【野生のラスボスが現れた!8】 炎頭(ファイヤーヘッド)/YahaKo  アース・スターノベル

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世界存亡をかけた最終決戦、開始っ!!!!!!!!
敵(ラスボス)は――この世界を創造した女神!?


“俺"が存在していた現代日本で覇道十三星天の『蛇遣い』(ディーナ)を回収した“私"は、自身のすべてを思い出した。
私が夢から覚め、力を取り戻したということはきっとミズガルズに帰れば女神(アロヴィナス)が龍を起動させ、世界をリセットすべく破壊を進めるだろう。
そうなれば女神のアバターであるディーナが女神に操られることは避けられない。
私は必ず救い出すことを彼女に誓って最終決戦場ミズガルズへと舞い戻る。

世界の終焉がはじまったミズガルズで十二星天、勇者、七英雄たちが力を合わせて龍に立ち向かう中、私は対峙する。女神に操られたディーナ、そして傍らにたたずむ見知った姿のゴーレム(十二星天『天秤』)と。

この二人がいずれ敵として立ち塞がる事など分かり切っていた。だから驚きはない。ただ決意があるだけだ。返してもらう、などと図々しい事は言わない。
――ただ奪い取るだけだ!!
超インフレバトル、ついに開幕!!

の前に、冒頭近くでこのシリーズでも特に好きなシーンの一つがあるんですよね。ルファスのアバターとして誕生した地球の少年と道端ですれ違うシーン。自分がゲームのキャラであるルファスに憑依してしまった、と思い込んでいた「俺」の記憶の元となった少年。ディーナによって生み出された彼は、いわばもう一人のルファスだったんですよね。
ルファスは本来の記憶をディーナを通じて封印し、この地球の少年。自分のアバターである彼の記憶を自分の意識に上乗せすることで、自分がルファスではなくゲームのキャラに憑依してしまった地球の少年だと思い込むことで、ルファスを無力化したと女神アロヴィナスを誤解させ、ディーナの導きに従って女神のシナリオを覆す展開を着々と構築していったわけですが、この地球来訪によってついにルファスは自分の記憶を全部取り戻し、かつて自分とディーナの二人で企んだ作戦も全部思い出すことが出来たわけです。そして、それは地球人としての自分の記憶が、借り物であったという事実を知るということでもあり、この自分の記憶の元となったアバターの少年との邂逅は、同時にもう一人の自分との決別でもあったのです。
これ以降、「俺」はこの物語から離れ、関係のない一般人としての人生を歩んでいく。そして、ルファスはミズガルズへと帰り、女神との決戦に挑むことになる。
この自分との最初で最後の邂逅、二度と交差せず離れていく二人の人生の分岐点というシーンで凄く感慨深いんですよね。少なくとも、このシリーズの大半はルファスの自意識は彼女自身でありつつ、この少年でもあったのですから。読者としても、ある意味シリーズ最初からの付き合いである主人公であった彼がこの物語そのものから離れていく姿、というのは何とも複雑に心揺らされる想いだったのです。
そして、この物語は名実ともにルファス・マファールのモノとなるのである。


