【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 五】 秋田 みやび/しの とうこ 富士見L文庫

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保護者代わりとして、笑と二泊三日の短期高額バイト旅行に出かけた芹。途中、父親の墓参りも兼ねて立ち寄った伯母一家の営む食堂で、偶然八城を含めた『廃墟研究会』のメンバーと会う。彼らはミステリ作品の聖地巡礼で閉園した遊園地に行くらしい。話を聞いた笑は興味津々。そのまま芹たちも同行することに。しかし、閉園されたさびれた遊園地に、墓参りで出会った黒ずくめの男、ミステリ作家の鷹雄光弦が現れて―?ぼんくら陰陽師の嫁、旦那不在で大ピンチ!?退魔お仕事物語!
お義母さん好きが高じすぎて、当のお義母さんにドン引きされて避けられてしまう芹。猫が好きすぎて構いすぎて逆に逃げられるのとおんなじ構図だw
お義母さん側とすれば一生懸命嫌がらせしているはずなのに、逆にめちゃくちゃ好かれて懐かれてベタベタしてこられるんだから、怖いよな。まあ相変わらずお義母さんの嫌がらせは気遣いが一杯詰まった優しいものなので、芹も楽しみにしてしまってるんだが。楽しみにしている嫌がらせってなんだよ、と言いたいところなんだけれど、皮肉じゃなく本気で楽しみにしてるんだよなあ。まあわかるんですけど。あれらは全然嫌がらせになってないし。
と、前回の一件で芹のお義母さんへの好感度が自分を差し置いて爆裂してしまったことに密かに焦っている旦那であるはずの皇臥でありますけど、お義母さん好感度の爆上げに隠れてしまっていますけれど着実に芹の皇臥への好感度も上がってるんですよねえ。
ふとした時に皇臥の思いやりは気遣いを察して気持ちを揺らしたり、今回は笑ちゃんとの旅行ということで離れて行動しているわけだけれど、何くれと無く皇臥の事に思いを馳せたり、いざという時皇臥のことを頼りに思ったり、と以前よりもさらに皇臥に対して物思う時にじんわりとした温かい熱が籠もるようになってきているのが、言動の端々から感じるようになってきているのであります。
芹自身も多少なりとも自覚があるのかもしれません。そういうのをまるで察していなくて空回りしがちなのが皇臥クオリティなのですけど。でも、彼の細々とした気遣いとかちゃんと伝わってるんですよねえ。
今回だって、笑ちゃんとの旅行は芹のことを慮ってのことですし。芹って忘れがちですけど、まだ遊びたい盛りの大学生なわけですしね。まあ遊びたい盛りと言っても芹の場合境遇からしてそんな遊び回るような環境でもなかったですし、性格的にも一ところで落ち着けるタイプですけど。でも、友達と遊びにいくのも決して嫌いではないでしょうし、それどころか、旅行にかこつけてお墓参りとか親戚への挨拶も、とか気を回してくれるのを嬉しく思わないはずもないわけで。

ところが、この旅行をきっかけに芹の両親。野崎の実家の、というか父親の知らざる姿が明らかになってしまうのは芹にとっても皇臥にとっても予想外のことだったでしょう。
てか、芹パパって見える人だったのか。どうして、芹が親戚に預けられる時に腫れ物めいた扱いをされたのかも、こうして事情がわかってくると納得させられる部分もあるわけで。ただまあ理由は納得できても感情としては納得したくはないよねえ。形見を処分させられたのとか。
ともあれ、父親の知らざる事情に加えて、父親の弟子だったという作家先生と遭遇するにあたって何やら不穏な展開に。ミステリ作家の鷹雄光弦、なんか格好が京極夏彦先生みたいなのを想起してしまってちょっと笑ってしまったのだけれど、この人マジもんの陰陽師なんだよなあ。その先生、どうやら北御門とは因縁があるようで。あちらも、恩師の娘が北御門に嫁いでいるなんて知らなかったものだから、余計に面倒なことになってしまったようだけれど。
しかもこの先生、どうやら本物の天才らしく、素人の芹が九字の一音を聞いただけで「あ、うちの旦那とは別格だわ」と悟ってしまうほど。ってか、あそこで「皇臥ってほんとに陰陽師としてぼんくらだったんだ」としみじみ考えちゃうのはさすがに失礼! 事実であっても失礼!!
でも、皇臥はぼんくらでも北御門の式神は、護里ちゃんと祈里ちゃんは相変わらず頼もしいので大丈夫大丈夫。それにぼんくらであっても頼りになる旦那であるのは間違いなく、突然の窮地に急いで駆けつけてきているだろう皇臥の存在はこの場面においてはやっぱり頼もしいんですよね。いやまあ来てもらっても何が出来るかわからないんですけど。陰陽師の実力としては果たして頼りにしていいものか疑問ばかりなのですけど。それでも頼もしく感じるのは、夫としての存在感なのではないでしょうか。うんまあ、夫としても大丈夫かぁ、と疑念がよぎってしまう感じはありますけど、うん大丈夫大丈夫。

今回、『廃墟研究会』の実際の活動に芹たちも参加させてもらってましたけれど、凄くちゃんとした活動内容で感心してしまいました。あっちこっちに許可貰って申請して、危険がないように事前に準備も欠かさず計画もしっかり立てて、と想像以上に用意周到で慎重かつ安全重視で。なるほど、真っ当な活動とかこういうものを言うんだなあ、と。まあ今回はそれでもトラブルに見舞われてしまったのですが、これは不可抗力だよなあ。

あと、芹のパパさん。幼い娘を残したまま事故で妻と共に亡くなってたり、霊視体質で苦労したり奥さんと結婚する際もトラブルあったり、と幸薄いしんどい人生送ったような印象を外から見ると感じてしまうのですけど、鷹雄光弦が芹と話している時たびたび芹のマイペースな言動にやっぱりあの人の娘だな!!と思わず叫んでいるのを見ると、芹に似てバイタリティ溢れた人だったんだろうなあ、と思わず笑ってしまったり。芹もずいぶん苦労した人生送ってきましたけど、そんな人生をあんまり想像させないたくましいキャラですものねえ。願わくば、もう少し芹パパの昔話を聞ける機会が訪れればいいのですが。
事件はまさしく後編へと続く、という展開に。おお気になる気になる、続きを早く早く。

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