめている感があるんですよね。まだ兆候だけですけれど、しかし無視できない兆候が。正直、結女たちの裏側で着々と変質しつつあるこっちの幼馴染たちの動向もめっちゃ気になるところなんですよーー。

と、思わずメインの二人ならざるカップルの方で語ってしまいましたが、やはり最強にラブコメしまくるのはメインのお二人、水斗くんと結女の兄妹なわけで。
結女の方がもうこれ、一巻の最初の頃にはまだ保っていた平静が、二巻ではもう殆ど保たれてないんじゃないですか、これ!? いや、これはもう水斗くんが悪いとも言えるんですけどね。このカレ、ズルいですよ、絶対! 席替えのときとか、あれなんですか? 中学のときには忘れていた合図を、あのタイミングでやっちゃうとか、そんなん結女ちゃん死ぬに決まってるじゃないですか。あんなんされた日には、平静でいられるもんですかい。そもそも、結女が水斗くんを好きになったきっかけというのが、自分を対等の存在として意識してもらったこと、認めてもらったこと。
自分を見ていてくれること、それこそが結女にとっての最大の急所だったわけですよ。それをこの男と来たら、この巻だけで何回そのポイント、急所目掛けてクリティカルな会心の一撃を叩き込みました? ここぞというときに、一番強烈なやつをぶちかましてくるわけですよ?

死ぬわ!!

見なさいよ、今回結女ちゃんほぼ瀕死じゃないですか。そこ触られたら死んじゃうって場所をピンポイントでグリグリ刺しやがってからに、この男は! この男は!!
控え目に言ってももう、結女って伊里戸がいないと生きていけない身体にされてしまったんじゃないだろうか。
しかも、水斗くん無自覚でやってるわけじゃなさそうなんだもんなあ。一度、結女の方がちゃんとした「適切な」距離を取ろうとした場面があるんですよね。兄妹として、別れた元カップルの友人同士として、感情的に割り切った適切な距離感というものを、結女からちゃんと取ろうとした時にこの男ときたら。
普段、シレッと素知らぬ顔して知らんふりしているかのような平然とした態度とっているくせに、いきなりガッと来て、ガシッと手を掴んで、グッと無理やり引き寄せて顔寄せて、その態度気に食わない! ですからね! しかも、結女が思わずアヘ顔になってしまう結女理想の装いにわざわざ着替えて。
もう思わず「きゃーーー!」ですよ。少女漫画見て色めき立つ女の子か、という勢いで読んでるこっちが黄色い悲鳴ですよ。
もう、きぃゃーーーー! だよ!
うん、もうこの男、ズルいわ。ズルいズルいズルい。格好いい……。
いやこいつ、絶対モテるわ。そりゃモテるわ。
後半に満を持して登場のいさなも、この娘はこの娘で言うてしまうとエキセントリックなんだけれど、うん惚れるわなあ。わかる、わかりみ。
なんかこう、面倒くさかったり自分で自分をコントロール出来ない系女子からすると、そういう暴走しがちな面も含めて、理解してくれて逆にうまいことコントロールまでしてくれる身も心も行き届いたフォローをしてくれる優しくて頼りがいのある男性、とか。普通に接したら死ぬよね、死ぬわ。
いやー、いさなもまた結女とはまったく別のベクトルで面白すぎる娘なんだけど。ってか、同じ文学少女で引っ込み思案とはいえ、昔の結女とこのいさなって全然キャラの方向性違いますよね。最終的には異世界人呼ばわりされてしまう価値観と言うかメンタリティの持ち主ですけど、そもそもマイペースだし内気というわりに自己主張激しくてイイ性格してますし。あんまりぼっちらしくはないなあ、と思ったけど女の子グループの中に入ってやってけるタイプでは全然ないな、うん。
全部終わった後の「「ちょっと面貸せや」」には思い切り笑ってしまった。うん、あれはズルいよw
一連の、あの男人の心を持たんのか!? も終始笑いっぱなしだったし。
あー、面白かったなあ。なんかもう、読んでいる間中ハートがあっちに引っ張られこっちに弾み、と落ち着いている暇がないのですよ。ずーっと揺さぶられて弾まされて。
ドキドキして、ワクワクして、ニヤニヤして、キューーンってして。
ラブコメの醍醐味を味わい尽くしているような、そんな幸せ。読書における最高の味わいなんじゃないでしょうか。
1巻に引き続き、2巻もまた紛うことなき最高傑作でありました。
3巻はまだウェブ連載のストック全然ないそうで、最近連載再開しているみたいですけど、私も書籍版の方で新鮮な多幸感を味わいたいので読まずに居てます。なので、ほんとーに楽しみにしつつ、夏頃予定というのを信じて次巻を待ってます、待ってます!

1巻感想