ここからの、本来の力を取り戻したルファスを中心とするバトルの展開は、とんでもないレベルでのインフレとなっていってこれがまためっちゃ楽しいのですよ!!
通常インフレバトルって、結局作者が強さの表現のバランス調整に失敗した結果、表現をどんどん過剰にして行かざるを得なくなってしまった結果、というパターンが多いのですけれど、本作に限って言えばまったくの真逆で、完全に統制され制御され計算しつくされた結果のインフレバトルなんですよね。
最初から、最終的にこの展開にしてやる、と周到に予定され準備された上でのバトルなのである。もう最初から、惑星ミズガルズさんや物理法則さんを「やめてー、もうライフはゼロだからやめてー」とガン泣きさせるつもりで粛々と物語が積み重ねられてきた、と思うとゾクゾクしてきてしまいます。
女神のしもべであり、世界そのものをリセットさせるためのシステムである龍たちの起動、の前の魔神王オルムとのタイマン決闘の時点で既に、いきなりスケールが惑星上から宇宙規模に跳ね上がりますからね。ってか、オルムの正体の全長が12万3000キロある、って地球一周で4万キロですからね、ちなみに!
まともな物理法則が機能していないミズカルズ世界だからこそ成立する戦いではあるんですが、それにしても本気でやりたい放題好き放題やってて、この滅茶苦茶さがホント好きです。
速攻で爆発四散させられる火星! 龍との掴み合いドツキ合いのさなかにその辺に転がってた石ころ感覚で鷲掴みに掴まれて、鈍器として相手の龍をボコボコに殴った挙げ句に粉砕されて粉々になってしまうお月さま。その後も、日龍、火龍、木龍、土龍と味方側との激闘でものすごい勢いでボロボロに消し飛んでいく太陽系ww
太陽系がやばいww
ミズガルズ本星。一応地球をモデルに女神が創った星なのだけれど、この規模の戦闘の舞台としてはあまりにも脆く小さすぎて、よくまあ原型保ってるな、頑張ってるな、と健気に思えてくるほどの悲惨なありさまに。いや、こうなるのはわかっていたので、事前にルファスとディーナが用意していた宇宙船にミズガルズ上の生命体や街や都市国家ごとまるまる避難させてたので、みんな無事は無事なのだけれど、世界をリセットするシステムである龍という存在、まったく過言でもなんでもなかったわけで。これとまともに戦えているルファス軍団が規格外すぎる。魔神王オルムは、正体が正体だけに順当ではあるんだけれど、ルファスの配下である覇道十三星も復活の七英雄も、なんというかさすがズブズブの女神が創った世界の存在というべきかなんというか。

とまあ、宇宙規模で大暴れしている連中がいる一方で、女神のシナリオをひっくり返した最大の功労者としてMVPの活躍を見せていたディーナとはまた別にもう一人、勇者として召喚された瀬衣少年がまた手放しでルファスたちから称賛されてるんですよね。このデタラメに力がインフレしてる世界の中で、ルファスたちの存在を目の当たりにしながら心折れることなく、さりとて力を求めることなく、弱ければ弱いなりにやるべきことを見つけて、世界を救う方法を手繰り寄せてきたのが瀬衣少年なのです。力があるからではなく、勇気あるからこその勇者。女神の誘惑にも誘導にもまったく揺るがされず、女神のシナリオを徹底的に台無しにしてみせた彼は、見事にこのインフレした世界の中で勇者しきってみせてくれたんですよね。最終的にも、ルファスが一番信頼してたのってディーナを除けば彼だったかもしれません。ルファスを世界の敵にせず、ルファスと自ら接触し話し合うことで未だ彼女を恐れる世界の人々と繋げてみせたのも彼でしたし、女神との決戦を前にして、ルファスが人々を纏めて避難させることを全面的に任せたのも彼でしたし。
瀬衣くん、登場から一貫して戦闘なんかでは一切活躍していないにも関わらず、しかし物語の中で肝心なタイミングでは常に活躍し続けてきてるのである。ひたすらインフレしていく展開の中で、きっちり彼のような存在を用意して、要所で大事な役割を負わせて、最後まで重きを成させるというのは何気に難しいと思うし、こういう子をちゃんと「弱くても関係なく格好いい」と思わせるように描くのって難易度相当だと思うのですけれど、瀬衣少年に関してはホントにお見事でした。ちゃんと、もうひとりの主人公になってたもんなあ。

そして、魔神王オルムが女神のシナリオから自ら外れた理由。このあたりも、ディーナの忠義のはじまりともかぶるものがあって、ジワジワと心揺さぶってくるのである。機械人形リーブラの、真なる魂の覚醒の場面もそうですし、個々のキャラクターの情理を深く掘り下げてくるタイミングといい描き方といい、なかなかいい具合にハートを鷲掴みにしてくる描写なんですよねえ。
もう色んな意味で際限なく果てしなく盛り上がってきたクライマックスバトル。
稀代のポンコツ女神アロヴィナスとの最終決戦、どこまでテンション上げきるか、どこまでインフレし尽くすのか。ウェブ版読んではいるのですけれど、さらに上乗せマシマシしてくれそうで、実に楽しみです。というか、何回読んでも楽しいなあこれ。
ルファスさま、リーブラの件でかましたアロヴィナスへの煽り方、ちょっと芸術的なくらい最高すぎますよ、それww

7巻感想