【魔術学院を首席で卒業した俺が冒険者を始めるのはそんなにおかしいだろうか 3】 いかぽん/カカオ・ランタン  ファミ通文庫

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ウィリアム達冒険者四人パーティは、鉱山都市ノーバンに足を運び、坑道に発生したロックワームの退治という合同クエストを受注する。同行した他の冒険者が苦戦する中、ウィリアム達はいつものように易々とモンスターを倒していく。そして温泉に浸かり旅の疲れも癒やす余裕(?)の彼らだったが、次の日市長に告げられたのは、冒険譚に綴られた伝説の巨大ロックワームが潜んでいるかもしれないという情報で…?大人気冒険ファンタジー、激変の第3弾!

ライバル登場! というには、このグレンという冒険者、好敵手のイメージからはずいぶんと異なってる。そもそも、女性に対するスタンスがウィリアムとこのグレンは逆さまと言っていいくらいに違うんですよね。冒険を優先して仲間の女性たちは大事に思いつつも恋愛という関係に踏み込むには一線を敷いているウィリアムに対して、グレンは欲望に忠実で女性という存在もモノのようにしか思っていない。傲岸不遜で過剰なまでの自信家という厄介極まりない人種なのだけれど、ただの無法者というわけではなくある一定の自分なりのルールを持っている。そのルールはグレン自身も破らないし曲げることはない。それは信念であり、彼という人間を形作っている枠組みであると言っていい。
こういう部分はウィリアムと実は結構似通っているんですよね。自分を形作ってる枠組みに詰め込んでいる中身はまったく別物であるとしても。
面白いことにこの二人、お互いの行状については嫌悪感を覚えるほどに嫌っているにも関わらず、意外なことにその事自体を否定しようとはしていないんですよね。不倶戴天の敵となるのかと思いきや、こういう男もいるのか、こういう考え方もあるのか、と興味を覚えながら自分と全く異なるベクトルで動いている男の存在を飲み込んでいるのである。勿論、嫌ってはいるのだけれど。
それもこれも、相手に認めさせるほどに力を示したからなのだけれど、その力もそれぞれグレンとウィリアム、戦士と魔術師というクラスの違いもあるのだけれど、力の示し方がまた全然違っていて、だからなのかどうも新鮮な驚きとも興味とも取れる感覚を抱いているっぽいのである。
異なりすぎる価値観が、反発や拒絶ではなく新味を感じさせる関係とでもいうのか。
そのせいかよくわからないのだけれど、グレンもウィリアムもそれぞれ身近な女性に対するスタンスというか考え方が微妙に相手の影響を受けたのか、ちょっと変わってきてるんですよね。
競争の後、二人が微妙な雰囲気のまま何故かサシで呑みに連れ立っていき、決して仲良くなるわけでも意気投合するわけでもなくお互いに忌避感を抱いた微妙な空気のまま、しかし二人でじっくりと対話してお互いの人となりを確かめあい、それでどうこうするわけでもなるわけでもなく、さっさと別れて解散、となるシーンはなんともこう面白いものがありました。
お互いに相容れぬ、理解し合えない者同士。でもそれがそのまま敵となったり反発し合う関係になるわけじゃあないんですねえ。無視するのではなく、お互いを強く認識した上でオレはオレ、あいつはあいつ、と置き合える。自分とまったく違う人間を向き合うことで、むしろ自分自身と改めて向き合うことになる、なんてこともあるのかもしれません。ライバルというにはそっけない距離感ですけれど、こういう関係も面白いなあと思った次第。
女性陣との関係は進展しているようで、まあ個々の掘り下げらしい掘り下げもなく、ウィリアムの方から歩み寄ったというべきか。シリルがワーム生理的にあかん、というのはネタにされてたけれどパーティーとしてはそこそこ真剣に考えないといけない案件じゃなかろうか。ワーム相手だとメンバー一人使い物にならなくなるわけだし。

1巻 2巻感想