【デート・ア・ライブ 20.十香ワールド】 橘公司/つなこ  富士見ファンタジア文庫

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崇宮澪によって救われた世界。五河士道と精霊たちの平穏な日常が戻ってきた。しかし皆が笑顔で過ごす中、どこか違和感を覚える士道に狂三は衝撃の真実を告げる。
「―放っておけば、やがて世界は十香さんごと自壊してしまうでしょう」
十香が作り上げたという理想の世界を元に戻すべく、動き出す士道だが、そのための時間はあまりにも短く…。
「あたしたちも、戦争としゃれこもうじゃないの」
世界を維持するための霊力を捻出すべく、残された精霊たちはバトルロイヤルをすることに!救われた世界でひとりだけ救われなかった少女をデートして、デレさせろ!!

これ、十香が。十香だけが純粋な精霊だった、という設定がここで効いてくるのか。もっとこう、能動的な理由で純粋精霊が誕生しているのかと思ったら、澪の回想を見ると感傷的なものだったんですねえ。純精霊としての出自も、反転体の存在も作品のクライマックスで重要な意味を持つだろうとは想像していましたけれど、その想像というのは世界や精霊全体の行方に対するキーパーソンという役割だと思っていたので、ごくごく単純に夜刀神十香という少女の行く末にのみ重要な意味を持つという使われ方をするとは思っていなかったんですよね。クライマックスで重要な意味を持つ、という良意味ではズバリだったのですけど。
精霊の反転体とは霊結晶の化身のようなもの、と前に反転十香が言ってたんでしたか。でも、十香は霊結晶から人間を介さずに生まれた存在、ということは反転十香……士道が命名するところの天香だけでなく十香自身も霊結晶の化身みたいなものなんですよね。他の反転体と違って、十香と天香がこれほど別々の個体として、姉妹のように存在してしまったというのは純精霊であることも大きなファクターだったんだろうか。天香が反転体というにはあまりにも精神的に落ち着いていて、狂化されていない人格はそれこそ普通の精霊のようなんだよなあ。
素直じゃない捻くれ者だけれど、イイ子という観点においてはまさしく十香の姉妹という感じなんですよね。そんな天香が最後の最後に澪の霊結晶を使って生み出した、誰しもが望む夢のような世界。
別に極楽のように浮世離れした世界なんかじゃなく、ただほんの少しだけ悲しい事実が書き換えられただけの、普通の世界。ただみんなとワイワイ学校に通うだけの、地続きの日常。それが十香の望んだ世界というのは、彼女らしくて微笑ましく、それで満足してしまえるのが少しだけ寂しいと思わされてしまう。いや、それで十分幸せと言い切れるほどに、彼女の周りに集った面々は大切な人たちだったのだろう。その大切な人たちが自分と一緒に笑っていられる日常。それにまさる幸せはないのだ。
それすらも、彼女のもとには残らない。
ここにきて、始原の精霊たる澪の霊結晶が消えてしまったら、彼女から生み出された精霊たちは消えてなくなってしまう、とかそんな話全然聞いてなかったよ!
他の精霊たちは人間をベースとして生まれているので、精霊の力がなくなっても人間に戻るだけ、なんだけど、純粋に霊結晶から生まれた十香は存在まるごと消えてしまう。それがわかっていたからこそ、天香は最後の幸せの時間をこうして稼ぎ、過ごさせてあげようと考えてこの世界を創ったのだ。
これ、士道はどうなるんだろう。十香とはまったく違うけど、彼もまた澪によって「産み落とされた」存在であるのは確かなんですよね。彼は精霊ではないので、関係ないのか?
それに、精霊の力がなくなってしまう、ということは狂三の力もなくなっちゃうんですよね。狂三と約束した「人間の狂三たち」を救うという約束果たせなくなっちゃうんじゃないの、このままじゃ?
歴史そのものを改変して始原の精霊が誕生した影響によって死ぬことになってしまった人たちを救う、という狂三の目的。そのために、いずれ死ななかったことになるという前提で幾多の人々を殺してきた狂三にとって、このまま精霊の力がなくなってしまうという展開は非常にマズいんじゃ。
真那の人体実験によって壊されてしまった身体をザフキエルで治すのは大事だけど、めっちゃ大事だけど本番はむしろここからじゃないのかしら。
そもそも、この完全に詰んでしまった状況をひっくり返すのって、またぞろ狂三さんのお力をお貸しいただかないといけないという事なんじゃないの?
この誰も疑問に思えなかった状況に針の穴をあけて、皆に真実を開陳したのも狂三なら、十香が最後のデートを士道と過ごす時間を稼ぐために、精霊の力を消耗して世界の維持にあてる目的のバトルロイヤル、立案準備したのも狂三なわけで、ほんと終盤入ってから狂三さん七面六臂の大活躍がいつまで経っても終わらない!?  バトルロイヤルの方もお膳立てして、自分裏方回ってましたしねえ。
ちなみに、勝者の方は完全にこれは予想外でした。いやしかし、この人選は納得だよなあ。本の挿絵の方では初お目見えの凍鎧(シリヨン)。あの小さい体にガチガチの全身鎧は正直格好いいです。

さあ、ついに次がこのシリーズの最終幕。ついにここまで来たのかと、感慨深いです。

シリーズ感想