【世界最強の魔王、勇者の教師になる 勇者が弱すぎて物足りなかったので自分で育てることにした】 斎藤 ニコ/桜木 蓮  角川スニーカー文庫

Amazon
Kindle BOOK☆WALKER

神の如き力を持つ魔王グウェィン。誰にも討伐されず退屈していた彼は、自ら勇者学校を建てて勇者の成長を数千年待ったが―数千年後の世界は魔法が劣化し勇者も弱体化していて!?弱くなった勇者達はグウェイン=魔王が教師になっても誰も気づかないどころか、圧倒的力量差を見抜けず逆に見下す始末。それでも、自分を慕う健気な落ちこぼれ勇者アトリアを魔法やスキルの秘奥に及ぶ規格外な授業で急成長させていく。しかし、アトリアや『魔王』を認めない他の勇者達が卑劣な罠を仕掛けてきて―『“教えて”やろう、魔王の恐怖をな』最強魔王教師は腐った勇者に天罰を下す!!異世界痛快ファンタジー、開幕!!

おおむねゆるふわ化で説明して出来てしまう便利さよ。
いやでもさ、ほんとにゆるふわ化で平和が続いているなら勇者とか本気でいらないんじゃないだろうか。なにしろ、脅威たる魔王グウェインは魔王名乗って魔王城に居座って勇者待っているだけで具体的になにしようとするでもなく、そもそもどこに倒される必要があるのだろうかという体たらくだし。ってか、待ってるだけじゃなくて城の外に出なさいよ。魔王の脅威をアピールしなさいよ。
そもそも魔王がそんなだから世界はゆるふわ化してしまったんじゃないのか? という反省らしい反省もなくゆるふわ化してしまった世界を嘆く魔王様。いや、別に嘆いてもいないのか。この魔王様、わりとあるがまま受け入れる鷹揚な人なんですよね。鷹揚すぎるから、勇者が来ないのにひたすら魔王城で待ちぼうけしてしまうんだろうけど。魔王城が観光地になっても気づかないんだろうし。側近の魔剣レイちゃんが好き勝手やってても気にしないんだし。
そのわりに、レイに対するつっこみだけは欠かさないあたり、コミュニケーションには気を使っているのだろうか……。
そもそも、世界の脅威であるはずの魔王とその部下がゆるゆるだから世界がゆるふわ化したとしか思えないんですよね。そして、復活して世界征服に乗り出せばそれなりに人間側も危機感覚えて頑張るだろうに、特に世間をお騒がせせずにこっそりと自分が創った勇者学校に潜入して、地道に勇者育てようとしだすあたり、そういうところだよ!と言いたくなる所存。冒険者コースの人たちはわりと世情を組んでいるというか、世の中の移り変わりに的確に対応した結果だから、別に腑抜けているとか平和ボケしているとかじゃないと思うんですよね。なにしろ、魔王様がこれだし。もし魔王が復活したらどうなるんだ!と万が一を訴えても、魔王様復活しても別に大変なことにならなかったわけですしね。
こんな世界で、勇者たらんとするモチベーション、勇者として強くなってどうするのかという目的意識など、なかなか確立するのに難しい環境だと思うんですよね。アトリアはままならない現実に抗いながら、必死に努力していて、それは目前の努力目標に対してとてもひたむきに挑んでいる頑張る子であり、ここにグウェインに認めてもらいたい、褒めてほしいというモチベーションが加わって今良いコンディションを保てていると思うんですけど、それが果たして魔王討伐という勇者本来の目標に至るのかどうか。今のまんまだと、絶対魔王と対立なんてしたくないだろうしね。グウェインの方も果たしてどこまで本気で彼女たちを自分と戦わせるために鍛えているのもやら。単に見込み在る若い子たちを鍛えるの楽しいからやってるようにしか見えないからなあ。
まあ世界観がゆるふわなら、物語の方もゆるふわなのである。それが良い、と思わせてくれる作品でしたね。キャラがイキイキしている分、弾けるような勢いがある楽しいコメディ作品でした。